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よこがお

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一見、「普通」に見える女性の光と陰。光かのように見えていた彼女の人生が、一転、陰へと転がり始める……。『淵に立つ』でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査員賞を受賞した深田晃司監督が、再び筒井真理子を主演に迎えて放つヒューマンサスペンス。

訪問看護師として働く市子(筒井真理子)は、真面目な仕事ぶりを周囲から高く評価されている、いたって普通の中年女性。だが、休日にはリサという偽名でイケメン美容師の和道(池松壮亮)を指名し、自身が作り上げた虚像の自分を演じる一面もあった。ある日、いつものように訪問先の大石家の長女・基子(市川実日子)の介護福祉士試験の勉強を見てやっていた市子の身に、とある事件が降りかかる……。

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誰しも、人には見せない一面が多かれ少なかれある。昨今はSNSの台頭で多くの人が本名とは違うハンドルネームを駆使し、“なりたい自分”を演出することに日夜励んでいる。日々のニュースを騒がす凶悪犯も、いかにもな悪い顔を普段から見せているのではなく、むしろ近所や友人には優しい笑顔を振りまき、「なぜあの人がそんなことを」とその犯行を驚かれることの方が多いだろう。 確かに、美容院では運転免許証等の本人確認書類を求められることはないし、本名を名乗る必要も、考えてみればない。美容師と交わす世間話で自分の本当のことを言う必要も、そう言われればない。真面目そうに見える市子は、イケメン美容師に違う自分をさらけ出すことによって“本当の自分”との均衡を保って生きていたのだろう。

市子に訪れたその事件は、確かに不幸だ。様々な偶然が重なり、身近な者の思いも寄らぬ思惑に翻弄され、市子は地獄に落とされる。だがその地獄は、実は市子自身のその二面性が引き寄せてしまったものではないだろうか。真面目で普通な生き方を良しとしない、リサとしての側面が、無意識にそれを招いてしまったのではないか。そんな疑念が湧くのは、ある種の白昼夢的な、グロテスクな心理描写シーンを幾度も見せつけられるからだ。

市子を陥れた者の正体と感情。紆余曲折を経て訪れるラストシーン。あのタイプのラストは、私個人的には好きではないパターンだ。……と、本作のそのシーンを観ている時にはそう思っていた。歯がゆくて、地団駄を踏みたくなり、「チッ」と舌打ちをしそうになるのを懸命に堪えていた。 だが、違う。あの時、あの登場人物はその選択をして良かったのだ。正しかったのだ。あれで良かったのだ。私がスッキリするような終わり方をしていたら、あの登場人物の人生は地に落ちてしまっていただろう。あんなふうに思ってしまった私は、相当短絡的で性格も悪いということだろう(笑)。

絶望の繰り返される果てにある、監督の言う「希望」。ちょうど私が観た試写の際に監督の挨拶があった。コミックや小説ではなく、映画オリジナルの脚本が世に出るということの意味。そうした旨を話されていた。原作もなしに、ゼロからこれを作り上げる才能。今作も前作同様、高い評価を得られるのは間違いないだろう。

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編集・脚本・監督:深田晃司
出演:筒井真理子、市川実日子、池松壮亮、須藤蓮、小川未祐、吹越満
配給:KADOKAWA
公式サイト:yokogao-movie.jp
公開: 7月26日(金)より角川シネマ有楽町、テアトル新宿他全国公開

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エンタメ シネマピア   記:  2019 / 07 / 11

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