編集長!今日はどちらへ?

2017 Sumer in Europe‐6‐コズミック山稜(III)ならびに総括

2017 / 09 / 05

datin170905_001.jpg 左の丸い山がモンブラン。ヨーロッパ山行最初の山だ。もう7年前になる。

datin170905_002.jpg レビュファールートの岩塔の右横に鎮座ましましているのはもう、言わずと知れたダンデジュアンだ。昨年レビュファールートをトライしているわけだから、当然あの岩塔にも立ったわけで、きっとダンデジュアンは眼前に屹立していたはずなのに、その時と現在では、こんなにも存在感が異なって感じる。きっとこの先ヨーロッパアルプスのどこかの峰に立ったとして、ダンデジュアンが視界に入ったら、決して見紛うことはないだろう。どこからでも認めるだろう。そしたら再び叫ぼう「「I love you Dent du Géant!」

7月15日の昼過ぎコズミックからシャモニーに降りてきて最初に駆けつけたのはIFSCリード2017WC第1戦シャモニー大会の会場だった。幸運にもちょうどセミファイナル中。男子の準決勝戦の最後の試技で是永選手が完登するのも見られた。

datin170905_003.jpg ファイナルはナイターということで、夕食後、ファイナル観戦に。
素晴らしい!...
男子は2位に是永敬一郎選手、3位には波田悠貴選手が入りました。
試合はナイターで、表彰式後に打ち上げ花火という演出。
男子1位はマルチェロ・ボンバルディ(イタリア)、2位是永敬一郎、 3位波田悠貴。
女子1位はヤンヤ・ガンブレット(スロベニア) 2位キム・ジェイン(韓国) 3位アナ・バーホーベン(ベルギー)。

datin170905_004.jpg 街中のクライマーやクライミングファン、観光客が押しかけたんではないかというほどの混雑っぷり。ビール飲みながらだったり、楽しい雰囲気。クライミング喧伝に大いに貢献している。街中のフリースペースで観戦料をとらずに運営できる組織力にも驚かされる。

それは楽しく観戦できた。全ての今夏の課題を完遂してのご褒美観戦なのだから楽しくないはずもない。 3年越しに登りたかったダンデジュアン、シャモニーの代表的なアルパイン・バリエーションルート、コズミック山稜。今夏の課題を完遂できて本当にうれしい。
が、手放しで喜べない胸にわだかまる一抹。

今だから言えることだが、ダンデジュアンは60%ほどダメかもしれないと覚悟していた。などというと不遜だと叱られるかもしれない。300%努力した末にそう言っているのか?と。
2016年の夏以降、その反省を踏まえて2017年の夏を目指して何をしてきたのか?ヨーロッパアルプスでアルパインクライミングをしようという者がなぜ日本の冬山シーズンに一度もアイゼンを必要とする登山を試みなかったのかと。

何も努力しなかったわけでは決してない。年々加齢による体力の低下は加速していく。平衡感覚も衰える。つまり劣化の一途をたどっている。そのことについての認識が甘かった。
モンブランに登った7年前を思い起こし、まずは徐々についた体重を落とさねばと思った。いつの間にか当時より10kg近く無駄な体重がついてしまっていたから。自重を軽減すれば行動の際の負担も減り、歩くスピードも上がり、クライミングもパフォーマンスが向上するのではないかと考えたのだ。厳しい筋力トレーニングと食事制限で知られる某ダイエット専門ジムの門をたたいた。

で…結果はというと10kgの減量は成功しなかった。確かに最初の1ヵ月で7kg体重は落ちた。が次の1ヵ月で徐々に戻り始めた。なぜなら、単に炭水化物カットではなく厳格な糖質制限を課すと極端に持久力やエネルギー維持ができなくなる。街中で歩道橋を上がるのでさえ辛い体の状態に陥るのだ。ましてやハードなマルチや山行では早晩シャリバテ・エネルギー切れ状態になってにっちもさっちもいかなくなる。最初は山行の時もクライミングの時もポークソーセージとキウリとプロテインで昼食としていたが、どうにもならなくなり、山やクライミングの際は炭水化物アリにせざるを得なかった。
すると、平素の過激な食事制限で体が極度の体糖質になっているから、その反動でものすごい勢いで体重がつく。山から下りてきて増えた分を落とすのに苦心した。しかもそれを繰り返しているうちに徐々に落ちにくくなってくるのだ。一旦7kg落ちたのが見る間にリバウンドしてしまった。
今から思えば、週2回の筋トレはともかく「食わずに痩せる」、そのこと自体がお門違いだったと言わざるを得ない。「山で必要な体は山で作る」これが唯一無二の正解だったのだろう。いとも当たり前な原理に気付くのに時間を要し過ぎた。もっと「歩く」ということに労を割くべきだったとつくずく思う。

