VIVA ASOBIST

vol.42:高橋一郎
たばこ屋は街中の人と知り合いにならなきゃダメ タスポだっておんなじよ!

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【プロフィール】

バンバンたばこセンター店主

神奈川県相模原市相生3-12-7

TEL:042-752-3877

vol.42_01.jpg 相模原に、スゴイたばこ屋があると聞いて、訪ねてみた。ホームページがなく、インターネットにもほとんど情報がない。住所を頼りにたどり着くと、「世界のたばこ500種類」とだけ書いてある看板を掲げた小さなお店があった。道を挟んだ向かい側には、たばこの自動販売機が7台並んでおり、在庫を補充しているおじさんがいた。声をかけてみると、やはり「バンバンたばこセンター」の店主・高橋一郎さんだった。

挨拶すると、満面の笑みで応えてくれた。心底楽しそうな感じで、温かい人柄も伺える。何より、すごくエネルギッシュだ。慣れた手つきで、たばこを自動販売機に入れている。見たことのない銘柄だ。

私は、このご時世に、現役のヘビースモーカーで、かつてはさまざまな銘柄を吸っていた。学生時代に住んでいた部屋の壁には、100種類を超える空箱を貼っていたものだ。しかし、よく見ると、自動販売機には、見知らぬたばこがいくつもある。何種類のたばこを扱っているのか聞いたところ、「自動販売機で300種類、店内でもう420種類で、合計720種類くらい」と即答。店舗の看板は、以前自動販売機の近くに設置していたものを取り替えた際に、流用したという。500種類でもすごいのに、720種類とは……。

vol.42_02.jpg 「たばこが好き」と笑う高橋さんは、以前焼き肉バイキング「大鳳バンバン」を経営していた。40年前に創業した老舗で、地元の人気店だった。その入り口に、たばこの販売スペースを用意していたのが始まりだ。たった3坪のたばこ売り場で、月に1000万円も売り上げたこともあるそうだ。ところが、8年ほど前、知人から「父親と旅行でも行った方がよい」と忠告され、時間を作るためにお店を閉めることにした。その時、道楽でやっていたたばこの販売をメインにしたお店にしたという。

狂牛病がニュースに上る半年ほど前というのだから、運が強いとも言える。時間に余裕ができたおかげで、父親とあちこちに旅行に行けたそうだ。その後、「父親が亡くなって、焼肉屋に戻ろうとしたけど、たばこ屋が面白かったので続けることにした」という。飲食業の免許は持っているし、今では取得することの難しい深夜営業の許可も取っている。しかし、常に真剣勝負の飲食業と異なり、たばこ屋を続けて、人生を楽しもうと考えた。
「今更お金を稼ぐことには興味がない」とさっぱりした笑顔で高橋さんは断言する。

vol.42_03.jpg そこで、たばこの補充が終わったものの、店舗に戻るそぶりがない。店は奥様が見られているのだとか。高橋さんは、自動販売機の前に置いた椅子に腰を下ろす。その前のテーブルには「タスポ用写真を無料でお撮りいたします」と書いてあるではないか。

タスポは未成年者喫煙防止のために考案された「成人認識カード」。2008年7月1日から関東で稼動開始し他道府県ではすでに導入されている。日本全国このカードがなくては自動販売機でタバコを購入できなくなるとは、よくニュースに取り上げられているので耳にした人も多いだろう。
このカードは無料で発行できるが、顔写真が必要なのがネックで普及が難しいのではないかと考えた高橋さんは、店に来る人に無料で写真を撮ってあげているのだ。インスタントカメラの「チェキ」を使い、その場でプリント。申込書やボールペンも用意しており、その場で投函の準備が整う。

自動販売機に買いに来たお客さん全員に、声をかけていたが、半数がここで作ったと応えていた。お店全体でも4割くらいの顧客に作ってもらったという。この試みは、6月3日からスタートした。初日は100人くらい来て、てんてこ舞いだったそうだ。その後は20人程度で、昼休み時に誰かが撮影していると、みんな興味を持って近寄ってくるらしい。

スタート時に、よくお店の前を通る人たちが、会社で賭けをしたそうだ。店舗の外で無料で撮影する高橋さんが、何日で音を上げるかという内容だ。ほとんどが、3〜6日に賭け、大穴に賭けた人でも11日。しかし、取材当日でなんと21日目で続行中。全員外れだ。最初の数日はつらかったが、続けているうちに、サポーターというか声をかけてくれる人が増えてきた。その声を励みにがんばり、これまでで合計800人は撮影したという。

