シネマピア

ホームランが聞こえた夏

20110826picm.jpg 今年の夏の高校野球甲子園大会はいろいろな意味で特別な大会だった。皆がひとつの“絆”という言葉を胸に戦い、手に汗握る接戦や奇跡の大逆転など、さまざまな感動を私たちに与えてくれた。

おとなり韓国でも人気の高校野球だが、日本と少々事情が違うようだ。4000以上の高校に野球部がある日本とは異なり、韓国の高校野球部は全国でも五十数校のみ。少数精鋭制を採り、韓国プロ野球の予備軍としての要素が強い。“韓国の甲子園”と称される高校野球全国大会「鳳凰杯」にも地区予選はなく、“全国大会レベル”の全高校が出場する。
この作品は、そんなプロ野球予備軍の大会に挑む、ろう学校野球チームの実話をベースにした物語だ。

20110826pic1.jpg 中学野球の天才ピッチャーだったミョンジェ(チャン・ギボム)は、試合中に突然聴覚を失い、野球への道を断念、ろう学校のソンシム学校高等部へ通っていた。夢を失ったミョンジェは、学校もサボりがち。ある日、ゲームセンターで高校生といさかいを起こし、警察に捕まってしまう。

プロ野球界最高の投手だったキム・サンナム(チョン・ジェヨン)は、度重なる不祥事に加えて飲酒による暴行事件を起こし、球界追放の危機に面していた。マネージャーのチョルス(チョ・ジンウン)の尽力により名誉挽回の機会として与えられたのは、ソンシム学校高等部野球部の臨時コーチだった。高等部の学生21人から寄せ集められた10名で構成される野球部は、基礎も身についておらず、聴覚障害というハンディのせいでチームプレイもままならない。<“韓国の甲子園”「鳳凰杯」で一勝する>という夢を抱いていたが、実際の実力は中学校の野球部とも苦戦を強いられるありさま。
クンサン中学との試合でデッドボールを受けた投手は、失望して退部、野球部は投手を失ってしまう。コーチ業に乗り気がせず、周囲にも悪態をつきまくるサンナムだったが、ある晩、ミョンジェが人知れず投球練習をする姿を目にし、野球への情熱を思い出す――。

ド派手なアクションシーンも凄いCGもないが、私の中では今年のナンバーワン映画。この映画は私の涙腺をビクビク刺激し、心をゆさぶり、そして胸に突き刺さるそんな作品だ。野球への夢を断たれた二人の人物が、いかに再生していくのか……。映画『黒く濁る村 』でカリスマ老人を演じ、“韓国のアカデミー賞”と称される「青龍映画賞主演男優賞」など数々の映画賞を受賞したチョン・ジェヨンがその一人を演じる。その演技は、毎日1000球の打撃練習など、野球の猛特訓を受けただけあって、まるで野球選手が演技をしているかのようだった。
プロ野球界の元国民的スター投手が地位も夢も失ったドン底から野球部員たちの思いに触れて初心を思い返し、再起していく姿を見事に演じている。もう一人の天才ピッチャー役の新人チャン・ギボムは手話と表情だけのむずかしい演技をリアルに表現していた。

この作品、野球に対しての名言がいっぱい詰まっていて、そのセリフのひとつひとつに思わず納得させられてしまう。特に練習シーンなど「基本はそこだよね」って思ってしまうほど。完璧なまでの演出は野球だけではなく、手話のシーンにも見られる。1週間に3〜4回の手話のレッスンが行なわれ、専門の手話通訳士の動きを携帯電話で録画し、レッスン以外でも練習を繰り返したという。
特に手話の演技が多かったユソン(ナ・ジュウォン役)、カン・シンイル(教頭先生役)など、先生役の俳優たちも訓練を受け、自然な手話演技場面を作り上げていったという。

ひさびさに思いっきり感動し、そして泣いてしまった作品。私は、この手の映画に弱いので、このレビューを書いている途中でも思い出して涙が出るほど。夢中になることの大切さ素晴らしさを感じさせる作品。心は熱く燃やせ!!
まだ、高校野球甲子園大会の余韻がさめやらぬこの時期、少年たちが苦難を乗り越えながら一丸となってひたむきに頑張る姿を、ぜひご覧あれ!!


【おまけ・本作だけじゃない!感動の野球映画】
フィールド・オブ・ドリームス/FIELD OF DREAMS(90年)
農夫のレイ・キンセラ(ケヴィン・コスナー)が、ある日不思議な声を聴き、自分のトウモロコシ畑に野球場を作る。そこにかつて野球で挫折したシューレス・ジョー・ジャクソン(レイ・リオッタ)が仲間を連れ現れた。さらに不思議な声に導かれて仲間を集めるレイ。
そして、野球を始める。それぞれの人にそれぞれの人生があり、なかでも晩年を医者として過ごしたムーンライト・グラハム(バート・ランカスター)のシーンは涙が出る。そして、最後のキャッチボールシーンは感動的。

監督:フィル・アルデン・ロビンソン
出演:ケヴィン・コスナー/バート・ランカスター

ミスターベースボール/Mr. Baseball(92年)
ニューヨーク・ヤンキースの強打者だったジャック・エリオット(トム・セレック)が、日本の球団へトレードされる。行き先は中日ドラゴンズ。日本の野球のやり方や文化にびっくり! 中日ドラゴンズの監督がなんとあの高倉健。まだナゴヤドームじゃなくて中日球場なんですよ、懐かしい!
あっ、私は名古屋出身の中日ファンなので……。この映画、日本の描き方も妙でそんなところも面白い……って、ちょっと感動の野球映画って感じではなかったですね(笑)。

監督:F・スケピシ
主演:トム・セレック/デニス・ヘイスバート/高倉健

陽だまりのグラウンド/HARDBALL(2001)
スポーツギャンブルにのめり込んで身を持ち崩したコナー・オニール(キアヌ・リーブス)が、借金返済のためシカゴの低所得住宅で生活する少年たちの野球チームのコーチをすることに。劣悪な環境のなかでも野球を楽しむ少年たちと交流を深めるうちに自分をとりもどしていくコナー。
そんなコナーの心の再生を描いた心あたたまる感動作。

監督:ブライアン・ロビンス
主演:キアヌ・リーブス/ダイアン・レイン


監督:カン・ウソク
出演:チョン・ジェヨン/ユソン
配給:CJ Entertainment Japan
公開:8月27日(土)よりシネマート新宿、銀座シネパトスほか全国ロードショー
公式HP:http://homerun-movie.com/

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エンタメ シネマピア   記:  2011 / 08 / 26

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