シネマピア

オール・ユー・ニード・イズ・キル

20140619cpicm.jpg戦っては死に、死んではまたもとの一日に戻り、また死を迎える終わりのないループに引きずり込まれた1人の兵士。彼は人類を未知の生命体から守り抜くことができるのか? 日本原作のラノベ(ライトノベル)が、トム・クルーズ主演、ダグ・リーマン監督(『ボーン・アイデンティティー 』、『Mr.&Mrs.スミス 』)で堂々のハリウッド実写化となった。

謎の侵略者“ギタイ”からの攻撃で滅亡寸前にまで追い込まれた人類。軍のエリート広報官であるウィリアム・ケイジ少佐(トム・クルーズ)は典型的なホワイトカラーで、その才能を“非実戦”のためだけに費やしてきた。だが、身の処し方を間違えた彼はあろうことか最前線に送り込まれてしまい、初めての実戦であっけなく死んでしまう。だが死のその直後、彼は瞬時に出撃前日に戻っていた……。

20140619cpic1.jpg桜坂洋による同タイトルの原作 は筒井康隆らに絶賛され、ラノベながらも星雲賞候補作にもなったという、もはやラノベの域を超えたとも言えるSF小説。これを集英社の子会社がアメリカで英訳出版し、映画化権をワーナーに売却、実写化と相成った訳だ。映画化が決まった当初はダンテ・ハーパーが原作をもとに脚色を加えた脚本だったが、ジョビー・ハロルドが主人公の年齢をトム世代に書き直した。だが完成版のクレジットにはこの2人の名前はもはやない。代わりに『ユージュアル・サスペクツ 』でアカデミー賞脚本賞受賞経験のあるクリストファー・マッカリー、『フェア・ゲーム 』でもダグ・リーマン監督とタッグを組んだことがあるジェズ・バターワース&ジョン=ヘンリー・バターワース夫妻が脚本家として名を連ねてある。推測の域を出ないが、当初は原作どおりだった米原題の『All You Need Is Kill』が結果的に『Edge of Tomorrow』に変わったのは、脚本家総入れ替えが理由のひとつになったのかもしれない。ハリウッド脚本家の世界も実力がすべてを支配しているのか、それとも権利関係やらネームバリューやら何やらいろいろあるのだろうか。南無……。

桜坂の原作をもとにした漫画は現在、「となりのヤングジャンプ」で読むことができる(ある意味ネタバレを含むので、映画鑑賞後に見ることをお薦めする)。これと本作を比べると、ループの設定は確かに原作を踏襲しているが、中盤からラストまでのストーリーは原作とはかなり異なる映画オリジナルストーリーになっている。原作が主人公の少年の心の動きに焦点を当てた作りになっているのに対し、本作はその世界観と舞台設定をより拡大させてスケールアップし、“ギタイ”デザインもより攻撃的で恐ろしくし、そしてお約束どおり「トム映画」の要素も加えた形だ。もっとも、本作以外でも原作があるものを映画化する際には、監督は「原作を超えられるか?」ということを念頭に製作するそうなので、この改変は当初から監督の意図するところだったのだろう。
現在、日本では「原作」と謳っているが、今年1月に日本のワーナーからリリースされた情報には、桜坂のクレジットは「原案」となっていた(単なるタイプミスかもしれないが)。実際、原作の内容が映画に反映されている比率から言えば、「原案」というのは案外、的を射ているのかもしれない(余計なお世話だろうが、この流れだと原作者の懐にはあまり大きな金額は入っていないのではないか)。

と、裏舞台の邪推はこれくらいにして、本作の感想をストレートに言おう。「スッゲー面白かった!」のだ。あまり他では見られないヘタレなトムを楽しめるし、だからこそ安定の「トムなら大丈夫」感を払拭して手に汗にぎってスリルを楽しめるし、ヒロインのエミリー・ブラントは今までアクション経験なしにも関わらず、えっらいシャープかつ骨太な動きでドS設定だし、とエンタメ要素が盛りだくさん。個人的には、冒頭からのビル・パクストンの口調にツボってしまった。ストーリー展開もミステリー仕立てとなっている割には、過去のトム出演SF作『オブリビオン 』とは違ってイマジネーションの部分がキッチリと映像化されており、観客をオイテケボリにすることもない。戻ったトムが所作を変えることに呼応して微妙に変わる「現在」の描写も秀逸だし、「未来」を知るトムの言動もコミカルで笑える。アクションはド派手だし、ロマンスも程よく配合され、ラストには思わず涙さえ出てしまう。ザッツ映画! な、全部入りエンタメなのだ。類まれなるSF大作としての金字塔を打ち立てること間違いなし。ぜひとも大迫力のIMAX、3D映像でお楽しみいただきたい。


原作:桜坂洋『All You Need Is Kill』
監督:ダグ・ライマン(『ボーン・アイデンティティー』『Mr.& Mrs. スミス』『ジャンパー』)
脚本:クリストファー・マッカリー、ジェズ・バターワース&ジョン=ヘンリー・バターワース
出演:トム・クルーズ(「ミッション:インポッシブル」シリーズ、『ナイト&ディ』)、エミリー・ブラント(『プラダを着た悪魔』『アジャストメント』)、ビル・パクストン、キック・ガリー、ドラゴミール・ムルジッチ、シャーロット・ライリー、ジョナス・アームストロング、フランツ・ドラメー
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開:7月4日(金)、2D/3D公開
公式サイト:www.allyouneediskill.jp


 

©2014 VILLAGE ROADSHOW
 















エンタメ シネマピア   記:  2014 / 06 / 19

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