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【映画レビュー】コリーニ事件

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新米弁護士が弁護することになった殺人犯は、彼の少年時代からの恩人だった……! ドイツのベストセラーを記録した同名タイトルの原作小説は、出版から数ヶ月後にドイツ連邦法務省内に調査委員会を設置させるほどドイツ国家を揺るがし、日本でも本屋大賞・翻訳小説部門で第1位を獲得。戦後ドイツの「不都合な真実」が徐々にベールを剥がされていく、重厚かつ壮大なリーガル・サスペンス。

弁護士になってまだ3ヶ月のライネンは、経済界の大物を殺害した男、コリーニの国選弁護人として弁護を受け持つことになる。被害者側弁護士として初の大仕事として意気込んでいたライネンだったが、事件の被害者はライネンの少年時代の恩人だった。自分に多大な恩恵を与えてくれた被害者を、残忍な手口で殺害した加害者。立ち上げたばかりのちっぽけな法律事務所が、世間もマスコミも注目する大事件を扱うことは何とも不釣り合いな気もする。だが、恩人側に立ってこの案件を放棄することは案件に感情移入することにもなり、弁護士としての信念にも反する。ライネンは一切のしがらみを断ち切ってコリーニの弁護に当たることを決意するが……。

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本作鑑賞前にぜひ把握しておきたいドイツの法律制度がある。日本では殺人を犯した場合はすべて「殺人罪」として扱われるが、ドイツでは殺人行為が「謀殺」と「故殺」に区別される。故意に行われた殺人は「故殺」との罪にしか問われず、5年以上の自由刑で済む。一方、「謀殺」の方は、刑法で定められた特性、すなわち殺人欲求等の低劣な動機に基づいた残酷な方法、快楽殺人、人種憎悪などの動機が必要であり、終身刑が科せられる。これは死刑廃止国であるドイツの最高刑だ。この罪状を巡ってストーリーは思わぬ展開を迎え、想像だにしなかった壮大な方向に舵を切ることになる。

恩に報いるのが優先か、それとも正義か。弁護士稼業には善悪など必要ないかのように、勝ちさえすれば悪の側に立つことも憚らない弁護士も存在する。そんな不純なように見えるが法律違反ではない、むしろ法を順守することを第一にするか、単に時間を節約して利益を優先させるだけならば、ライネンにもその選択肢はあっただろう。実際、劇中にもライネンがそちら側に転ぼうとする転換点はいくつも現れる。その度に彼を突き動かしたのは、「正義」、このただ一点であった。実に清々しい。

裁判の結末はとある人物の無念を晴らすこととなるが、果たしてそれだけだろうか。コリーニが殺人を行うきっかけとなった出来事を「清算」することを、もしかしたらその当事者も望んでいたのかもしれない。この裁判が適正に行われることが、実は被害者にとっても弔いとなったのかもしれない。被害者の親族から恩知らずと罵られようとも、ライネンの弁護は被害者の魂を救済したのかもしれない。善悪の悪を炙り出すことは、悪を犯した当人自身をも、結果的に救うことになったのかもしれない。

これを書いている2020年5月6日、特定警戒都道府県以外の34県ではマスクの着用や十分な座席間隔の確保等を条件に、映画館の使用制限の緩和が行われるという。読者の皆様に於かれても、どうか感染リスクを十分に考慮しての鑑賞をお願いする次第だ。

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原作:『コリーニ事件』フェルディナント・フォン・シーラッハ(創元推理文庫刊)
監督:マルコ・クロイツパイントナー(『クラバート 闇の魔法学校』)
脚本:クリスティアン・ツバート、ローベルト・ゴルト、イェンス=フレドリク・オットー
出演:エリアス・ムバレク、アレクサンドラ・マリア・ララ、ハイナー・ラウターバッハ、フランコ・ネロ
配給:クロックワークス
公開:6月12日(金)、新宿武蔵野館、 YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国公開
公式サイト:collini-movie.com 

© 2019 Constantin Film Produktion GmbH

 


記:林田久美子  2020 / 05 / 06











エンタメ シネマピア   記:  2020 / 05 / 09

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