勝手に読書録

決定版 日本のいちばん長い日

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作者名:半藤 一利
ジャンル:ノンフィクション
出版:文春文庫

決定版 日本のいちばん長い日


本年3月11日以降、我が国は“第二の戦後”に突入したと言われている。
東日本を、東北地方を襲った地震と津波による未曾有の大震災。「原発安全神話」を一発で破壊した福島第一原発の事故。進まぬ復興、飛び交っているとされる放射能、物資や電力の不足。東日本の問題だけでなく、東京以西でも原発停止などの動きや運動が広がりを見せ、そのうえ迷走を続ける政治。
これからどうなるのだろう。明確なものだけでない、ボンヤリとした不安も国民全体に広がっていることが、第二次世界大戦の終戦後に国全体を襲ったであろう不安の渦に(おそらく)似ている。それが“第二の戦後”と言われる所以だろう。66年前、あの夏と同じ――。

そこで思い浮かぶのは66年前のあの日、昭和20年8月15日を迎える1日を追ったノンフィクション『日本のいちばん長い日』だ。
広島・長崎への原爆投下、日ソ中立条約を破棄したソビエト連邦の宣戦布告など、第二次世界大戦における日本の敗戦が目前に迫るなか、一部軍部による玉砕覚悟の強硬路線に(終戦=敗戦という)落としどころが見つからない“日本国体”。そこで昭和天皇が下した「8月15日終戦」という“聖断”とそれを遂行する、時の鈴木貫太郎内閣。そしてその動きに気が付きクーデターを企てる強硬派、そのクーデターを察知し自宅で割腹自殺におよぶ陸軍大臣・阿南惟幾。密かに録音された“玉音放送”をラジオに乗せるべく決死の覚悟で行動する日本放送協会(NHK)職員たち……。終戦に至る8月14日13時から15日正午までの24時間を1時間ごとに区切り、著者の綿密な取材により浮き彫りにされた政治、軍、民間人、そして天皇が1時間ごとの“主役”として、近代日本史における果てしなく長い1日が描かれている。

1965年の初版刊行当時(当時は大宅壮一編=半藤一利氏が文藝春秋社の編集者だったため)、登場人物の多くが存命中であったことから、その詳細な描写は終戦直前の宮城(皇居)周辺の様子が目の当たりに浮かんでくる。終戦という何も先が見えない一大事業に様々な角度から関わった(これはクーデター側も同様に含む)日本人のパワー、そして先の大戦への歴史観や“結果どうなった”という個々人の様々な想いとともに、わずか1日で歴史が動いた圧倒的な迫力、これらに唸らされることは間違いない。

今年もまた8月15日がやってくる。66年前、この終結の1日を経たことで混沌の戦後が訪れ、新しい日本が誕生した。そう考えると、現在はまだ“第二の戦後”などやってきていないのかもしれない。ひとまず原発問題だけでもいい、“第二の戦中”を終結させるパワー、英知が日本に再び訪れる日は来るのだろうか。
いや、来ると信じなければならない。その日こそが現代日本の“第二の終戦”であり、本当の復興の道はそこから拓かれていくのだから――。
『日本のいちばん長い日』。本書に登場する人物、そして著者は、混沌の先には希望に満ち溢れる未来があることを、私たちに気付かせてくれる。近代日本史におけるノンフィクションの金字塔である。












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