VIVA ASOBIST

Vol.62 小林路子――描いたきのこは800点超! きのこに魅せられた画家

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【プロフィール】
東京都生まれ。
画家
1986年に発行された『キノコの不思議』(光文社)できのこの挿絵を描いて以来、きのこの魅力にとりつかれ、以降きのこを中心にした創作活動を続けている。これまでに描いたきのこは800点を超え、“きのこ仙人”の異名を持つ。
主な著書に『きのこの迷宮』(光文社)、『きのこの絵本 』(ハッピーオウル社)など。


※『きのこの迷宮』と『きのこの絵本』の「読書録」はこちら


 

 

明けましておめでとうございます。
元旦恒例、「VIVA asobist」新春号でございます。
ここ最近は祈・アラカン編集長モンブラン登頂・冒険野郎、淑女シリーズ、
こちらをお送りしてまいりましたが、その野望は昨年達成。
というわけで新年は登山以前からの得意分野、
“草花”から辿り着いた異能の画家さんに登場いただくことにいたしました。
きのこ画家・小林路子さんの登場ですよ!



――まず根本的な質問……おそらくこれまで飽きるほど聞かれたことかと思いますが……。
小林●はいはい、なんでしょ?
――小林さんはなぜきのこを題材にされたのでしょうか。私も草花好きではありますが、きのことなるとスーパーでシメジを買ってくるとかしかできないわけですが(笑)。
viva62_06.jpg小林●そうですよね(笑)。私はもともとは普通の絵描きでして、いろいろな絵を描いておりました。ある美術展の会員として、ちょっとシュールな絵を描いていたんですね。そこで10年くらい会員として描いていたのですが、やっていくうちに「やっぱり絵の基本は写実だな」と思い始めまして……。
――はい。
小林●ただ写実と言っても何をテーマに描くか……「何かないかしら?」と思っていたときに、たまたま光文社が『キノコの不思議』というエッセイ集を出したのです。マイナーな本ではあるのですが(笑)。
――いえいえ(笑)。
小林●しかしこれが“幻の名著”と呼ばれておりまして、各界の名士の方がエッセイを書かれているのですよ。手塚治虫さんとか……
――わっ、思いもよらない名前が出ましたね。たしかに漫画界の名士ですよ。
小林●他にも俳優の方であったり菌類学者の方であったり、小島信夫さんという芥川賞作家の方であったり……本当に多くの方、きのこ好きの方が書かれているエッセイ集なんですね。その挿絵を絵描きの人に頼みたいということで、知り合いから私にその話があったのですね。
――小林さんに白羽の矢が立った、と。
小林●ただそのときの私は東京生まれの東京育ちできのこのことなど何も知らなくて、ただ時間もあまりなかったので外国の図鑑などもを借りて取りかかりました。それで図鑑を見ていると、色もカラフルだし、こんなにすごい生き物がいるんだ。知らなかったな……って感動したんですね。そうしたら、『キノコの不思議』の編集者さんがやっぱりきのこ好きだったんですね。
――そうでしょうね、やっぱり(笑)。
小林●「日本は世界でもきのこがものすごくある国で、ここ(図鑑)にあるようなのはほとんどあるんだよ」って。ええって思いながら、本が出来上がったときに関係者で山にきのこ採りに行ったんです。それで地元の方に案内してもらいつつ、見つけると絵描きの習性としてそのきのこを描いたりしているうちに……。
――のめり込んでいったわけですか?
小林●最初は冗談で……冗談ってこともないですけれど(笑)、楽しいから描いてみましたら、編集者の方は『あなたはさすがに上手いですね。日本でいちばん上手いですよ』って言われたんですね。それでニコニコになっていたら、『いや、他に描いている人がいないから(笑)』なんて(笑)。
――ははははは。
小林●でもたしかに他にいなければいちばん上手いかもしれないと思いましてね(笑)。それじゃあ人がやっていない仕事だったらおもしろい、やってみたいという気持ち、そしてきのこって見れば見るほど生き物としてシュールなんですね。
――はい、たしかにそうですね。
小林●自分もシュールな絵を描いていましたし、自然そのものというのは本当に不思議に満ちているし、造形的にも素晴らしい。まだ誰もやっていないと言うし、それならばひとつきのこを徹底的に、写実的に描いてみようかしらと思ったのが始めなんです。
――なるほどなるほど。そう思われてからキャリアはもうどれくらい……?
小林●はい、もう相当ですが、それを言うとだいたい歳がバレてしまいますねえ……まあもう25年くらいになりますかね(ニッコリ)。

