アラカン編集長モンブランを行く!

戸隠西岳・P1尾根-5

2009 / 05 / 17

09050403.jpgアイゼンでむき出しの岩を降りるのは想像以上の恐怖と緊張。

「クサリつかんで」
「こわくてつかめません」

連続する岩場はクサリが設置されているが、怖くてつかめない。ザイルでつながっているわけだから、前の人が降りきってから、というわけにもいかず、同じクサリにつかまることになる。
クサリをつかめば、どうしても体と岩面が離れる。登りで疲労を濃くしている先行者がクサリに過度に依存して降りようとすると、振られる。岩に置いたアイゼンの爪を円心に左右に大きく振られると、体ごと持っていかれそうになる。

クサリをつかまず、手と足で確実に降りると決めてかかった。ゲレンデの練習に比べれば、ホールドもスタンスも見出すのに苦心するというわけではないとはいえ、片側は谷。落ちればひとたまりもない。確実に命はない。6、7m、長いと10m近くの岩場がやっつけても、やっつけても現れる。緊張の連続。

幾度目かの岩場・クサリ場。
さほど長くはない岩の、2手目だった。スタンスがちょうどいいのが見つからない。突き出た突起に足を置こうとしたら、アイゼンの2本の前爪のちょうど真ん中あたりに突起がはまり込むような格好になった。ホールドは幾分甘い。大きく出ているが、触りがするするしている。別の手足に換えようと算段していたらザイルで身体を引かれた。迷っている暇はないと判断してそのまま行った。

あッ!
えッ?!
落ちたッ?!!

なんと落ちたんである。笑えない瞬間芸!
小さく突き出た岩を2本の前爪で挟み込むようではあったが、うんと角度をつければ爪は岩に当てられるはずだった。ところがホールドに手を伸ばしたとたん、かかとが下がったのだ。足が滑った。滑り落ちようとする身体を持ち上げるほどホールドがしっかりしてなかった。幾分丸い目でごく緩くはあったが下へ向かって傾斜した、しかもスベッとした岩面をつかみきれなかったのだ。

うッ!
背中、肩、頭はしょっていたアタックザックがクッションになってセーフだったが、しこたま腰を打ちつけた。右蝶骨の上端あたりにアザができるのは必定。

よりなにより、2mほど下の狭い棚で止まったからよかった。棚でバウンドしてさらに下に落ちて先行者の上に落ちたら、先行者も落ちたかもしれない。さすれば連鎖してそのまた先行者も…

もし片側へそれて落ちたら、それこそ谷底へ真っ逆さま。そうならなかったのはすぐ上で大森さんがロープを引いてくれたからに他ならない。ロープは念のためどころか、確実に命綱の役割を果たしてくれたのだ。
いや後から思い返すも恥ずかしい。あんなところで落ちるなんて。そこだけみればさして難しい場所でもなんでもなかった。油断したわけでは決してなかったが、長い緊張がほんの少し緩んだ瞬間だったに違いない。

「クサリつかんで!」
今度は「怖いからイヤです」は言えなかった。振られることを前提に、先行者の様子も確かめて、振られる方向も推測しながらクサリをつかむ。つかみはするが依存し過ぎず、片方の岩をつかむ手はより確実に。もちろんスタンスはガッツリ置く。

蓄積疲労で腿のストッパーが利かなくなった先行者は自分のことだけで精一杯で、つかんだクサリに目一杯体重をかけ、大きく左右に揺らす。雪面では何度も滑り落ちる。ザイルを解除するところへ行き着いた時は身体より神経が疲労困憊だった。

ザイルを解き、アイゼンも外して、あと2時間足らずでテント場だった。夕方の4時を回り、日の暮れる前に降りきるためには先が急がれた。
登りはじめてから10時間が経過して、緊張の連続だったにもかかわらず、とんとん歩けた。
やもすれば最後尾が遅れて視界から見えなくなる。クサリに頼り切って、私をてこずらせたご仁・男性だ。

「後続、姿が見えません」
大森さんに報告できるのが内心誇らしかった。ちょっと前の山行までは必ず、報告される側だったのだから、幾分たりとも達者になったと思えることが嬉しかった。

ようやく樹林帯に入り、もう1時間ほどで到着というところ。高低差わずか1mもあるかないかの、ちょっとした不規則な降り。大森さんが先頭を行き、数メートルはなれて2番手の女性。そのすぐ後ろにつけていた。

え?
2番手の体がふわりと浮いた。すぐ目の前だったが、あまりにも突然のことでなす術もなかった。転落。
すぐ下の山道に落ちたと思ったらくるりと体が回転して道端のブッシュを転がり、一段下の細い土場に落ち、それでも止まらずもう1回転半して土場の端のブッシュでようやく止まった。
2番手は腹ばって顔を伏せた格好のまま動かない。わずか数分・数秒だったろうが、驚愕のあまり声も出なかった。大森さんが慌てて引き返してきて声をかける。

「どうした?!」
「血がボタボタ出てます」
「どこ?」
「わかりません」

背筋が寒くなる。もしかしたら目でもやったか?!
「足は大丈夫?」
「なんともありません」
大森さんが助け起こす。
「鼻打ったんだね」

ボタボタ滴り落ちていたのは鼻血だった。右頬骨周辺も相当な勢いで打ちつけたらしく、見る間に腫れ上がり、目じりの辺りに早くも青あざがにじんできている。さいわい鼻柱骨折からは免れ、その他はなんでもなかったので、しばらくの休憩の後にまた下山続行となった。

正直、私でなくてよかったと心底思った。痛い目に会うのはもちろん避けたいが、大森さんが先に到着しているパーティーに無線連絡を入れた時、どうせ「またコダマだ」と誰もが思ったにちがいない。
「落ちたのは誰?」の回答に私の名があがらなかった時の無線機の向うの反応が大森さんの表情で見てとれた。と思うのは、常に足引っ張り組の位置に甘んじてきた後ろめたさとひがみだとばかりは言えない。

むしろもう大丈夫、あとわずかというところで「まさか」は起こる。降りきるまでが下山。当たり前のような鉄則の意味を改めて思い知った。

先行到着から遅れること30分余、テント場に着いたら夕方の6時。かれこれ12時間の行程になった。
最後尾を歩いていたご仁は夕食もとらず、テントに潜り込んで寝てしまった。
転落して頬を腫らした2番手は寝れタオルで顔を冷やしながら、それでも持って上がった食材を調理して、皆に振舞っていた。
「何が悔しいって、飲めないのがつらい!」
アッパレ!

私?そりゃあ、ご機嫌で飲みまくり。1人バテバテで1人転落の影に隠れ、岩場で落ちたなど、さして盛り上がりポイントにもならずといった、申し訳なくも儲かり話しのよう。
とはいえ、さすがの屈強なメンバーも疲れが出たらしく、「明日は帰路だから夜の更けるまで」にはならず、早々とテント場は闇に包まれた。



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【ご一緒しませんかアラカンさん!】
02.jpg
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もうもう、この際、around50も40も大歓迎!

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