初恋物語

ひろっちゃん...

育った京都には地蔵盆という慣わしがあった。

夏のお盆の際に集落の中心位置ほどにあるお地蔵様の赤いよだれかけをかけ替え、お供え物をする。子供のためのお盆だ。お地蔵様が祭られている小さな祠は、それでもそこそこの広さの広場のようなところの片隅にあった。

広場には遊具といえば、ブランコだけは頑丈なのがあったが、地蔵盆の時はブランコは外され、その下には天幕が張られ、ゴザが敷かれ、どこかのお寺の和尚さんが説教をたれたりする。ちゃんと聞いた褒美にお菓子やスイカが振舞われたりもした。

広場の中央にはやぐらが組まれ、夕方になって盆踊りの音が聞こえ出すと、一刻も早く広場に行きたくて気持ちがせいた。

私の住んでいたところは大文字山の大の字の斜め裏側の中腹で、他所とは少し離れていたせいか、集落のまとまりがことさらよかったように思う。

誰が企画したのか、ひとしきりいわゆる「盆踊り」があって後、踊りの輪はフォークダンスに変わる。紅白の布で巻いた、いかにも盆踊りのためにしつらえたやぐらの周りでマイム・マイムやオクラホマキクサを踊るのだ。

そのころの仲よしといえば、集落の一番高いところに町から引っ越してきたお寺の子で、一つ年上のはるちゃんだった。そして広場に面した家の、やっぱり一つ としうえのひろっちゃんという男の子がいた。はるちゃんより少し前ではあるが、町から引っ越してきた子だった。

ひろっちゃんは集落の子とはちょっと違っていた。ジーパンをスマートに着こなし、コリー犬を可愛がっていた。ひろっちゃんにはイワという友達がいて、しょっちゅう広場に遊びに来ていた。

ひろっちゃんとイワは器械体操が得意で、手指が回らないほど太いブランコの上の鉄パイプを鉄棒代わりに大車輪をしたりして、集落の大人や子供らを驚かせたりした。

はるちゃん、ひろっちゃん、イワ、それに私もフォークダンスを楽しんだ。曲につれてパートナーがクルクル替わる。どういうわけかひろっちゃんの時になる と、ことのほか胸が鳴った。つないだ手を互いにギュギュッとやったり、顔を見合わせて笑ったりするだけなのだが、ひろっちゃんの番が回ってくるのが待ち遠 しかった。

その夏の夏休みの終わり、私は父の仕事の都合で東京に転校した。中学1年のころだった。

確か中学3年の夏休みだったと思う。父が在宅だったので恐らく土曜日の午後か日曜日か祭日だったはずだ。突然イワが家に訪ねてきた。驚いたの何の!なんでも東京オリンピックを観にきたのだそうだった。

父の手前もあり、玄関先で二言三言交わしただけで、イワは帰っていった。

今になって思う。東京に転校する直前、はるちゃんと話したことがあった。「ひろっちゃんとイワ、どっちがいいか」という話になり、はるちゃんが先に「ひ ろっちゃんがいい」と言ったからなんだかどうだか、どういうわけか私は「イワがいい」と言ったのだった。

あの時「ひろっちゃんがいい」と言ってたら、訪ねてきたのはイワではなくひろっちゃんになっていたような気がするのだ。

今となっては、どっちがどっちでも大差ないような遠い昔の話なんだが、思い出すと胸の奥がほろ酸っぱい懐かしさに包まれる。

イワには悪いことをしたと思ったりする。せっかく遠々訪ねてきてくれたんだから、もう少しとり付く島があってもよかったなと後悔する。


「ああ、山々はもう色づき始めたのだろうか」
「谷川のせせらぎは冷たさを増したのだろうか」

ことに季節の移り目の時などには、生まれて育った地を懐かしく想ったりする。















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