★ジメジメ? いやいや「人間にとっていい環境がきのこにとってもいい環境」
 

――描いてみるかとなって以後ですが、いちばん最初に描かれたきのこはなんだったのですか?

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小林●それはやっぱりベニテングダケが描きたかったのですね(即答)。
――おおっ。ベニテングダケは展覧会のポストカードや著書の表紙などにもよく描かれていますよね。
小林●きのこの場合、まあ植物の花もその季節にならないと咲いてくれませんが、それでも植物体は一年中ほぼその場所にありますよね。冬は枯れたりしたとしても。ただ、きのこは出てみないとどこにあるかわからない。
――毎年必ず同じ場所からにょきっと姿を現すわけではない、ということですか。
小林●そうですそうです。で、ベニテングダケをぜひ描きたいとお願いしても、「うん、まあ連れて行ってあげるけれども、出ているかどうかは保証しないよ」と言われましてね(笑)。まあ、先ほどのご質問の補足ですが、一回出ますと同じようなところに出る可能性は非常に高くはあります。でも必ず出るとも限らないんです。去年までは山のように出ていたのに、今年はさっぱり出なくなって、また数年したらぽつぽつ出はじめた、とか。
――ほおおお。
小林●地面の中に生きている菌糸の栄養状態であるとか、いろいろとあるのでしょうね。植物で言えばきのこは“花”の部分、生殖成長の部分になります。花が種を作るように、胞子を作るための器官なんです。なので、本体が充分に成長したり、逆にもうそろそろここには食物(分解するもの)がなくなってくると、つまり生存上、危ない状況を感じると、別の場所に移りたいから、花にあたるきのこを出して胞子を作り、新天地を求めて行くんですね。
――なるほど。花だけでなく人間にも似ている感じですね。
小林●ごぞんじかもわかりませんが、植物の種と胞子の決定的な違いというのは、種は花の中でもう受粉していますよね。つまり種の状態のものを蒔いたり、地面に落ちたりすれば、たいていは発芽が出来る。もう有精になっているわけです。ところがきのこの胞子は単性なんです。
――ということは……?
小林●言ってみれば男と女みたいなもので、それだけでは一人前のきのこを作ることは出来ないんです。さらに、何ミクロンという胞子が無数に振りまかれ、それが条件のいいところに着地して、発芽し一次菌糸というのになります。これもまだ単性ですが、たまたま同じ種類のきのこ同志で、性というか相性の良いものが出会うと、はじめて結合して有性の二次菌糸になります。これで植物の種と同じ状態になるのです。
――へえええええ、果てしない話ですねえ。
小林●よく言うのですが、「種というのは結婚した仲のいい男女が住むスイートホーム、きのこの胞子はこれからどうしようという独身者がそこら中にいる状態」なんですね(笑)。
――ははははは。

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小林●ちなみにきのこにいい環境というのは、やはり人間もいいなあと感じる場所なんですよ。
――そうなんですか。でもなんかイメージだと“万年床の下”とか……。
小林●はい(笑)。よく「“暗くてジメジメしたところ”に出るんでしょ?」なんて聞かれるんですけれども……まあそういうところに生えないこともないのでしょうけれども、どちらかといえば人間でも気持ちがいいところのほうが多いですね。
――ほおお。
小林●マツタケなんかはカラッとした掃き清められたようなアカマツの林でないと好きじゃないですしね。南斜面のカラッカラに乾いたところに銀褐色に光ってポコッと出るものですからね。そんなマツタケの絵も描きたいですけれども、関西出身の友達とかに「そりゃ難しいねえ」って言われています(笑)。天然のマツタケは、たとえば村とかの自治体がいわゆる“マツタケ山”ということで管理をしていますからね。相当高いお金でちゃんと入札して権利を持った人でないと立ち入れませんからね。


