インタビュー/記者会見

映画『栞』(主演:三浦貴大)
榊原有佑監督にインタビュー!
「理学療法士のリアルを知って欲しい」

shiori_001.jpg 真面目な性格で、献身的に患者のサポートに取り組む理学療法士の高野雅哉を通して描く、命の物語。本作でメガホンをとったのは、初監督作の短編映画「平穏な日々、奇蹟の陽」で、アジア最大の国際映画祭「Short Short Film Festival 2014 & Asia」のJAPAN部門でノミネートを果たした榊原有佑。長編2作目となる本作は監督の実体験にフューチャーして描かれ、自らが脚本も手掛けている。主人公の高野を演じるのは、安定した演技で定評のある若手実力派、三浦貴大。患者と向き合う日々の仕事の中で、不治の病に倒れた父への思いを抱え、自分自身への限界を感じ苦悩する高野を重厚感溢れる演技で熱演。高野と向き合うことになる元ラグビー選手の患者を、2004年の『超星神グランセイザー』でインパクターロギア役で人気を博し、以降個性的な演技で注目を集める阿部進之介が演じている。そして高野の妹役には、白石聖。職場の同僚に池端レイナといった若手が集結。更に高野の祖父役に、時代劇の斬られ役として知られる福本清三。父役には数多くのドラマ・映画で存在感を放つ鶴見辰吾といったベテラン俳優陣が脇を固めている。「僕に何ができるのか?」――人生において誰もが自問自答するであろうこの疑問に、寄り添うように向き合い、丁寧に描かれた感動の物語が誕生した。今回は、10月26日(金)より、新宿バルト9で公開中の本作の原案・監督・脚本・編集を務めた榊原有佑監督に、映画『栞』について話を聞いた。

shiori_010.jpg ■ストーリー
真面目な性格で、献身的に患者のサポートに取り組む理学療法士の高野雅哉。 幼い頃に母親を亡くし、現在は父親の稔、妹の遥と離れて暮らしている。そんなある日、雅哉が働く病院にしばらく会っていなかった父・稔が入院してくる。日に日に弱っていく稔の姿、担当患者の病状が悪化するなど理学療法士として何が出来るのか自問自答の毎日で無力感に苛まれる。しかし、そんな時ラグビーの試合中にケガをした新たな入院患者を担当することになった雅哉。その入院患者の懸命に生きようとする姿に感化され、徐々に仕事への熱意を取り戻していく雅哉だったが……。病院という身近な人の死を経験する場所で理学療法士として、雅哉の選択していく生き方とは…。

shiori_002.jpg 尾崎:今回の作品を作るきっかけについてお聞かせてください。
榊原監督:以前、理学療法士として働いていました。病院の中で患者さんと1対1で向き合って仕事をすることが基本です。会員数は多いですが、その中で外に向かって情報を発信する人がなかなかいませんでした。勉強会や研修会なども理学療法士同士の内輪での発表が多かったんです。一般的には、まだまだ理学療法士という名前は浸透していないですよね。理学療法士の知名度を上げることは、結果、病院で色々な葛藤を抱えている患者さんのことを知ることにもなり、医療現場のサービスの向上にも繋がります。そういった考えから理学療法士について情報を発信する必要性を感じました。そのことが最初のきっかけです。
情報発信の方法として、ブログやジャーナリストになるなど、いろいろな方法を考えました。当時YouTubeの人気が出始めていたこともあり、これからは映像の時代になると思い、映像を作るスキルを身につけておけば自分で情報発信ができると考えました。
その後、映像関係の仕事をする中で、色々な縁から映画プロデューサーと出会い、映画の現場に入ることになりました。短編映画を撮影し映画監督としてもデビューを果たしました。当時、自分の理学療法士時代の出来事を、映画プロデューサーに話したところ「それを脚本にしてみないか」と提案をいただき、そこからこの作品『栞』が生まれました。

