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【映画レビュー】ストックホルム・ケース

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被害者なのに犯人に協力、そして深い仲に……?! 犯人と被害者との間に生まれる好意や連帯感を指す心理現象「ストックホルム症候群」の語源となった実話の銀行強盗事件「ノルマルム広場強盗事件」を、『ブルーに生まれついて』のイーサン・ホークとロバート・バドロー監督の再タッグで実現! 『ミレニアム』シリーズや『プロメテウス』のノオミ・ラパス、『キングスマン』シリーズや『裏切りのサーカス』のマーク・ストロングと豪華な面々も交え、強烈なユーモアで描くクライム・スリラー。

スウェーデン、ストックホルム。いかにもなアメリカ人風のいで立ちで銀行を訪れたラース(イーサン・ホーク)。だが、彼が窓口で取り出したのは通帳でも印鑑でもなく、拳銃。銀行員のビアンカ(ノオミ・ラパス)たちを脅しながらラースが警察に突きつけた要求は、誰も思いつかないとんでもないものだった……!?

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まさしく、「事実は小説より奇なり」である。自分を鼓舞させるためなのかはたまた単に素なのか、ラースはよくある真面目な普通の銀行強盗とは違い、とにかくやることなすこと陽気だ。やっていることは犯罪なのに、その合間にチラホラと陽気なことをぶっこんでくる。それが全然異様ではなく、シリアスだったりダークだったりといった雰囲気にもならない。起きていることは最悪なのに、まるで秀逸なコントを見ているような、そんな気にもなってくる。紛れもない実話のはずなのに。これはイーサン・ホークのあの、人懐っこそうな、それでいてどこか悲しみを帯びた瞳、そのせいなのだ。

ビアンカもビアンカで、彼女の言動や行動は非常に現実的で真面目そのものなのだが、そこで言うことがそれか? 的な笑いを巻き起こしてくれる。登場人物の誰もが笑いを取ろうと思ってその言葉を発してはいないだろう。いないだろうがかえってそれが思いも寄らない不意打ちとなって、思わず笑っちゃうのだ。

ラストの顛末に、本作ほど地団駄を踏んだ作品もない。現実としては結果的にそうなったのだろうが、あぁ、なんだか本当に悔しい。実話ものといえば他にも多数の作品があるが、そこは是非、タランティーノの某作(タイトルを書くとネタバレになるので書きません)のように現実にはなかった方向を付け加えて、溜飲を下げさせて欲しかったというか、カタルシスを得させて欲しかったというかなんというか。なもので、もしこの事件を詳しく調べるとしても、それは本作の鑑賞後の方がよろしいかと思われます。

本作はクライムものなのにも関わらず、心温まる作品であることは間違いない。昨今のコロナ禍の真っ只中、一服の清涼剤として作用してくれるような、ある意味ファンタジーのような、不思議な存在感の作品なのだ。

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監督・脚本:ロバート・バドロー(『ブルーに生まれついて』)
劇中歌:ボブ・ディラン
音楽:スティーブ・ロンドン(『ブルーに生まれついて』)
出演:イーサン・ホーク(『ブルーに生まれついて』、『ガタカ』、『トレーニング デイ』、『パージ』)、ノオミ・ラパス(『ミレニアム』シリーズ、『プロメテウス』)、マーク・ストロング(『キングスマン』シリーズ、『ゼロ・ダーク・サーティ』、『女神の見えざる手』、『裏切りのサーカス』、『ランズエンド 闇の孤島』)
配給:トランスフォーマー
公開:11月6日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿、UPLINK吉祥寺ほかロードショー
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/stockholmcase/ 

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記:林田久美子  2020 / 10 / 07











エンタメ シネマピア   記:  2020 / 10 / 08

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