★シュールなきのこ画は「結果的に精密になっています」

 

――ボタニカルアート(科学と芸術を併せ持つ植物画)はすごく“静”な感じがするのですが、小林さんのきのこ画を拝見していると、対照的にすごく多元的で生命力に溢れているというか、パワーを感じるのですよね。
小林●ありがとうございます(ニッコリ)。
――ボタニカルアートでもなく、日本画でもない。独特な世界を感じます。

小林●ありがとうございます。そうですね、先ほども申しましたとおり、私はもともと普通の絵描き……いまでも普通の絵描きのつもりでして(笑)、ライフワークであるきのこ以外のものも描きますしね。ですからまあ、こう考えていただければわかりやすいと思うのですけれども、絵描きというのは得意不得意を抜きにしていちおうなんでも描くのですけれども、そのなかで風景が好きな人は風景画ばかりを描いて風景画家と呼ばれたり、人物が得意の人は肖像画とかを追求していく。肖像画家というジャンルも昔ありましたけどね。それと同じで、私はそういう対象できのこを選んだ。私としては普通の絵のつもり、ただテクニックとしては写実的に描いているので、「ボタニカルアートですか?」とおっしゃる方も多いですが、それとは違うのですね。
――はい。
小林●ボタニカルアートは私も綺麗だと思うし好きなんですが、それこそ写真とかがない時代に絵描きを連れて行って描く、記録のために描く絵が出発点なんです。つまり本質はアカデミックなものですが、私のは普通の絵なので、まず科学的に精密にということではなく、魅力的な生き物だから描いているという絵なのですね。私の小賢しい思いこみは捨てて、自然に忠実にやってみようというところから始めましたので、結果的に精密に描いているという感じです。
――なるほど、“結果的に精密”ということですね。
小林●私の絵に対してすごくシュールに感じているとおっしゃっていただきましたが、それは私がではなく、きのこがシュールだからなんですよ(笑)。
――ところで小林さんはきのこ画家として“きのこ仙人”などという異名もお持ちですよね(笑)。
小林●ははははは。いろんな本にも前振りのように書いている話なのですが、『キノコの不思議』を作った編集者さん、彼が人をおだててきのこの絵を描くようにさせたくせに、「そんなきのこの絵ばかり描いていると、貧乏になって雲か霞くらいしか食えなくなって仙人になっちゃうよ」って(笑)。
――ははははは、仙人ってそっちのほうなんですか(笑)。

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小林●そういう失礼な話なんです(笑)。その編集者さんが仙人って呼び始めたら、“きのこ仲間”まで呼び始めて。きのこならなんでもお見通しとか、そんな高邁な話じゃ決してないんです、はい(笑)。
――きのこ仲間というのは多いのですか?
小林●はい。私自身も都会で生まれ育ちましたから、描き始めるまでは何も知らなかったんです。ですからそれを教えてくれる先輩と言いますか、きのこ同好やきのこのエキスパートの方とか、学者の方とか、きのこの地元の方とか……「いま○○きのこが出始めたから描きに来るかい?」って言ってくる方とか、こういうみなさんのお力によってきのこを描くことができたのです。自分だけで描いたのではない、と感じています。
 
★毒きのこは人間をヒドい目に遭わせようとしているのではなくて
 

――きのこの楽しみというのは当然“食べる”のもありますよねえ。
小林●きのこ好きのほとんどの人はそうですよね(笑)。日本人というのは古来きのこ好きの民族で、秋になったらきのこの季節だということで、伝統的に山に入っていってきのこを採ってきのこ鍋にしたりします。ただまあ、私の場合は周りの人にも恵まれたので山に行って……ということもできますが、多くの人はいざ秋にきのこ採りに行こうと思ってもなかなかどうしたらいいかわからないですよね。でも、本を見たり、きのこグッズを集めたり、作ったり、いろいろなきのこの楽しみ方があると思います。
 

