VIVA ASOBIST

vol.50:前田精長・黒沢篤也
料理というのは職業ではなく、生き方そのもの

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【プロフィール】
中国料理 聖兆
代表 前田精長
社団法人 日本中国料理協会
24年前にこの道に入り、11年前に「中国料理 聖兆」をオープンする。










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副料理長 黒沢篤也
社団法人 日本中国料理協会 南東京支部
18歳の頃からさまざまな料理を手がけ、3年半前に聖兆のシェフとなる。

中国料理 聖兆
東京都大田区蒲田4-15-5   03-3730-1303
http://seicho.net/

vol.50_01.jpg 蒲田の商店街にあるチャイニーズレストラン「聖兆」は、知る人ぞ知るグルメスポット。周囲の店からは想像できないオシャレなお店だ。
「ランチがあり得ないくらい充実している」「コストパフォーマンスが高い!」といった口コミが広まるその秘密は!?
代表の前田さんとシェフの黒澤さんにお話を伺ってみた。

●調理と料理は別物。どちらも18歳から調理の世界へ
まずは料理歴を訊ねたのだが、「料理は11年ですが、調理は24年になります」と前田さん。料理に関する定義からして、私たちとは認識が違うのだ。

前田さん:「料理というのは生き方ですので」

取材開始早々にハイ・インパクトなジャブ!
曰く、私たちがよく知るレストランや定食屋での作業は「調理」で、大量の食材を決まった味付けにするのが目的。勝手に季節感を盛り込んだり、暑さ寒さに合わせて料理をすることはできない。


vol.50_30.jpg そんな調理の世界に前田さんが入ったのは18歳の時。
前田さん:「日本中国料理協会の副会長に従事し、指示に従っていろいろな店舗で働くという、古いスタイルの修行をしていました。13年間で中華料理店を10店舗を渡り歩きました」

筋金入りの中華料理人だ。前田さんは、10年で修行を終え、自分で商売をしようと考えていたそうだ。少しずれて13年かかり、11年前に「聖兆」をオープンする。自分で料理がしたい、という想いからだ。
現在のシェフ・黒澤さんも18歳から調理の世界に入ったという。
黒澤さん:「18歳の年末に、地元のステーキ屋で手伝いをしたのがきっかけです。武闘派のキッチンで、何かあるとすぐ手が出たり、壁に血のあとがあったり。怖いんですが男の世界だなとぞくぞくして、親に頼んで調理の専門学校に行かせてもらいました。その後、三笠会館という会社が経営している『Buono Buono』に入りました」

武闘派のキッチンを初めて見て、逃げるどころかぞくぞくしてその道を目指したというから、なかなかに気合いが入っている。

黒澤さん:『Buono Buono』には3年くらい、その後名古屋のイタリアレストランに行き、そこでイタリアへの現地研修に行かせてもらいました。すごくいい経験になりましたね」

ところが、せっかくイタリアに行って見てきたことを実践できない。忙しい日々を送る間に不満が募ってくる。中華部門への異動希望を出した。三笠会館は創業70年という老舗だが、洋食から中華に移ったのは黒澤さんが初めてだった。
上海料理の店に移って頑張っているところ、誘われ退社。横須賀のさいか屋にある「煌蘭」に移る。そこで、前田さんと出会うことになる。

vo.50_40.jpg ●お客様においしいと言ってもらいたい。「聖兆」のブランド確立を目指す
取材前に、ランチタイムだがコース料理を食べさせていただいた。12〜13時のコアタイムを外したはずだが、それでもお客さんが並んでいる。スゴイ盛況ぶりだ。
この日は肌寒かったが、最初に広東式の茶碗蒸しが出てきて、ほっと一息。前菜は、ワカサギのマリネと豚耳のにこごり、牡蠣をムースにした卵焼き。卵焼きはジューシーで、牡蠣の風味がぶわっと口の中に広がる。
次は、芝海老と有機ほうれん草の翡翠炒め。明らかに中華料理ではあるが、イタリアンのような雰囲気も感じる。
続いて、大分産の春竹の子とウーロン茶で薫製にしてあげ直した真鰯。この香ばしさは筆舌に尽くしがたい。
さらに地鶏と黄色トマトの黒酢蒸し、赤葱炒飯と続き、沖縄黒糖の黒蜜を使った豆乳プリンで締め。今まで食べてきた中華料理はなんだったんだと思うほどの繊細さと、ダイレクトな美味しさ。これは、ファンが付くのも納得だ。

前田さん:「うちの料理はメニューがほぼないので、すごくわかりにくく、作り手の独創性が重要です。しかし、調理をやっているコックさんは多いのですが、料理ができる方が非常に少ない。なおかつ中国料理となるとまた少ない。黒澤は料理に対して職人気質で、僕よりも凝り性で、スゴイ料理をたくさん作ります」

