デザインは気負って創り出すものではありません。

ふとした瞬間や、ビビっとくるパーツに出会えたとき、気分がノッているときなど、アイデアが湧き出てくる場合もあります。

その反面、気分がのらないときでも、とりあえず手を動かしてみることによって、新たな作品が生み出されることがあります。

パーツからデザインのヒントを得る事も多く、『ビビ』と来たパーツに出会うとそこから湧き出るようにデザインが膨らんでいき、作品が生まれるのです。
似たようなパーツでも、素材感の違い、穴の開け方、角度など、一切妥協せず、思い描く作品の通りに選びます。デザインだけでなく、素材もとても大事なのです。

◈まずは試してみる

素材を見たり触ったりしているうちに、ひらめいた発想を作品にぶつけてみる。形を代えたり、素材を選定し直したりしながら、だんだん思い描いた作品に近づき仕上がって行くのです。仕上がった作品をもとに、同じ作品を創るためにここではじめて「デザイン画」を描きとめておきます。

◈デザイン画を書かないのが特徴でもある独自のもみスタイル

そう、もみさんの作品がイチから生まれたとき、そこにはまだ「デザイン画」はありません。
湧き出てきたアイデアを絵にしてみたり、とりあえず動かしてみた手が創り出した過程を書き留めておくこともありません。さまざまな素材や形をイメージしつつ、頭の中に思い描くデザインがあり、手を動かすことによって生み出される作品なのです。

ひとつ目の作品は、頭の中にあるデザインを現物化させるため、試行錯誤のうえ作り出されます。本気で考えながら制作していく為、ほとんど作り直しや未完成の作品はないのです。
作りながら鏡にあて、どのラインが1番キレイに見えるか、バランスなどを見ながら調整し、パーツなどの位置やカラー、角度などを決めて行きます。その為、機械のように規則的にパーツが並ぶ作品は少なく、不規則、フリーな作品が多々あったりするのです。

その上で同じ作品を創るために、初めてデザインを絵として残す。それを今後の「設計図」となるまでは、もみさんの新作は頭と手にしか存在しないのです。

◈縫う

ブローチを作るキッカケとなったのは、独立して一呼吸おいてからです初めは、自分で身につけるために作りました。初めて作ったブローチを身につけ、近所に挨拶に伺ったところ、そこのご主人に『うちの奥さんにもつくってよ〜』と言われ、そこから、トントン拍子に横浜高島屋のイベント出展となったのです。このイベントは、みなさんもご存知の通り、今でも続いています。

◈縫うこだわり

商品に対して一切の妥協をしない事です。着け心地はもちろん、着けたときのラインをキレイにみせたいのでパーツは勿論、技法にもこだわりがあります。接着剤でつけてしまえば楽なところも、身につけて動くことを想定し、あえて縫い付けます。縫うことによって、パーツを固定せず、自由に動けるため表情が生まれるのです。

◈初期の作品

初期の作品にも編むものがありました。テグスで編んだネックレスなども代表的な作品です。『角度によって表情が違うのがとても好き』なので、パーツもそのようなカラーのものを選ぶことが多かったようです。テグスにパーツを通し、ジグザグに編んでいくと、ゴムのようになり伸び縮みします。襟もとや鎖骨あたりに『ピタっ』とフィットし、とてもキレイなラインを演出してくれるのです。

5mm幅の2mもある細い長いベルベットの作品もありましたが、こちらもにもビーズが施され、繊細なデザインが目をひきます。身につける側の自由な発想で、いろんな形に変化します。幾重にもグルグル巻いたりして、塊にするとビーズが集合し1本での表情とはかなり異なります。首だけではなく、頭につけたり、腰にまいたり、手首に巻いたり、持物に付けたり・・と、まさに使い手の発想しだいで七変化なのです。

◈「もみカラー」の正体

デザイナーに「独自カラー」があるのは当たり前ですよね。 染色についても、“染めるこだわり”があり、「もみカラー」と呼ばれる秘密の調合があります。
染料はカラーボール。直径3ミリほどの染料の粒です。欲しい色を出すには複数の染料粒を適宜数組み合わせて調合します。思い描く色合いを出すため、何度も試行錯誤の上に追求し、完成したカラーです。

ただし、この調合したカラーボールがあれば『もみカラー』が必ず作り出すことができるか?……そう問われれば、答えは『No』。 カラーボールを湯の中で溶き、よく混ぜた後に染めたいモノを少しずつ入れていきます。

カラーチェックをするため、ときどき箸で引き上げます。 湯温や煮だし時間などで個々の染料は別々の反応をするため、引き上げのタイミングがキーポイント。

◈すべて一期一会、そしてオンリーワン

出したい色合いを得るための絶妙なタイミングが難しいのです。もちろん機械ではないので、ひとつひとつがまったく同じカラーに染まることはありません。

“一期一会”の風合いを楽しみたいところです。

テグス(釣り糸)を染める場合は、すべてが均一に染まるのではなく、グラデーションかかったようになります。

作品を制作する上でのパーツとのコラボレーションが自由で、同じ作品でも少し違った味わいを楽しめるのが染色のよさ。そう、つまり、私のあなたの“オンリーワン”になるわけです。

◈パーツを付けてから編む、という着想

もみさんのアクセサリー作りがどのように行なわれているか……
今回アトリエにおうかがいし、実際にその行程を教えてもらってビックリしたことはたくさんありますが、テグス(釣り糸)を編むところもそのひとつ。

人気作品であるテグスのベスト(金太郎型のものですね)など、編む過程でパーツも付けるのかと思いきや……

巻き取られたテグスにはすでにパーツが付いていますよね。そうなんです、編み始める前にテグスにはパーツがつけられており、その上でベストなど作品ごとに編み上げていくわけなのです。もちろん作品によってパーツの位置などは決まっているのですが、完成した作品から“設計図”ができあがります。

◈根気の編み込みがその世界を生む

テグスは伸縮性があるのでツルツルと滑りますし、なにより根気のいる作業ですが、クリップで固定をしながら設計図を元にパーツを付けていきます。

そして完成した“パーツ付きテグス”を改めて編むことで、さまざまな作品が完成していく――。

1本の糸から独自の世界観は、生み出されるデザイン、こだわりの染色、そして手間を惜しまないこの作業。これらがまさに“編み込まれる”ことで生まれてくるのですね。

◈素材を遊ぶ これが「MOMI STYLE」

わたしはアクセサリーだけをやりたいというのではなく、コスチュームをトータルに捉えて、創作していきたいと考えています。
でも、いつ気が変わるかはわかりません。来年は靴のデザインをしているかも知れないし……何もしていないかも知れない

VIVA ASOBIST vol.05:えんどうもみ より

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