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【映画レビュー】落下の解剖学

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雪山の山荘から転落死した男。これは事故なのか自殺なのか、それとも殺人なのか……?!第76回カンヌ国際映画祭でパルムドール受賞、第81回ゴールデン・グローブ賞では作品賞を含む2部門受賞、そして名犬ボーダーコリーもパルムドッグ賞を受賞する他、世界各国の名だたる賞を席巻!人間の本性が徐々に剥き出しになる様を、果たしてあなたは凝視できるだろうか……?アカデミー賞®最有力の呼び声が高まる本作が、いよいよ日本にお目見えだ。

フランスの人里離れた雪山。ドイツ人のベストセラー作家・サンドラは、フランス人の夫・サミュエルと11歳の息子ダニエル、愛犬のスヌープと暮らしていた。ある日、サンドラが自宅で学生からインタビューを受けていると、やにわに上のフロアにいる夫の部屋から大音量の音楽が聞こえだす。あまりに大きな音のため、仕方なくインタビューを中断して学生を帰すサンドラ。だが、ほどなくして夫の変わり果てた姿を発見することになる……。

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犯人を暴く過程を楽しむ単なるミステリーではない複雑さが、本作の味わいどころであり醍醐味だ。自然に囲まれ、豊かな暮らしをしていたかに見えた家庭の内情。観客の誰もが最初は信じて疑わなかったとある登場人物が、その表面の皮を徐々に徐々に剥がされていく様。と同時に、亡くなった夫の実際の姿もまた、不名誉にも顕わにされてしまう哀れさ。 世の中や人間関係というものは、誰が悪くて誰が良いと、白黒ハッキリ色分けできるものではない。良い部分と同時に悪い部分をも併せ持っているのが人間というものだ。とある局面では良い側面が良い結果をもたらすが、その良い側面だったはずの性質が、別の局面では真逆に作用して悪い側面へと即座に転じてしまう。人間のそうした性質を、本作は丁寧な筆致で、容赦なく描き尽くす。
と同時に、人間の良き部分、善なる部分も、確かに輝かせ、人間の本質そのものへ希望を見出させてくれる。この出来事を機に、息子の内面が徐々に徐々に大人へと成長していく様がまた、圧巻だ。
タイトルが示すとおり、本作は人間の本質を解剖し、観る者の心を深くえぐる。

作品を観る時、私はなるべく事前情報を入れずに観るようにしている。本作も情報に極力触れないようにして観終わったのだが、のちに調べれば監督は齢46歳の女性。ジェンダーレス云々かんぬんと言われる昨今だが、本作は女性ならではのきめ細やかさが存分に発揮されているのではないか。(……いや。私は女性だがきめ細やかではないので、やっぱジェンダー関係ないわ)
「神は細部に宿る」を体現したかのような、スクリーンの粒子ひと粒ひと粒に神が宿っているかのような本作。是非、劇場の大スクリーンで存分に味わっていただきたい。

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監督:ジュスティーヌ・トリエ『ヴィクトリア』
脚本:ジュスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ
出演:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール
配給:ギャガ
公開:2024年2月23日 TOHOシネマズ シャンテ他全国順次ロードショー
公式サイト:https://gaga.ne.jp/anatomy/ 

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記:林田久美子  2024 / 01 / 10











エンタメ シネマピア   記:  2024 / 01 / 10

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