アラカン編集長モンブランを行く!

ヒマラヤ雑感-5

2011 / 03 / 11

シーユーアゲン! ヒマラヤ!!!
1005.jpg のどかなキャンジュンコンパ3840mの昼下がり。大事の後の充足と安堵、弛緩。和やかな空気まで写しこんでいるようだ。この上もなく上天気で、連なる白銀の峰峰の上には抜けるような青空が清々と広がる。

「明日はヘリで一気にカトマンズ」と聞けば、それはそれで、ちょい寂しい。ピッケルだのアイゼンだの置き土産は何にしよう、誰に渡そうかと算段する。山深い地であれば物資の入手はただでさえ困難で、ましてや、せっせと布を織り糸を編んで商いして得られるだけが唯一の現金収入というつつましい暮らしだから、「感謝の思いを置き土産に変えて」とは本郷さんから聞いていた。まあ、サーダーに託せば適宜、必要なところへ配分してくれるだろうが、いかんせんアプローチシューズの行方は思案のしようもない。なにせ22.5cm、小柄なネパールの人らにも負けない小足のワタシなのだ。
暮れてくると寒くなってくる。火が入るのを待ちかねてダイニングのストーブの前に腰かけていたら、男の子が顔をのぞかせたと思ったら、すぐまた入ってきて、どうやら寒そうに身を縮こめている私を見かねて早めに火入れしてくれようとしているらしかった。

1004.jpg 火種を入れて少し火がでてきたところへ燃料をくべる。燃料ったって薪でもなければ、炭だとか練炭とか石炭とかでもない。黒茶色で平べったい黒糖パンケーキのようなそれは、何を隠そうヤクのウ○チを乾かしたもの。最初は石積みの家屋の壁の隙間ふさぎ、目止めの代わりに張りつけられ、完全に乾いたら燃料として活躍する。下手すればガラス窓の外側にも貼り付けられている。

森林限界をとおに越えた4380mで薪は手に入るべくもなく、他の燃料とて下から運ぶのは人力かヘリか、いずれにしても高くつくしろものだ。そこいくとヤクは、ほっておけば勝手にそこらへんをウロウロしてなけなしの草を探して自ら食み、だから世話なし。時が来れば毛を刈って糸を編み、布を織る。乳を搾り、たまに食すかどうかは聞いてないが、排したものも完全活用。ヤク、様様だ。

ふつうに手でパリンと割って火にくべる。草食動物のそれはパリパリに乾いてしまえば無臭で、火にくべても不快なことは何もない。

無心でストーブの火入れをする男の子の足がふと目に入った。とたんにアプローチシューズの行き先が決まった。背格好からして小学校高学年くらいな男の子は素足にサンダルで、慣れているとはいえ、乾燥と土埃でジャガイモのように白白。寒そうに見える。都合のよいことに、ちょうど私と同じサイズぐらいだった。
スルリと足が靴に入った時の男の子の嬉しそうな顔ったら!!!

今夜で別れの晩餐にしては、あまりいつもと変わらない夕食。本郷さんが隊の人らを夕食に誘ったが、「客と食卓を共にするのはよしとしない」とかで、食後お茶でも一緒しましょうということになっていた。
そそそろ夕食も終わったか、というころだった。
サーダーが、ほかのシャルパらが、コックさん、ポーターさん、キッチンボーイなど隊の人らが次々とダイニングに入ってきた。
そのうちの一人が捧げるようにして持ち運んできたのは、なんとケーキ! これには、思わず涙腺が緩んできそうだった。
そして大きなアルミのヤカンにはネパールの酒・ロキシーがなみなみ!!

なあるほど!「最後の夜をともに」の申し出に、どこか歯切れが悪かったのは、この「サプライズ!」狙いだったんだと、嬉しい納得。

3011.jpg
11月5日・登頂翌日の晩ご飯
3012.jpg
登頂祝いのケーキには、
「Succesfull YaraPeak ! See you again Nepal」


1006.jpg ロキシーはコメが原料の蒸留酒。かなりアルコール度数が高そうな、「クッ」と来る具合が、ちょうど泡盛のような感じ。つまりよく回る。

飲むほどに歌が飛び出し、歌につれて踊りも輪になる。
「何回もヒマラヤには来たけれど、こんなの初めて」
本郷さんも感動しきり。我々はもちろんだが、隊の人らも心から楽しんでいるようで、それがひとしお嬉しい。
彼らは隅から隅まで心行き届いたサービスを提供してくれた。私たちは心からの感謝の念を持ち続けた。その気持ちのやりとりの9日間が形になった。
「何よりも安全性を重んじるHONGOの山に対する姿勢は勉強になった」
サーダーは本郷さんを讃え、「心厚きもてなしは生涯、忘れない。次のヒマラヤ山行も一緒に願いたい」本郷さんは友情を返す。
その夜、時の過ぎるのも忘れて、宴は長く続いた。

20001.jpg翌朝、ヘリポートで「到着、遅し!」とヘリが来るのを待ちかねていると、かすかに音が聞こえる。少しずつ近くなる。
だが、その音は頭上からではなく、見下ろす谷の底から上がってくるのだ。谷底にポツンと見えた赤い点がわずかずつ大きくなり、ようやく谷を上がりつめ、待っている我々の頭上にいったん浮かび上がり、猛烈な風を起こし、砂埃を巻き上げながらゆるゆるとランディングする。

むろん、我々をカトマンズまで搬送するのがメインな目的で、ヘリは上がってきたわけだが、そこはそれ、ただじゃあ、上がってこない。ここの人らが必要とする物資も運んでこそ、なんである。
村を挙げて集まってきたかのような大勢の中に、あの男の子を見つけた。ちゃんとアタシのシューズはいてくれてる!目が合うとはにかんだようにニコリと笑ってよこしてくれた。
轟音を上げて飛び上がろうとするヘリの窓から外を見たらば、男の子が懸命に手を振ってくれている。見る間に小さくなる姿を、それでも見える限りは、ワタシも手を振り続けた。

(完)

shomeisho.jpg 帰国して2ヶ月ぐらいだったか、ネパールから登頂証明書が届いた。
ネパール山岳連名の名の下にYalaPeak5730m登頂が認定するものであった。
え? ヤラピークって5730mもあったっけ?!!!



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