shiori_016.jpg 尾崎:企画からキャスティングまでのエピソードなどをお聞かせてください。
榊原監督:企画の段階で大変だったことは、製作委員会を組む際に、理学療法士が主役という内容が伝わりづらかったことです。お医者さんが主役の物語であれば、色々とイメージはできますよね。「理学療法士はリハビリの先生です」といった時にイメージされるのは、高齢者の歩行訓練のために一緒に歩いてくれる人といったイメージなんです。なかなか本当の現場での出来事が伝わらなかったり、イメージすらしてもらいにくく、そこが苦労した部分でした。脚本を書き上げた時に「この作品はしっかりとした作品になる」とプロデューサーの判断のもと、そこから制作が進んでいきました。
脚本の途中から僕の中では、主人公の高野雅哉役には三浦貴大さんが良いなという思いが広がり、彼をイメージして書いていました。まだ、オファーする前からです。この映画の主人公は自分から行動して、壁にぶち当たってそれを乗り越えていくというタイプではなく、周りの登場人物の色々な描写を受ける芝居が求められていたので、そういうこともあり三浦さんが良いなと考えていました。実際にオファーさせていただいた時に、一度お会いしてお話をしました。三浦さん自身ライフセーバーの経験があったことも、雅哉を演じる上で良かったと思います。ライフセーバーも、命を救うことができる時もあれば、できない時もあるということでは、体験として理学療法士に近いところもあります。彼は体育大学の出身で、病院にも実習に行った経験もあり、三浦さんが自分の中でイメージできていたことにプラスして、彼が感覚としてこの主人公に近いものを感じました。撮影に入る前の衣装合わせでは、理学療法士の服装のことをケーシーといいますが、ケーシーを来た瞬間に周りから拍手が起きました。理学療法士協会の会長さんから「理学療法士よりも理学療法士らしい」というお言葉もいただきました。

shiori_003.jpg 尾崎:この作品は榊原監督自身の経験をもとに作られたと伺いましたが……。
榊原監督:登場人物の中でメインの患者役が3名います。下半身不随のラガーマンの藤村孝志、高野雅哉の父親の高野稔、難病の小児患者の山本海音。この3名は、実際の患者さんをモデルにしていて、彼らのとった行動は実際に自分が経験したことなんです。10年以上前の出来事なので、自分が経験した10年前の感じに近いイメージの古くからある病院で撮影しました。作品上では記載はしていませんが、スタッフとは10年前の設定で進めました。準備した医療機器やスマホや車などは、10年前にあるものを使っています。自分が肌で感じた景色を作りたいと思いました。

shiori_015.jpg 尾崎:本作品について撮影時のエピソードなどがありましたらお聞かせください。病院での撮影ですが、制限などはありませんでしたか?
榊原監督:今回、撮影に使わせていただいた病院は、自分のイメージにピッタリの病院でした。偶然、撮影に使用したフロアだけ、休床中だったんです。そのフロアだけ稼働していない状態で、患者さんもいませんでしたので、撮影は順調に進みました。上下階には、実際の患者さんが入院していたこともあり、撮影時間が21時までの撮影でしたが、それもしっかり守ることができました。
撮影自体のテーマが重かったこともあり、シリアスな内容だったので、役者の本番の集中力が求められる現場でした。でもカットがかかった後には、和気藹々としていました。本番だけピリっとした雰囲気で、撮影自体は朗らかに進みました。

shiori_011.jpg 尾崎:出演者について、印象や撮影中のエピソードなどはお聞かせください。
先ほど三浦さんをイメージして脚本を書かれたと伺いましたが、その他での三浦貴大さんはいかがでしたか?
榊原監督:撮影とは関係ないですが、彼がボクシングにハマっていて、撮影の合間にずっとシャドーボクシングを教えてもらっていました。現場での雰囲気作りの面では、彼に助けられました。彼は、メチャクチャ弄られるんです(笑)。共演者はもちろん、スタッフ、助監督にまで。その結果、確実に彼を中心として良い雰囲気が生まれました。チームの団結力を彼自身が弄られることで作っていました。それが意図的だったのかは分かりません(笑)。

shiori_012.jpg 尾崎:阿部進之介さんについて伺います。この作品の中での存在が大きかったと感じました。印象深い演技でした。
榊原監督:彼が演じた孝志も実際にモデルになった人物がいますが、医療の現場で僕たちが言われることは、障害の受容は簡単なことではないということ。全てを受け入れているように見えても、本当かどうかは分からない。まさにその人物が孝志だと思っています。孝志を演じる上で難しいところは、表の部分の周りと接する時の顔と内面に抱えているものが違うというところ。心情的に演じる難しさの他にも体を作るフィジカルな部分での難しさもありました。ただ単に筋肉を増量すれば良いということではなく、足は細く上半身はムキムキにしなければなりませんでした。準備の段階から阿部さんは、かなりストイックに取り組んでいました。上半身のみ筋トレをして、足は極力使わないように。階段は絶対に登らない、自宅にいる時にはずっと横になって、足の筋肉はできるだけ衰えさせることを心がけていたと。
尾崎:どのくらいの期間ですか?
榊原監督:クランクインの3ヶ月前から調整して、最後の1ヶ月は「もう歩きません」というくらい彼は体を作っていました。筋トレも立った状態でダンベルをすると足にも負担がかかってしまうので、足を浮かせて上半身だけでトレーニングをしていました。その他には、彼とふたりで実際にリハビリ施設を見学して、直接、彼らの今の心情についてお話を伺ったりもしました。