「根性があるな、ウチで働け、と言ってくれる社長さんもいるんですよ」と高橋さん。
雨の日も照りつける晴れの日も、店舗ではなく道を挟んだ向かい側の自動販売機前に座っていた。タダモノではないのは一目瞭然だ。
「63歳だけどいいか、と聞くと、そりゃダメだって」と大笑い。豪快すぎるキャラクターが、人を惹きつけるのだろう。

さらに、タバコを吸わない人にもタスポを作ってもらっているというから驚きだ。先日は、営業の人にお礼を言われたそうだ。通常は、スーパーの商談日に営業する際、列を待って並ぶ必要がある。しかし、タバコを持って行くと、10人抜きとかで取引先の担当者に呼んでもらえるのだ。人件費を考えれば、確実にお得だ。その担当者は、次にどんなタバコを持ってきてくれるのかと楽しみにしているという。

バンバンたばこセンターは店舗が目の前にあるので、タスポが必須というわけではない。それなのに、なぜこんな努力をしているのかと聞くと、周囲の小さなたばこ屋さんのため。近所の自動販売機は70〜80歳のお年寄りが管理していることが多い。そんな人たちは、営業活動などできるわけもなく、タスポが普及しなければ影響をモロに受けてしまう。その代わりに高橋さんが立ち上がったというわけだ。

vol.42_04.jpg ちなみに、高橋さんのところでも、7台の自動販売機中2台は撤去するそうだ。タスポ対応の機器を入れてもコストを回収できそうもないという知人からのアドバイスによるものだ。
「自販機の時代は終わり。この先は、店舗でやっていくしかない。いろんな小さな店がなくなって、コンビニエンスストアだけになって、本当にいいのか。みんな愛情に飢えてるんだ。それを補うのが、街の小さなお店なんだよ」
取材中でも、高橋さんは道行く全員に声をかける。子供でも女性でも。多くは顔見知りで、そのまま世間話が始まる。道を行くクルマからも挨拶されるほどで、ちょっと都会で見られる光景ではない。

かつて、たばこ屋をはじめ、個人経営の店舗が街を潤していた。しかし、効率を追い求め、大規模な店舗が跋扈し、力のない小さい店は淘汰されてしまった。
「昔はお父さんのたばこを子供が買いに行って、たばこ屋のおばちゃんからあめ玉をもらっていたものだ」と懐かしげ。確かに、そんな経験は私にもある。
そんな理由から、高橋さんは街のみんなと知り合いだ。
「たばこが売れるかどうかは関係ない」とくり返す。
「この前、すごく落ち込んで歩いている人がいて、声をかけたら“ハッ”とするんだよね。で、コーヒーをおごってあげて、話をしたら、“ありがとう”ってお礼を言われたよ」
こんなことが当たり前に起きていれば「自殺者も減るはず」と高橋さん。孤高の宣教師ばりの哲学と行動力だ。

最後に、店舗でお話を伺った。営業時間は10:00〜22:00。しかも、休みは基本的になし。用事がある時だけ休みを取るそうだ。その上、7月からは、開店時間を早めるという。タスポを持たずにたばこが買えないで、困る人がいるかもしれないという理由だ。

vol.42_05.jpg 店内は、ありとあらゆるたばこ関連の製品が、並んでいる。雑然としたレイアウトは昭和の雰囲気。男の子の秘密基地のような懐かしい感じだ。店の一面には、大量のカートンが積まれているが、もちろん在庫はこれだけではなく、2階にも大量のたばこが置いてあるそうだ。全世界620種類もの紙巻きたばこを扱うが、在庫の管理にも注意を払っているそうだ。
「たばこ屋は在庫を切らさないのが当たり前。今日はないんです、なんて言い訳はしたくない」
そのおかげで、昔は近くの芸大の人がタバコ全種類くださいと言ってきたこともあるそう。パッケージのデザインを勉強するためだ。今は健康のためというメッセージが大きく印刷されているので、そんなこともなくなってしまったようだ。

「日本には、もっとたくさん扱っているところがあると思うけど、心意気だけは日本一と思ってやってるよ」と胸を張り、高橋さんは大きな声で、笑う。

本記事がUPなる7月1日。タスポ都内一斉導入の初日、街角のタバコ自販機の前で戸惑う姿をたくさんみかけた。現時点でのタスポ普及率は推定喫煙者数の40パーセント。
「コンビニやスーパーで買えるから」「個人情報がネック」などとTVニュースのキャスターは解説するが、喫煙者の立場からいえば「面倒くさい」その一言に尽きる。

高橋さんのようなタバコ店主がたくさんいれば、普及率はたちどころに向上するのは自明の理。そこんとこ、ぜひ考えていただきたい、JTさん。











読み物 VIVA ASOBIST   記:  2008 / 07 / 01

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