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【映画レビュー】コレクティブ 国家の嘘

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ルーマニアのクラブ「コレクティブ」で発生した火災で27名が死亡。だが、生き残った負傷者もその後不可解な理由で命を落とし、最終的な死者数は64名に......。本年度アカデミー賞で国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞の2部門へのノミネート、ローリングストーン誌が選ぶ2020ベスト20の第1位に選出、タイム誌では第2位ほか、世界各国の映画賞で計32受賞。また、ロサンゼルス・タイムスは「不正を暴く、痛快で絶望的な作品」、ワシントン・ポストは「これほど現代社会を象徴する映画はない」と各誌が絶賛。今の日本の状況をも示唆するかのような、度肝を抜かれる社会派ドキュメンタリーだ。

2015年10月、ルーマニア・ブカレストのクラブ「コレクティブ」。ライブ中に火災が発生し、27名の死者を出す大惨事に。だが、悲劇はそれだけでは終わらなかった。一命を取り留めたはずの入院患者が複数の病院で次々に死亡し、最終的には死者数は64名にまで膨れ上がる異常事態となった。これに疑念を抱いたスポーツ紙の編集長が中心となり真相を追い始めるが、彼らを待ち受けていたのはありえない事実の数々だった......。

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言葉を失う、とはこのことだ。この衝撃の事実、これがフィクションではない、だと。ドキュメンタリーなのだから、スクリーンに映し出されているのは紛れもない事実であり、事実しかそこにはない。自ら撮影に臨んだ監督の手腕もさることながら、文字通り“事実は小説より奇なり”を地で行き、まるでエンタメ映画かのように観る者を裏切る展開、展開、展開。カメラが追う、記者たちの取材手法、仕草のディテール。政府中枢の、飾らない生々しい現場。すべてから一瞬たりとも目が離せない。まばたきのコンマ何秒さえも惜しいくらいだ。だが残念ながら、よくあるエンタメ映画にあるような結末は訪れない。突き付けられるのは暗澹たる現実だ。そう、繰り返すが本作はフィクションではない。これが現実なのだ。

本作の舞台、ルーマニアで起こっているこのことは、残念ながら我々の住む日本にも様々な形で置き換えることができる。これを書いている2021年8月9日の前日8月8日、東京オリンピックは閉会式を迎えた。現状、日本各地では新型コロナウイルスの感染拡大により医療崩壊が起こっている。本作で描かれている事実は、対岸の火事ではない。新型コロナによる日本での死者数は、現時点で1万5千人を超えている。病床は逼迫し、自宅“療養”という名の自宅“放置”により、救えたはずの命が還らぬものとなる数も、今後増えていくだろう。やれたはずのことをやらず、やらなくていいことをやる。何故か。本作にもあるとおり、どこの国でもそれは同じなのだろう。だからこそ各誌がこぞって本作を絶賛し、各国で本作は賞を贈られまくるのだ。それが現実だからこそ、その現実をつぶさに描き出す本作を称賛せずにはいられないのだ。

格差は厳然として存在し、命は階層よりも軽い。飼い慣らされた茹でガエルのままで、果たして私たちはそれでいいのだろうか。
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監督・撮影:アレクサンダー・ナナウ
脚本:トマス・ヴィンターベア&トビアス・リンホルム
出演:カタリン・トロンタン、カメリア・ロイウ、テディ・ウルスレァヌ、ブラッド・ボイクレスクほか
配給:トランスフォーマー
公開:10/2(土)シアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
公式サイト:transformer.co.jp/m/colectiv/ 

© Alexander Nanau Production, HBO Europe, Samsa Film 2019

 


記:林田久美子  2021 / 08 / 09











エンタメ シネマピア   記:  2021 / 08 / 10

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