つめて歩いたのは出かける1か月前ぐらい6月4日に広沢寺→三峰→煤谷を行き、6月22日に奥多摩→阿寺沢→本仁田山→川苔山→鳩ノ巣、6月28日に富士山に登ったぐらい。
「焦るのが遅すぎ」「むしろずっとやって来て、1ヵ月前は流すかレストでしょ」
ほんとだよね…

「ひごろトレーニングしてゆとりある快適な山行をするか、体力不足で本チャンで危険と苦痛を負った山行をするか、どっちがいいか?」
応えは明白だ。選んだわけではないにしても結果的に後者を露呈したということは「山をなめている」と解釈されても仕方がないのだ。

ただ…
「どうせ頑張ってもダメかも知れない」というへタレな自分への諦め気分はともかくも一旦横に置いておこうかと今は少し自己肯定的になれている。

「なんだかんだ言っても、雪山シーズンに一度もアイゼン山行しなくても、トレーニング不足でもダンデジュアン登れたんだから、ちゃんとしかるべきトレーニングを重ねれば、まだまだ行きたいところへ行けますよ」 「あれだけヘロヘロになってても、小屋に着いたらビール飲めるんだから、まだ余力があるということですよ。ほんとに使い果たしたらハーネスつけたままベッドに倒れ込みますよ」

「出し惜しみ」をしているつもりは全くない。「もう歩けない」とこまで頑張ったつもり。ただ「もう歩けない」けど、じっとすればもう辛くはないから、だけどさすがに疲れ過ぎて食事はほとんど喉を通らなかったが、登れた嬉しさもあってビールはことのほか旨かった。

中学時代までは運動部だったが高校からは文化部で、大学時代は「屁理屈こねて酒くらう」生活態度をよしとする自己認識構造だった。子供が小学校時代はママさんバレーをやってみたり、どうせ送り迎えするなら「一緒にやっちゃえ」と剣道場に通ったりもしたが、以降は「酒くらう」生活ではないものの、木彫や油彩画その他の手工芸などを手慰みしたが、どれも体を動かすものではなかった。
還暦手前で更年期障害対策で始めた奥多摩のそぞろ山歩きが、気が付けば「日本の屋根地帯」を歩き、岩に攀じ登り、氷に張り付くようになっていた。
隠れた体力と評される私のおかしな持久力は、もしかしたら親からもらったものかもしれないと思ったりする。父は旧制高校時代はスキージャンプの選手で国体にも行ったとかなんとかという自慢話を聞いた覚えがあるし、母は女学校時代背泳の選手だったとも聞いている。私の「出し惜しみではないか」と言われるデフォルトの運動体力の所以はそのあたりにあるのではと思う。

「まだ遊びしろ、伸びしろがある」という励ましは、大いに私に希望を抱かせた。半分以上「もう頑張ってもダメかもしれない」恐怖に打ちひしがれていたのが、「駄目もとでやってみよう」という気になれた気がする。

何しろ、私はかなり運がいい。60%以上ダメかもしれなかったダンデジュアンに登れたのだから。運を引き寄せた要因はまずは篠原ガイドとマンツーマンだったこと。私のヘタレ具合を熟知し、その割に実力以上をやりたがる特性「体はどんどん劣化するが、反して望みは根拠なくレベルアップする」を知り、何よりもダンデジュアンへのこだわりを何度も伝えたからこそ、ギリギリが可能になったと理解している。

コズミックを終えてロープウエイの順番待ちをしていたら誰かが私を呼ぶのが聞こえた。2、3日遅れでシャモニー入りしたSさんだった。聞けばダンデジュアンは登頂できなかったという。Sさんはシャモニー入りしてから現地のガイドオフィスに交渉してガイドを依頼したのだが、ガイド曰く「風が強いから」と途中で撤退したのだと。
現地のガイドの間でダンデジュアン登攀に関してどのようなレシオを敷いているかは知らないが、クライエント、ガイド間で人間関係が結べているとは到底思えず、「このクライエントを登らせてあげよう」などという感情移入はびた一文なく、1分1秒の時間制限や風速何メートル以下なという杓子定規な状況判断が先行したとは想像に難くない。
Sさんが篠原ガイドと登っていたら、きっと私より数段速い時間内に登れたに違いない。Sさんがダンデジュアンにトライした日も確かに、きっと風はあったろうが、私たちが登った日より天候は好条件だったはずだし、私より遥かに歩きは早いのだから。
ただ、私はほぼ1年前からマンツーマンでお願いしていたのに対し、Sさんは意思決定が出発のほんのしばらく前だった。
「行かないつもりだったが、やっぱり夏のヨーロッパに行きたくなった」と。
「どうしても登りたい」という私の思いの丈は運を引き寄せた要因の一つには違いないと思うのである。

【結論】
来年の夏までほぼ1年、もう一度体力アップ及び減量のチャレンジする!
そしてまた、シャモニーに行く!
どこに登れるかは、どこまで強くなっているか次第だ!

長々と通読頂きありがとうございました。
何しろ屁理屈は得意なのです。
スマセン!











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