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ビューティフル・デイ

beautifulday_001.jpg 男のもとに舞い込んだ、少女捜索依頼。だがそれは、いつもの依頼とは何かが違っていた……! アカデミー賞ノミネート俳優のホアキン・フェニックスの最新作である本作は、カンヌ国際映画祭で監督のリン・ラムジーが脚本賞に、主演のフェニックスが男優賞にとW受賞を果たし、各紙からも「完璧な映画」と絶賛されるハードボイルド・スリラー。スコットランド出身監督によるイギリス映画らしい湿り気、そして女性監督ならではの緻密な描写が全編を支配する。

人身売買等の闇社会から少女たちを救出するスペシャリスト、ジョー(ホアキン・フェニックス)。元軍人の彼は、年老いた最愛の母親と二人暮らしながらつましくささやかな生活を送っていた。そんなある日、ジョーのもとに舞い込んだ依頼は選挙戦を戦うさなかの政治家からのもの。いつものように依頼の少女を救出し、ミッションをクリアしたかに思えたジョーに、思いがけない展開が待ち受ける……。

beautifulday_002.jpg 『少年は残酷な弓を射る』で原作小説の人間の暗部を映像により炙り出し、唯一無二の光を放ったリン・ラムジー監督。彼女が今回チョイスした原作は、ニューヨーク出身の作家による犯罪小説だ。今回もまたハードな題材を取り上げた監督は、四角いスクリーンの隅から隅まで1ミリの隙も見せることなく、流れる時間軸の1秒たりとも無駄にすることなく、緻密な描写で満たし、映像のすべてに魂を注入する。「神は細部に宿る」――ラムジー監督はこの名言の代名詞そのものだ。一点、主人公の幼少期からの自殺願望という設定はイマイチわかりづらかったが、もしこれを説明的な描写にしたら本作のアート性は台無しになっただろう。だから本作ではこれが最適解だ。

その監督はといえば、主演のホアキン・フェニックスを絶賛する。それもそのはず、主人公のキャラクターはホアキンと監督とのディスカッションにより固められたものだし、また、原作は90ページ強と長編ではなく中編小説のボリュームなので映画には原作にはない描写も多く加えられたが、監督による脚本とは別に、ホアキンが自ら監督にアイデアを出して作り上げたシーンもあるからだ。本作はこの2つの傑出した才能の化学反応が生み出した傑作だといえよう。

昨今の映画事情といえば、耳目を引くのはスター俳優たちによる華やかなCGを多用したエンタメものが主流だ。もちろん、それらの中にはクオリティが高くて面白い作品だって数多くあるから、商業的メインストリームに位置するそうした作品群を否定するつもりは毛頭ない。だが、時には本作のように、ミニマムかつ陰鬱な題材だが太い骨格と鍛えられた筋肉で出来上がった、職人のような映画も併せて是非ご覧いただきたい。本編の90分という時間に詰め込まれた珠玉の描写の数々は、もっともっと長い時間を主人公と共有したかのような錯覚を与えてくれるに違いない。そして鑑賞後に思い出されるそれらのシーンは、貴方の人生にも何らかの深い示唆を与えてくれるはずだ。



原作:ジョナサン・エイムズ『You Were Never Really Here』
監督・脚本:リン・ラムジー(『少年は残酷な弓を射る』)
出演:ホアキン・フェニックス(『her/世界でひとつの彼女』)、ジュディス・ロバーツ、エカテリーナ・サムソノフ、ジョン・ドーマン、アレックス・マネット、アレッサンドロ・ニヴォラ
配給:クロックワークス
公式HP:http://beautifulday-movie.com/
公開: 6 月1 日(金) 新宿バルト9 ほか全国ロードショー

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エンタメ シネマピア   記:  2018 / 05 / 14

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