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――それに近い話ですが、きのこ採りに行って、“間違い”もありますよね、よく(笑)。
小林●そうなんですよねえ……。
――たとえばマツタケに姿形は似ているのだけれども食べたらアウトだった、なんてことがあるのではと思うと怖いですよね。
小林●見分けるのはなかなか難しい生き物だったりするので、そこは本を買って自分で勉強したりする必要があるでしょうね。まあそこがまたおもしろいのですけれども(笑)。でも、どんな趣味も同じですよね。たとえば普通の人にはただの電車でも、電車マニアの人はその形式までわかるとか。
――ああ、なるほどなるほど。
小林●きのこの場合自然の物で、電車とか車とかの人工物ではないので、ハッキリ割り切れないところもあります。人間がこれだろうと思っても、そうでない可能性は大いにあります。初心者の方はどれを見てもマツタケに見えてくるようですし(笑)。
――ははは。ところで「すごく美味しいのだけれども、食べると必ず少しだけお腹を壊す」なんてのもあったりするのでしょうか。
小林●まあお腹を壊す時点でそれは毒きのこです(笑)。たしかに毒というものは多少個人差があって、同じきのこを同じだけの量で食べたのに、かたやなにも起こらず、かたやけっこう当たるということもあります。地域によっても違ったりするのですよ。あるきのこをA地方の人は普通に食べるのですが、B地方は軽い毒があるから食べない、とか。
――毒ってのはお腹を壊すとか以外に神経系とかいろいろあるのですよねえ?
小林●そうですね。消化器系に影響を及ぼすものとか、肝臓とか腎臓を破壊して死に至るようなものまであります。で、きのこの毒というのは軽いものだろうが重いものだろうが解毒剤がまだなく、対処療法しかないんです。胃の洗浄をするとかですね。
――吐いたり下したりというケースが多いのでしょう?
小林●そうですね。それでとにかく体外に出すようにするわけです。しかし吐いたり下したりするものならばまだいいんですよ。それらは絶対……とは言いませんが、死に至ることはあまりありません。胃のあたりで身体がとにかく出そうと反応しているわけですから。それで吐いてしまえばスッキリしたり、2、3日気持ち悪くてもまあそれで治る。ただ致命的な毒きのこは肝臓とか腎臓とか身体の解毒作用を司るところへノーチェックで行っちゃう。これが怖いんですね。
――たしかに怖いですね、それは……。
小林●あと神経系の毒の場合は幻覚が見えたり……そういえば流行りましたよね、新宿あたりで一時期(笑)。まあその話は止めておきましょう。
――これはすごい素人的な発想ですけれども、「毒がある」というのも小林さんにとって魅力だったりしますか?
小林●そりゃあ魅力ですよ(キッパリ)、ハハハ。毒きのこの話は尽きぬものがあります。
――尽きませんか(笑)。
小林●私はきのこにベタ惚れだから思うのかもしれませんが、きのこは人間に対してヒドい目に遭わせようとか殺そうと思って毒を持っているわけではないんですよ。人間が勝手に採って食べてしまって間違っているだけでして、人間が間違わなければいいわけです。向こうから襲いかかってくることはないですからね(笑)。
――襲いかかってきたら毒よりも怖いです。
小林●充分気を付ければ毒きのこだって怖くないし、ともかく得体の知れない物は食べないようにすればヒドい目に遭うことはありません。ただ、人間は冒険してみたいところもあるし、間違いもありますから中毒は絶えないのですけれどもね。最近は対処療法がよくなってきていますが、それでも毎年なくなっている方はいる。悲しいことです。
――間違う間違わないは草花にもあって、毒のあるムラサキケマンを一生懸命に摘んでいる人がいて、「すみませんが、何をなさっているんですかっ?」と聞いたら、「いや、セリを摘んでいるんですよ(ニッコリ)」、「ダメです、違いますっ」なんてこともありました(笑)。
小林●きのこより草花の中毒のほうが多いかもわかりませんね。私もよく本に書いたりしますが、毒きのこの迷信として赤かったり派手な色合いのきのこには毒があると言われていますが、それは完全に迷信なんですね。地味な色の毒きのこのほうが多いですからね。カキシメジなんて茶色でツルツルツヤツヤ、本当にしっかりしたきのこで、食べると美味しいらしいんですよ。
――この話の流れだと食べないほうがよさそうですね(笑)。
小林●毒抜きをして食べる地方もあるそうですが、かなりの猛毒です(笑)。ただ、誰が見ても食べられそうな外見をしていますけどね。……まあこれは“赤いきのこの迷信”で、「赤いからって毒きのことは限らない」と言いますと、では赤いきのこは毒じゃないんだと誤解する人もいて(笑)。それからは何色云々じゃなく、「色じゃ判断できません」と言うようにしています。

