鉄、この部屋

【駅員はつらいよ】某駅の夏、『ポケモン』の夏

2012 / 08 / 10

また、この時期がやってきたか――。
先週末よりJR東日本、首都圏エリアで開催されているイベント『ポケモンスタンプラリー2012』(8月19日まで)。お盆前の恒例イベントとして、子供たちを中心(あくまで中心)に毎年多くの人が参加をしている。最寄り駅にてスタンプ台に長蛇の列ができているのを見ると、今年もそんな時期がやってきたのか......と感じずにはいられない。ああ、もう8月なのか......。

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夏が来れば思い出す「ポケモンスタンプラリー」
このスタンプラリー、いまでこそスタンプ台の設置駅を縮小しているが、以前は山手線の全駅、さらに横浜や柏など首都圏全域の主要駅にもスタンプ台があった。記念品なども貰える第一の目標はスタンプ数種を集めてゴール駅(当時はたしか品川だった)に向かえば達成ではあるものの、コンプリートできればそれはそれで別の景品も......いや、景品云々ではなく、集められるものならすべて集めたくなるのが人情。それ故、設置駅には会期中、絶えず多くの参加者が詰めかけることになる。
私が勤めていた某駅は山手線圏内。もちろんそんな駅のひとつだった。

月曜日。お昼過ぎに某駅へ出勤してみると、設置されたスタンプ台にはすでに多くのお客さんが列を作っている。お、そういえば週末からスタンプラリー始まったんだったな......そう思いつつ制服に着替えてきっぷ売り場の前に立つ。いつもは改札外に常駐している駅員は私だけなのだが、さすがに多くの人が詰めかけるからかときおり社員の駅員さんもやってきては「松本さん、スタンプの台紙が切れたようなら、台の下に入ってますから補給しておいてくださいね」等々の指示があったりする。そんなイベントというのはこれまで未経験の私にとっても非日常なので、なにが起こるかと多少ワクワクしながらいつもの業務をこなしていく。
ところでこのスタンプラリー、スタンプ台は常に改札の外にある。故に、一度改札を出なければならないため、一日かけて回ろうとしたら「都区内パス(「東京都区内」とされるエリアならば一日乗り放題)」大人780円など"おトクなきっぷ"を買っておかないと案外な出費になる。子供1人が親同伴で行くと都区内パス2人分で1170円。コンプリートを目指すと期間が2週間ばかりあるから............うーん、ずいぶんいい商売だ(笑)。余談ながら会期のの中盤、数人の子供グループから「毎日回ったらきっぷが高い」とのクレーム(笑)をちょうだいしたので、「元気なら自転車で回ればいいじゃねえか」と答えたところ、もう某駅のスタンプは押したはずなのに、次の日にも自転車で誇らしげにやって来た。えらい。

さて、ずいぶんいい商売だブツブツ......などと言っている間に、16時。
このスタンプラリーの時間は毎回「9時半から16時」となっている。9時半に始まり16時で終わる、これいったいどうするのかというと、スタンプ台を事務所の奥などに片付けてしまうのである。16時少し前になると内勤の駅員さんが出てきて、16時でそそくさと撤去。こうなるとそれ以降は押しようがない......そう、これまたいい商売システム(笑)。17時ではないところが絶妙。で、16時を回って某駅に着いたお客さん、スタンプ台がないことに呆然と佇む......というところで、いつもと違う非日常の事件は始まる。

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お客さん側に回って挑戦してみました
毎度書いていることだが、私はなんのトラブルシューティングも教わらないまま、改札外唯一の駅員として野放しにされていた。そんなところで、16時を回ったばっかりにお目当てのスタンプ台がないことに気が付くお客さん。ターゲットとなるのは当然、私である。
「すみません、ポケモンのスタンプ台は......」
すみませんここに書いてあるように16時までなんですよ、また明日いらしてください。これで納得してくれる方は多かった。「多かった」ことはまず書いておく。
ところが。
様々な事情(ここには"駆け引き"もあっただろうが)があり、そして親子連れとなると話が難しくなってくる。子供だけだと案外、大人の言うことは素直に受け取るようで......。
「そうは言っても、電車遅れてたんですよ......」
これは困る。こっちの責任じゃん。しかしそうであっても謝って納得してもらう、それしかない。
「○○(それなりに離れた駅)から来ていて、今日しかここまでは来られないんです」
これも困る。ただそうは言っても......。
「普通17時までだと思うじゃないですかっ!」
これは困らない。私もそうは思うけれども、キレようがなにされようが単なる勘違いですから。

16時過ぎにそんなやりとりが数日続く。JR東日本はアルバイトにこんなことさせて相変わらず度胸あるのう......と言うより酷なことをさせるよのう。親御さんだって丁寧に聞いてくる人が大半だし、お子さんはお子さんでなんとかならないかジッとやりとりを待っている。
ひとこと、いたたまれん。
どうにかなりませんかね、そう社員の駅員さんに聞いても「しょうがないですよね、それは」という当たり前かつ唯一の正しい答えしか返ってこないので、私はある商品開発の見本として大量にもらっていたポケモンのモバイルクリーナーを家から持ってきて、ポケットに忍ばせた。そして16時過ぎ、×だと聞いてガッカリしてもちゃんとしているなあ......というお子さんにはそっとそれを渡した。明日もやってるから、また来てね――そんなことしちゃいけないのだろうけど、さ。

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6駅でひとまずゴール、コンプリートは12駅。
一度押したら集めたくなるのは人間のサガ(笑)
その他にも、息子を前に土下座をしてまで頼もうとした母親にヘキエキしたりもしつつ、最後にこんなおはなしを。

たしか青梅からと言っていたか、かなりの遠くから来たという母子連れが16時過ぎにやってきた。どうにかならないでしょうか、というお願いが、お母さんも息子さんも心の底からに感じられたので、私は一縷の望みをかけてこんな話をした。
「いま私は、そのお願いは聞かなかったことにします。そこのドアを開けると通路の先に事務室があり、そこにも駅員さんがいます。私がここでお願いされても『すみません、また明日』としか言えませんが、事務室のところに行けば片付けたスタンプ台もあります。私に聞く前に事務室に行って、そこでいまのようにご事情を話していただけたら、ひょっとしたら......があるかもしれません」
とりあえず近くにいなかったことにしようと、遠くのきっぷ売り場までブラブラして数十秒後に戻ってくると、その母子連れがちょうどドアを開けて出てきた。
「すみません、ありがとうございましたっ!」
おおお、よかったですね。そうかよかった、ちゃんと話のわかる駅員さんがいたか......。
「ドアを開けて通路を進んで見ましたら、事務室の入り口の先にスタンプ台があったので、黙って押して来ちゃいましたっ」
えっ、そうなの!? おいおいそりゃダメだよ(笑)。......でもまあ、いっか。

いまもそんなことやあんなことを思い出す。
某駅の夏、ポケモンの夏――











連載 鉄、この部屋   記:

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