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【映画レビュー】別れる決心

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刑事が愛したのは、殺人事件の被疑者だった……!? 第75回カンヌ国際映画祭で監督賞受賞、第95回アカデミー賞®国際長編部門では韓国代表に選出、ゴールデン・グローブ賞では作品賞・非英語作品ノミネートほか、世界各国の映画賞を総なめ! 本国の韓国では書籍として発売された脚本集がベストセラー1位を記録するほか、決め台詞がSNSで大バズりするなど、一大ブームを巻き起こしているミステリー・ロマンス。『オールド・ボーイ』『渇き』『お嬢さん』のパク・チャヌク監督が、優秀な刑事役に『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』のパク・ヘイルを、美しい被疑者役に『ラスト、コーション』『レイトオータム』のタン・ウェイを据え、予想だにしない展開の迷路へと観客を誘う。

何よりも仕事を優先させ、史上最年少で警部になった几帳面で真面目な性格の刑事、チャン・ヘジュン(パク・ヘイル)。平日は1人で暮らし、離れた街で働いている妻の元へは週末にだけ帰る生活だ。そんなある日、高く切り立つ岩山の頂上から男が転落死したという一報が入る。事件か事故か捜査を始めると、男の妻、ソン・ソレ(タン・ウェイ)が容疑者として浮上する。だが実は、ソレを一目見た瞬間、刑事は彼女に恋をしてしまっていたのだ……。

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ひとことで表すなら、本作のテーマは純愛だ。その純愛を軸に、時にコミカルに、時にシリアスに、ミステリアスなストーリーがこれでもかこれでもかと交叉し続ける。鑑賞後にはこんがらがったストーリーの縄でがんじがらめになり、そこから抜け出すためにもう1度、2度と、何回でも本作を観たくなる中毒症状にかられてしまう。多くの人が1度は心に思ったことがあるであろう、「してはいけない恋心」を思い出させてしまう。

コロナ禍が日常となった今、良かったと言ってはいけないが、便利になったと言える状況がある。それは、こうした映画の試写のために電車に乗って都内の試写室へ出向かずとも、自宅に居ながらにしてオンライン試写ができるようになったことだ。そして本作は、結果、そんなオンライン試写の特性を存分に生かしながら楽しめた映画でもある。
一体、どういうことか。試写室や劇場で観る映画はスクリーンを凝視しているため、当然ながら何度も繰り返し観たり、途中で残り時間を確認したりすることはできない。が、オンライン試写ならそれができる。
いつものように前知識をなるべく入れずに本編を再生し、「ソレはEXITりんたろーの結婚相手・本郷杏奈さんとかWinkの相田翔子さんに似てるよね〜」等々思いながら鑑賞していると、あれ? 事件の真相が分かったから普通はこのへんで終わりだよね? な箇所で終わらない。念のため残り時間を確認すると、だいたいここで半分くらいだ。するとある登場人物が、とんでもない言葉を吐く。そして豪華絢爛な迷宮への扉が開く。ここまでとここからは、監督も言うように“対比”なのだ。蝶の羽根のように右と左に分かれた、美しい対比なのだ。

何度も何度も観たくなるしかけも、様々な箇所に散りばめられている。私なんぞは、あれ? あの“言葉”って、言ってたっけ? と確認のために2回、本作を観たクチだ。他にも多種多様なしかけが、本作には組み込まれている。韓国のアイドルグループ、BTSのメンバーも複数回鑑賞したことをSNSに投稿したそうだが、私だって、時間が許すなら3回目でも4回目でも観たい。手品の種明かしを、目を皿のようにして確認したい。後半でとある人物のキーとなる“色”と模様がそれよりもっと前のシーンのとある箇所でババーンと使われていたり、それはその人物の人生を象徴する色だったり、日本のとある食べ物が“愛”の象徴だったり。
とある、とある、とある……。ネタバレできないから“とある”としか書けないのだ。あー、じれったい。本作鑑賞後の人たちとお酒でも飲みながら本作について語り合いたい。きっと夜通し語って、朝になってもまだ、語り尽くせないことがたくさん残るんだろうな。それぐらいギュッと、韓国らしく濃い味の要素がふんだんに詰め込まれた傑作なのだ。それでいて、こんなに穢れているのに、否、穢れているからこその、純愛なのだ。

本国同様、日本でもまた、劇場に通うリピーターが続出するだろう。私もまた、その1人となることだろう。

監督:パク・チャヌク
脚本:チョン・ソギョン、パク・チャヌク
出演:パク・ヘイル、タン・ウェイ、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公開:2023年2月17日(金)より TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
公式サイト:https://happinet-phantom.com/wakare-movie/ 

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記:林田久美子  2023 / 02 / 08












エンタメ シネマピア   記:  2023 / 02 / 10

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