shiori_013.jpg 尾崎:鶴見辰吾さんついて伺います。脳にできる腫瘍で、すでに末期と診断されてという役柄でしたが……。
榊原監督:撮影現場に入られた時には、メイクがない状態でも、すでにゲッソリとされていて、しっかりと役を作られていました。鶴見さんで一番印象に残っていることは、この役どころはどうですか?ではなく「この栞というタイトルの意味はなんですか?」と聞かれたことです。現場では、僕がやりたいことをとても理解してくださいました。親子3人でのシーンでのことが印象的で、僕が娘役の白石さんに指示を出したとしても、鶴見さんから彼女にフォローが入るんです。自分の役だけではなく作品全体や僕の思いを汲み取っていただける人でした。

shiori_014.jpg 尾崎:白石聖さんは、オーディションを勝ち抜き選ばれた新人女優と伺いましたが……。
榊原監督:約300名のオーディションの中から選びました。この遥という役は、全体のオーディションの他に、遥だけのオーディションを行いました。それだけこの作品では重要な役どころでした。白石聖さんは、新人だから良かったという面もありましたが、とはいっても彼女の才能の部分も強いんですけど、考えて見せようとするのではなく、感覚的に演じている部分がありました。そのことが、彼女を選んだ理由です。
尾崎:全体の重い内容の中で、彼女の初々しさで調和がとれていたような。
榊原監督:明るく振る舞っていても内面は違って、あのような立ち位置でありたいと考えていました。彼女と話したことは、阿部さんと同じように「そういう風に見えるけど本心は実は違っている」というところで、この作品の中で重要な役どころだったんです。

尾崎:それでは、最後にメッセージをお願いします。
榊原監督:自分の体験があっての作品ですが、最初はその経験を映画にしたいとは考えてはいませんでした。実際の現場では人も亡くなっていますし、ショッキングな出来事もありましたから。それを映画にするなら、自分は何を伝えたいのかをまず考えました。映画としてみんなを驚かせようといった、そういうことは脚本の段階から演出まで一切排除しました。ただひとつ、リアルを知って欲しいということだけでこの作品を作りました。そういった芝居や演出をしています。観る時ではなく観た後に、これが実際に起きたことであり、今、映画を観ているその瞬間にも、どこかの病院で起きていることかもしれない。それを知っていただければと思っています。是非、劇場でご覧ください。

shiori_004.jpg ■榊原有佑/プロフィール
1986年生まれ、愛知県出身。株式会社 and pictures 所属。 CM、MusicVideo、TV、企業VPなどジャンルを問わず、様々な映像分野で幅広く活動。ディレクションを始め、撮影、編集、VFX など映像制作に必要な技能全てを身につけ元理学療法士という特異の経歴から得た感性を武器に、独自の世界観を作り上げるという「感性と技術が融合した」新しいタイプの次世代監督の一人。 2012年より映画製作会社 and pictures に所属し本格的に映画監督としての活動を始める。2013年に初監督を努めた短編映画「平穏な日々、奇蹟の陽」はアジア最大の国際映画祭「Short Short Film Festival 2014 & Asia」のJAPAN 部門ノミネート、主演の有村架純がベストアクトレスアワードを受賞。2016年、JリーグFC東京の2015シーズンを追ったドキュメンタリー映画「BAILE TOKYO」で長編映画デビューを果たす。今作品「栞」が長編映画2作品目となり、自身で原案・監督・脚本・編集を行うなどこだわり抜いた初の長編ドラマ作品となる。

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監督:榊原有佑
出演:三浦貴大
阿部進之介/白石聖/池端レイナ/福本清三/鶴見辰吾
脚本:眞武泰徳 
共同脚本:岡本丈嗣 
音楽:魚返明未
主題歌:「Winter」作曲:Liam Picker/西川悟平
配給:NexTone 
配給協力:ティ・ジョイ
公式HP:shiori-movie.com
公開:10月26日(金)より新宿バルト9ほか全国順次公開

©映画「栞」製作委員会
 














エンタメ インタビュー/記者会見   記:  2018 / 10 / 30

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