インタビュー/記者会見

映画『向こうの家』
向井瞳子を演じた大谷麻衣にインタビュー!!
「瞳子は対面する相手の目線の高さになれる人」
西川達郎監督も同席!

mukonoiein_0001.jpg 自分の家庭は幸せだ、と思っていた高校二年生の森田萩。しかし父親の芳郎にはもう一つの家があった。「萩に手伝ってもらわなきゃいけないことがある」芳郎の頼みで、萩は父親が不倫相手の向井瞳子と別れるのを手伝うことに。自分の家と瞳子さんの家、二つの家を行き来するようになった萩は段々と大人の事情に気づいていく……。

監督は、東京藝術大学大学院で黒沢清監督や諏訪敦彦監督に師事し、本作『向こうの家』が初長編作となる期待の新鋭監督、西川達郎。ごく普通の家族の崩壊劇を少年の視点で、したたかな笑いと共に描き、国内の各映画祭で高い評価を得る。主人公の萩役は望月歩。「ソロモンの偽証」「真田十勇士」などに出演、2019年話題のドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」にレギュラー出演、7月には「五億円のじんせい」も公開。その演技が常に注目される望月歩が等身大の荻を演じる。父親の魅力的な不倫相手、瞳子を「娼年」の大谷麻衣。父親役を生津徹「心魔師」が好演している。その他、南久松真奈、円井わん、植田まひる、小日向星一ら個性的なキャストとともに名優でんでんが脇を固め、作品を彩っている。逗子の鮮やかな海と山を背景に、温かさとユーモアを湛えた、一夏の優しい物語が誕生した。今回は、父親の不倫相手・向井瞳子を演じた大谷麻衣に、これまでと本作について、また、同席された西川達郎監督にも話を聞いた。

mukonoiein_002.jpg 尾崎:3歳から20歳まで本格的にクラシック・バレエを習われていたとのことですが……。
大谷:物心がついた時にはすでに習っていたので、好きとか嫌いとかではなく生活の一部でした。でも、物語や感情を表現することは好きだったと思います。小さい頃から、ずっと、芝居というものに興味があって、テレビで再放送をしていた「ガラスの仮面」を観て、”お芝居”という表現方法があることを初めて知り、その時にバレエは言葉がないけど、そこに言葉が付いたら、どんなに自由で表現の幅が広がるんだろうと思いました。バレエでプロの道に進むと決めた最初の公演の前に怪我をして出演できなくなりました。それが人生初めての挫折でした。怪我は、ちゃんと休んで療養すれば復帰もできたしバレリーナとして致命的ではなかったんですけど、バレエ以外の人生を考えた時に、小さい頃からの夢だったお芝居をやりたいと思ったんです。20歳になるタイミングだったので、道を変えるには今しかないと思い、この芝居の世界に入りました。

mukonoiein_003.jpg 尾崎:バレエの経験は、演技にはどのような形で活かされていますか?
大谷:自分では感じていないんですけど、姿勢や歩き方、佇まいを褒めていただけることがあるので、そういう面では20歳まで習ったバレエが活かされているのかなと思います。

尾崎:お芝居を始められて、今までの活動はいかがでしたか?
大谷:「娼年」(三浦大輔監督)が決まるまで20歳から芝居を始めて7年が経っています。その7年は、暗黒時代というか……(笑)。最初の1〜2年は、お芝居の右左も分からないまま演じていました。芸能事務所の養成所に入っていたこともあり所属の有名な俳優さんの現場で経験を積むという目的でエキストラで参加させていただいていて、そこでドラマや映画の現場を体験しました。でも、私はもっとお芝居がしたいという歯がゆさも感じていました。バレエを20歳まで習っていて、芸術に携わって来たというプライドもあったんです。そのもどかしさと若さゆえの脆さと強さとマッチしない情緒とか、なかなか上手くいきませんでした。もともと容姿や佇まいが大人びていたので、実年齢と経験値と役がマッチしなかったんです。私は何者なのだろう?という7年間でした。そんな時に「娼年」のヒロミ役に運よく出会う事ができました。

