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【映画レビュー】さがす

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「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」……そう娘に告げた翌日、父親は忽然と姿を消した……。父親役にはTVバラエティ番組でもお馴染みの佐藤二朗。娘役には『湯を沸かすほどの熱い愛』、『空白』、TV「おかえりモネ」の原田楓。異才の監督は片山慎三。前作『岬の兄妹』は自主製作ながらもそのクオリティの高さから劇場数が拡大公開となり、異例のロングランを記録したという突出した才能を誇る監督の商業デビュー作。

大阪の下町で暮らす父と中学生の娘。裕福ではないが、つましく、仲良く、“普通”の生活を“普通”に送る日々。だがある日、「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」と娘に告げた父親は、その翌日に忽然と姿を消した……。

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原作モノではない、映画オリジナル脚本。モチーフは、誰もが知る有名なあの事件だろう。SNSで、とある願いで繋がれた者どうしが出会い、そして起こったあの事件。本作のストーリーは謎で始まり、その謎がもつれ合い、あらゆる場面で観客の想像を裏切り、そしてラスト、またもや想像だにしない展開で幕を閉じる。清廉潔白でも聖人でも神さまでもない「人間」が、家族のため、欲のために地獄の底に足を突っ込み、相手と自分を騙しながら闇に飲まれていく。善と悪と、愛と憎悪と、決断と後悔と、人間の性(さが)と......ないまぜになったそれらが境目もなく入り交じり、スクリーンと、そして我々の心を占拠する。

外野に足を置きながら、他人を「善」で責め立てるのは簡単だ。当事者でもなく、その苦しみを直接味わうでもなく、あくまでも安全圏から裁きを下すのは、本当に本当に簡単なことだ。だが果たして、もし自分があの登場人物と同じ状況に置かれたとき、完全なる善を選択し続けることができるだろうか。いついかなる時にも正しい判断をすることなどできるだろうか。ましてや、家族を思う愛がそこにあったのなら。家族のためにその決断をするのなら、なおさら。

とある場面、卓球のシーン、親と子の間を行き来するピンポン玉。究極の状況において、それでも心を通わせあう、親と子。ピンポン玉の色は白。それはきっと、相手を許し、包み込む色なのだろう。

究極に強烈な、異色の作品。必ずや、邦画史に深い爪痕を残すことだろう。

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監督・脚本:片山慎三
共同脚本:小寺和久 高田亮
出演:佐藤二朗、伊東蒼、清水尋也、森田望智、石井正太朗、松岡依都美、成嶋瞳子、品川徹
配給:アスミック・エース
公開:2022年1月21日(金) テアトル新宿ほか全国公開
公式サイト:https://sagasu-movie.asmik-ace.co.jp/ 

© 2022『さがす』製作委員会

 


記:林田久美子  2021 / 11 / 09











エンタメ シネマピア   記:  2021 / 11 / 10

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