鉄、この部屋

【No Train,No Life】"夜行"受難も、いまなお"曙"は輝く

2014 / 05 / 30

残念だ。
昨年末、「北斗星」の廃止が一部報道された(のちに「廃止ありきでの検討はしていない」と発表)段階の当コーナーでも触れてはいた「トワイライトエクスプレス」の存廃問題。5月28日、JR西日本が来春15年のダイヤ改正にて廃止という発表に至った。
ただただ、残念だ。

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大阪駅でのトワイライトエクスプレス。名がいいですよね、名が
トワイライトエクスプレスは大阪駅を正午前(札幌駅発は14時)に出発、日本海側を走り抜けて青函トンネルを通り、札幌駅まで約22時間の長旅となる臨時寝台特急(上り下りとも週4便)である。大阪駅からの下り電車では昼・夜・朝の三食の機会があり、これは現在の寝台特急では「ななつ星in九州」でしかないが、こちらはちょっと毛色が違う。夕食のフランス料理はトワイライトエクスプレス名物で、今日現在にしたって大人気の寝台特急なのである。

それでも廃止の理由は「列車の初期製造から40年経った老朽化のため」。途中で改造も施されているが、改めての改造や製造は行なわない、ということである。この「老朽化」を持ち出されてはキップの販売等で採算は取れているけれどもやむを得ず、そう上手い落とし所になってしまう気がしてならない。上野駅から札幌駅を結ぶ北斗星も「カシオペア」も「北海道新幹線の開業(15年度春予定)」ならびに「老朽化」で姿を消してしまうのだろうか……(※ちなみに、北海道新幹線開業に伴い青函トンネル内の動力電圧は2万ボルトから2万5000ボルトになる。これ、現状の北斗星・カシオペアの機関車は通れない電圧なのだ。機関車1両の新造に掛かる費用は約3億円で新幹線1両より割高……これも「老朽化」の一端だ)。

さて、こんな廃止渦に巻き込まれ続ける寝台特急界で、今年3月のダイヤ改正にて廃止(正確には臨時列車へ変更)となってしまったのが上野駅と青森駅を結ぶ寝台特急「あけぼの」。これによって“カゴメが凍えそうな連絡船”だけでなく“雪の中の青森駅へ向かう上野発の寝台特急”もなくなってしまった。昭和は遠くに成りにけり、である。

あけぼのは70年に開業。高度成長期の終盤の時期で、あけぼのに乗って青森から首都圏へ出向き、成功して今度は青森に戻る“出世列車”と呼ばれたりもした寝台特急である。

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こちら上野駅でのあけぼの。 “ブルートレイン”EF64系が長岡駅まで牽引します
あけぼのは開業以降、“経路”が変わっている珍しい特急でもある。開業当初は上野駅から東北本線と奥羽本線を通って青森駅という、想像通りの“東北新幹線ルート”だが、その東北新幹線の開業や、秋田、山形新幹線の誕生により、ルートが様々に入れ替わっている。開業当初のあけぼのは青森行きだけでなく秋田行きも同名称で運行していたが、90年の山形新幹線着工に伴い、秋田行きを高崎線・上越線・信越本線・羽越本線を経由する寝台特急「鳥海」に改称(「鳥海」は上越ルートの上野駅―青森駅などで存在していたが、85年に一度廃止されていた)する。そしてその6年後の97年、秋田新幹線開業でそれまでの東北本線・奥羽本線を走る“元祖あけぼの”は消滅するのだが、鳥海のルートで秋田駅に到着後、青森駅を目指す寝台特急が“新生あけぼの”となり今年の3月に至る。奥羽山脈の東側も西側も、その歴史で通った寝台特急なのだった。

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こちらは近年リバイバル運行された鳥海
 
20140530_d.jpgいまとなっては臨時列車としての活躍がある日まで見ることができなくなったあけぼのだが、その貴重な姿を余すところなく伝えている映像作品がある。『記憶に残る列車シリーズ・あけぼの編 』(日本コロムビア)がそれで、雪景色の夜を雪をはねのけながら力強く突き進む冒頭から一気に掴まれる。年代別に様々な地点から固定撮影された、“あけぼのが接近してきて走り抜ける様子”の映像では、京浜東北線とすれ違う首都圏のものから、東北地方の田園風景を走る情景など、乗車経験者ならかつての車窓を、そして未経験者であれば旅情につい想いを馳せてしまうに違いない。また、そのバックに流れている『交響詩銀河鉄道999』がまた素晴らしい。アナウンスや警笛、線路の音など“生活音”を除けば、やはり鉄道のBGMといえばスリーナイン、なのである。

機関車の停車場である田端運転所での歴代機関車の展示(赤い車体のEF65、EF81もカッコいいが、やはり“ブルートレイン”EF64が映える)、客車の紹介などおなじみの映像もいいが、注目はまず長岡駅での機関車交換の様子。長岡駅は機関車交換だけの“運転停車”(旅客の出入りはできない)だが、そこに到着して機関車の切り離しから交換機関車への連結へが詳細まで収録されている。実際の時刻表示によると30分以上の作業なのだが、それをほぼノーカットに近いサイズで見ることができる。
そして圧巻なのが田端運転所から尾久車両センターを経由して上野駅→大宮駅、さらに水上駅→石打駅の機関車からの展望映像。これがなんとほぼノーカット収録されている(!)。とりあえ画面に流しておけばそれだけで酒が飲めちゃう人もいそうな逸品だ。ただ、田端運転所から上野駅に至るまで何をしているのかまったくわからない人も多い(一般的なはなし)と思われるので、その際は特典メニューとして収録されているオーディオコメンタリーを聞くのが吉。田端からはまず機関車だけが出発しているとわかった時点でなんとなく尾久車両センターでしていることの想像が付きます。

まさに「記憶に残る列車シリーズ」な一本であるこの「あけぼの編」。乗ったことがある人も、定期運行では乗り損ねた人も、ぜひ一度手を取ってみてはいかがだろうか。


『記憶に残る列車シリーズ あけぼの編』

ナレーション:宮島咲良
コメンタリー:久野知美
監修:松本隆(ジェイアール東日本企画)
音楽:青木望(交響詩銀河鉄道999より)
制作:トムス・フォト
協力:鉄道企画
発売元:日本コロムビア
 












連載 鉄、この部屋   記:

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