尾崎:「娼年」に出演されて、いかがでしたか?
大谷:オーディション前の台本を読んだ段階で、ヒロミ役なら作品の為に私でも何か出来るかもしれないと思って受けたので、役とのギャップは感じていませんでした。松坂桃李さん主演で三浦大輔監督の作品となった時に、「自分の経験不足で皆さんの足を引っ張ってはいけない」と思いずっとプレッシャーでした。でも、濡れ場のシーンは躊躇することもなく「作品のために私ができることは何だろう?」と考えて必死に演じていました。この作品が私の役者人生を変えてくれましたし、財産だと思っています。

mukonoiein_005.jpg 尾崎:それでは本作『向こうの家』について伺います。今回のオファーのきっかけは?
大谷:「娼年」の撮影が終わって直ぐのタイミングでした。
尾崎:西川監督は、まだ「娼年」のことは知らなかったと?
西川:もちろんです。瞳子役を探していた時に、本作の脚本家から「大谷さんは?」と薦められたことがきっかけです。一本筋が通っているというか、きちんとされている方だなという印象で、そういうところに意思の強さを感じました。今回の瞳子という役にピッタリだなと思いました。

尾崎:西川監督、高校生と父親の不倫相手との物語を作ろうと思ったきっかけは?
西川:ずっと、少年が成長する話を描きたいと思っていました。でも、大きな壁にぶつかったり、何かに挑戦するという話ではなく、もっと大人たちの事情を知るというか、今まで知らなかったことを知っていく事で成長していくということを描きたいなと思っていました。特に大人の恋愛のようなものは子供からは見えない部分で、瞳子さんのような立場で年上の女性は高校生からすると遠い存在なので、そういった存在と交流を持つ少年を描く事で、ある種の成長を描けるのではないかと思ったのがきっかけです。

mukonoiein_006.jpg 尾崎:瞳子を演じた大谷さんは映画全編を通してとても艶っぽい感じがしました。
大谷:艶っぽさは、全く指定がなくて、むしろ消してくださいという感じでした。
西川:大谷さんの、普段の所作は、あのままだと思っています。
大谷:瞳子を演じるにあたり、ご飯を食べるシーンや萩くんにお菓子を差し出すシーンでは「瞳子はきっとそうするであろう」という私を通した瞳子は、きちんとしている人です。そのことを意識して演じました。
西川:芝居は身体の動きも重要で、萩くんは、長い手足を持て余している感じで、それが良い意味で高校生の不安定な部分が表現されていて、その対比としてバレエを習われていた大谷さんのスッとした立ち姿は、きちんとしている感じが表現されていると思います。

mukonoiein_007.jpg 尾崎:萩くんと瞳子の二人の間に不思議な距離感がありました。
西川:彼には彼女がいたので、瞳子を女性として見ることはなく、でも今まで会ったことのないタイプの大人という、そういう距離感は意識していました。
大谷:瞳子は、対面する相手の目線の高さになれる人だと思っていて、芳郎さんと会っている時は、大人対大人、そして男と女、萩くんと会うと高校生と一緒にハシャグことができる女性だと思っていて、彼といる時の瞳子の少女の部分、その部分が上手くマッチして、あの距離感が出たんだと思います。

尾崎:自転車のシーンが印象的に登場しますが……。
西川:あの年齢の子にとって自転車で、行ける距離イコール行動範囲だと思うんです。乗れないところから乗れるようになることで、色々な所へ行けるようになる。成長の過程の象徴として描きました。

mukonoiein_011.jpg 尾崎:でんでんさん演じる千葉利峰さんと萩くんと3人でのヨットのシーンがありました。
西川:でんでんさんは、その辺に住んでいる釣り人で、面倒見の良いおじさん。彼が当たり前のように存在することが、世界観、そこでの生活にリアリティを与えてくれるんじゃないかと思いました。
大谷:「あなたのお父さんと千葉さんとヨットに乗ったことがあるのよ」って、意地悪っぽく言っているシーンがあるんですが、船に乗ることで、芳郎さんとの幸せな時の思いと、萩くんが私のために喜ぶと思ってくれたこと、この二つの思いから、気持ちを固めないといけないんだなって……。波がキラキラと輝いているロケーションと私の心情が重なり合って、どこか哀愁というか寂しいなって。あのシーンは切ないですね。それと実は、天気が良すぎて、みんな目が開いてないんです(笑)。写っちゃってます。

