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【映画レビュー】グリーン・ナイト

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アーサー王の甥・ガウェインは、宮殿を訪れた“緑の騎士”の遊び事=ゲームに乗り、彼の首を切り落とす。だがその騎士は自らの首を拾いあげ、「1年後のクリスマスに私を捜し出し、ひざまずいて私からの一撃を受けるのだ」と笑いながら去って行った……! 14世紀の作者不明の叙事詩「サー・ガウェインと緑の騎士」をもとに、第89回アカデミー賞®作品賞受賞の『ムーンライト』や『エクス・マキナ』、『ミッドサマー』、『ライトハウス』等、発表する作品ごとに次々と映画ファンを熱狂させてきた製作スタジオ・A24が、彼らとしては初の本格ファンタジーで新境地を開拓。また、第23回ゴールデントマトアワーズ最優秀SF&ファンタジー映画賞受賞他、世界各地で数々の映画賞を受賞するなど多くの映画人を魅了。A24ならではのリアリスティックな目線で、壮大なる神話が新たな幕を開ける……!

雪の舞うクリスマスの朝。娼館で目覚めたアーサー王の甥、サー・ガウェイン(デヴ・パテル)は、母の兄であるアーサー王(ショーン・ハリス)の宮殿に出向く。何不自由なく暮らし、何の実績も功績も持たずにだらけた人生を送ってきたガウェインは、屈強な騎士たちが集う宴で居心地の悪さを感じていた。するとそこへ、全身が草木で覆われた妙な出で立ちの騎士が現れる。その騎士は、遊び事=ゲームと称して恐ろしい提案を投げかけた……。

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A24の手にかかれば、幻想的で美しい叙事詩ですらその皮を剥がれ、内側に潜む醜い現実の一面を惜しげもなく露わにさせられる。 原作となった14世紀のその叙事詩では高潔な騎士として描かれていたガウェインが、本作ではたいして特技を持つでもなく実績もなく、生きる希望も特にはなくただただ遊興に明け暮れて命を浪費している不甲斐ない男として登場する。生まれ落ちた家柄が良かったことだけが取り柄のその男は、現代で例えるなら二世タレントのようなものか。
『聖なる鹿殺し』のバリー・コーガンが登場するや否や、陰鬱な旅の空気は更に一変する。A24の手のひらの上では、美しい物語が美しいままでいられるわけがない。

おとぎ話にはおとぎ話としての存在意義がある。クライマックスでは、原作とはまた別の落としどころで人生の教訓が指し示される。まるで本作そのものが1つの名言であるように、神聖な輝きを伴いながら物語は結末を迎える。『スラムドッグ$ミリオネア』ではその頭脳でスラムから抜け出し成功を手にするまでを演じたデヴ・パテルが、本作ではまた違ったアプローチで、人間が変わっていく様を演じる。寓話特有の教訓が、本作でもしっかりと核をなしている。ただのダークな雰囲気ものでは決してないのだ。

そうそう、序盤で登場するガウェインの恋人(アリシア・ヴィキャンデル)の顔は、しかと記憶に叩き込んでおくべし。この美女はただのモブキャラにあらず。
壮大で美しく、そして美しいだけではなく各所に毒を散りばめてさり気なく観客の度肝を抜く本作。是非、劇場でその毒気に当てられていただきたい。


監督・脚本・編集:デヴィッド・ロウリー
出演:デヴ・パテル、アリシア・ヴィキャンデル、ジョエル・エドガートン、サリタ・チョウドリー、ショーン・ハリス、ケイト・ディッキー、バリー・コーガン、ラルフ・アイネソン
配給:トランスフォーマー
公開:11月25日(金)TOHOシネマズ シャンテ ほか全国ロードショー
公式サイト:https://www.transformer.co.jp/m/greenknight/ 

© 2021 Green Knight Productions LLC. All Rights Reserved

 


記:林田久美子  2022 / 09 / 09











エンタメ シネマピア   記:  2022 / 09 / 10

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