「煌蘭」時代に黒澤さんの話を聞いたり、料理を食べたりして、「僕とは違う料理だな」「素晴らしいな」と驚嘆した前田さん。「うちに来てくれないか」となった。

前田さんが黒澤さんに声をかけたのは3年半前。黒澤さんは即答で「Yes!」。

vol.50_04.jpg 黒澤さん:「あまり深くは考えませんでした。当時、働いていたお店よりは、自分で色々なことをやれるのかなと思い、すぐOKしましたね」
現在、料理は黒澤さんが作っており、前田さんはフロアを担当している。

メニューがなく、独創的に料理するとなると、味が変わってしまうのではないだろうか。
前田さん:「料理というのは職業ではなくて、生き方そのものだと思っています。おいしいものを出すのは当たり前です。以前は僕が作っていて、今は黒澤が料理をしていますが、基本的には作り方が変われば、当然料理は全然変わります。でも、聖兆に来ておいしかった、という満足が残ればいいと思うんです。黒澤が聖兆に来た当時に、僕と同じようにして作る必要はないと言いました。僕は、聖兆ブランドの確立を目指しているんです。中国料理の聖兆という看板を出していますので、ブランドにあった満足感を得てお客様に帰っていただきたいのです」
では生き方とは?
「料理人はオンオフの境がない商売です」
休日でも時代性を取り入れるためにワイナリーや畑を回るなど、24時間拘束されているようなもの。料理は、天候や四季によって変わり、日々生きていることを実感して調整する。1年間、毎日違う味を作り続けて、お客様に「ここのお店は1年変わらないね」と言ってもらえるのが理想だと前田さん。
オフの日まで料理のために動くとは、好きでなければ到底務まるものではない。
「漁師に話を聞くために青森まで行くこともありますよ」と黒澤さんは笑い飛ばす。

黒澤さん:「畑の本で紹介されているところを見て、顔の濃そうな人の所にアポを入れ訪ねていきます。それで野菜がどういう風に作られているのかを聞くんです」
市場を経由していない「いいもの」、美味しい野菜が手に入る。

前田さん:「素材を選びに行くことから料理なんです。この時期のこういう所で取れる魚や野菜は美味しいので使おうかな、と。市場からくる野菜や魚も、実物を見てから、どうすればいいかなって考えるのが料理なんです。メニューに沿って決めるのはやっぱり調理なんです」


vol.50_50.jpg ●料理人とお客様の間を調整するのが劇場管理者の役目
黒澤さんの料理に対する想いが非常に強い。逆に多くのお客さんは、今日は「友だちが来たから美味しいご飯を食べに行こう」が来店の動機。その間を調整するのがフロアにいる前田さんだ。

前田さん:「お客様には楽しんでいただきたい。けどもウーロンハイは承りません。焼酎がどうしても飲みたければ、美味しい焼酎がありますから、お湯割りかロックで飲んでくださいと勧めます。それが、『劇場』管理者としての僕の仕事です」

前田さんは聖兆を指して、ステージという言葉を使う。料理を作るのが俳優で、お金を払って観る(食べる)人がいる。お客さんも働く人もこのステージを楽しめるように、朝とランチ後の時間にキレイに掃除する。しかも、次にお客さんが入るまでは全員裸足で歩く!
「最初の1歩目はお客さんに入ってもらいます」
業者の人にも靴を脱いでもらっている。どうりで、11年前からそのままという店内は、ピカピカ。

料理に使う食器類は、マイセンをはじめとする洋食器の高級ブランド。中華料理は、たとえ高いお店でもあまりいい食器は使っていない。しかし、前田さんは、高級な食器の乗せることで少しでも美味しく感じてもらえるなら、その投資は高くはないと言い切る。

前田さん:「僕は基本的に和食器のほうが好きですが、食器の管理する手間や値段を考えると、正直非常に難しい。マイセンはお客様もよく知っている。廊下に20万円する花瓶がある。え、ここちょっといい店なのかな? と感じてくれれば」

vol.50_60.jpg ●今後の予定や展望は?
黒澤さん:「将来は独立し、かみさんと中国料理をやりたいですね。夢は、老後に備えて自分で畑もやりたいです。作った野菜を自分の料理屋で出したい」

前田さん:「チャイニーズレストランという看板を外しても、聖兆に来なければ食べられない料理のブランドを確立したい。創作って言われるのはあまり好きではないんですが、うちでしか食べられない料理を確立したいですね」

聖兆はすでに普通の中華料理屋とは一線を画していると感じたが、前田さんはさらに高見を目指している。ただ、一帯の再開発問題で、立ち退きの話も出ている。早ければ、2〜3年で動く可能性がある。

前田さん:
「基本的には蒲田で商売をしたいと思っています。蒲田は商売が難しい、と言われるのですが、逆にここでうまくいかないなら、どこに行ってもうまくいかないだろうという自分の理念があるので。とはいえ、今後の身の振り方はまだ考えているところです」

平均予算はランチは1000円、ディナーは1万円。どちらも、銀座で食べれば3倍はしそうなクオリティー。ぜひ、一度足を運んで欲しい。ファンになること請け合いだ。それも、なるべく早く行くことをおすすめする。











読み物 VIVA ASOBIST   記:  2009 / 03 / 23

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