mukonoiein_008.jpg 尾崎:望月歩さんは、どんな印象でしたか?
大谷:そうですね……、やっぱり萩くんに近いですね。彼は今まで闇を抱えた少年の役が多かったので、萩くんを演じる歩くんは、等身大というかそのままの感じで、素直で真面目でキャリアがしっかりとある、俳優としてきちんと立っているんだなと思いました。

尾崎:でんでんさんは、いかがでしたか?
大谷:でんでんさんは、自分のスタイルで、ゴーイング・マイ・ウェイな方でした。
西川:でんでんさんは、現場で1を言うと10返してくださる方でした。
大谷:アドリブも多くて楽しかったです。私も千葉さんに会う時は台本にないセリフを言っているので(笑)。そうすると、しっかりと返してくださるんです。瞳子もアドリブが多かったですね。

mukonoiein_009.jpg 尾崎:西川監督は、大谷さんと同世代だと思いますが、印象はいかがでしたか?
大谷:西川監督とは、同級生なんです。オファーをいただいて、初めてお会いした時に、卒業制作という前提の作品ですけど、この作品はどうするつもりですか?と尋ねました。卒業する為だけの制作なら、やりたくないなと思っていました(笑)。それに対して西川監督は「卒業制作だけでは終わらせないで、色々な映画祭に出品して賞も獲りたいし、ここを足がかりに商業映画に行きたい」と言われたので「じゃあ、やりましょう!」と、同じ歳だからこそ、一緒にお互いを高めたかったんです。同級生の監督と仕事をすることも初めてだったので、ある種、実験的にもできて、私も一緒に物作りをしたいと思ったんです。

尾崎:大谷さん、今後の活動についてお聞かせください。
大谷:今後の活動について、今はまだ発表できないんですけど、現在は、NETFLIXで「全裸監督」が公開中です。伝説のAV監督の村西とおるさんが監督として花咲く前に出会うひとりの女性を演じています。駅弁というネーミングのルーツにもなるそのシーンは笑いありエロさあり哀しさありと三つの感情が交差しています。
それから、写真家の篠山紀信さんに撮影していただいた写真集「MAI OHTANI by KISHIN」が、小学館から発売中です。そちらの写真集も観ていただきたいです。

mukonoiein_010.jpg 尾崎:最後にメッセージをお願いします。
大谷:主人公の萩くんが、お母さんや学校の先生以外の初めて出会う大人の女性が瞳子なんです。彼女を通して、自分の知らなかった世界や視野、大人ってどういうものなんだろう?ということを知る少し面白い成長物語で、決して大きな起伏があるわけではないんだけど、萩くんの中では機微があるんです。瞳子の家に向かう階段が、萩くんにとっては大人の階段だと思うんです。でも、芳郎さんにとっての階段は、人生を登っている途中の、ちょっとした寄り道という、あの階段には二つの意味があるんだと思っています。その部分を、是非、劇場で観ていただければと思います。

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監督・原案:西川達郎
出演:
望月歩 大谷麻衣 生津徹
南久松真奈 円井わん 植田まひる 小日向星一 竹本みき
でんでん
プロデューサー:関口海音 
脚本:川原杏奈 
撮影:袮津尚輝 
照明:小海祈
美術:古屋ひな子 
サウンドデザイン:三好悠介 
編集:王晶晶 
音楽:大橋征人
製作:東京藝術大学大学院映像研究科
公式サイト:https://mukonoie.com/
公開:10月5日(土)よりシアターイメージフォーラムレイトショー
 














エンタメ インタビュー/記者会見   記:  2019 / 09 / 20

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