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――(ヤマドリタケモドキの絵を指して)これなんか食べられそうですけれどもね……。
小林●ええ、食べられますよ(笑)。
――あらっ(笑)。
小林●このヤマドリタケとかヤマドリタケモドキというのは、食べられるとてもいいきのこです。ですがパッと見たところ同じように見えるドクヤマドリ……名前を聞けばそりゃ毒ですが(笑)、この中毒は相当激しいです。消化器系の毒ですが、うっかり量をたくさん食べて手当てをしないと死ぬかもしれないと言われています。以前、仲間が知らずに食べて、用心してほんの数切れ食べただけなのですが、一晩吐いたり下したりヒドい目に遭ったそうです。
――ところで小林さんがいちばんオススメの毒きのこ……妙な単語ですが(笑)、それはなにになりますか?
小林●やっぱりそれはベニテングダケですね。
――そうですか……って、ベニテングダケは美味しいって著書にありましたよねえ?
小林●はい、でもオススメはできませんね。以前は毒きのこでも舐めるだけでよく吐き出しておけば大丈夫……と言われていたのですが、たとえばこの真っ赤な棒ともサンゴとも見えるこのカエンタケ、触っただけで皮膚炎を起こす可能性があるという猛毒のきのこなんです。
――へええええ。
小林●そういうことが知られる前、北海道の樽前山で大発生……(目の前のテーブルを指し)このテーブルの4倍くらいの切り株の下に出ていたんですね。それを見たときに感動して、触りまくりましてね(笑)。
――触りまくりましたか(笑)。
小林●それを東京まで持ってきて描いていたんですが……いや、いま思えば本当によかったと思いますが……
――思いますが?
小林●ちょっと囓ってみようかと思ったのですけど、止めました(笑)。
――よかったです、はい(笑)。
小林●きのこの勉強もあるので描き終わると切って中を見てみたり、毒でなければ味わったり匂いをかいだりしてどんな傾向なのかを調べることにしているのですが、カエンタケはその時点では食べられるのか食べられないのか、有毒なのか無毒なのかもまったくわかっていませんでね。描いている最中しばらく置いてあったのに腐ることもなかったことも含めて、なんか虫が知らせて捨ててしまいました。舐めてみようとか囓ってみようかとか思いましたが(笑)。
――よかったですねえええ。
小林●ホント、ヒドい中毒になるそうです。重い脳症になるとかで。ちなみに苦くて味はよくないそうにも関わらず食べてしまった人もいるわけで。冬中夏草とでも思ったのですかね……。まあこういうこともあるので、「囓っても吐き出しておけば大丈夫ですよ」とも言えなくなりました(笑)。
――草花だと簡単に死に至らせるトリカブトのような猛毒がありますが、きのこにはあるのですか?
小林●いや、きのこにはそれほど即効性のある毒のものはないと思います。トリカブトは中枢神経をマヒさせて呼吸困難に陥るのであっという間に死に至りますが……。きのこではそんな速効の毒はありませんね。ですから『きのこ殺人事件』は無理なんですね(笑)。
――はははははは。きのこによる完全犯罪はなかなか難しい、と。
小林●そうですね。相当長く苦しませることになりますので、その最中に「あいつのきのこだっ」とバレるはずです(笑)。お隣さんに山のようなきのこをお裾分けして、その翌日「おいしかった?」って。「ああ、おいしかったよ」って聞いてから自分の家で食べたなんて笑い話もありますよ。ははは。
 

★描いてみる、これがきのこを覚える早道
 

――最後にうかがいます。小林さん、長いキャリアを積まれてもなお、「これだけは描いておきたいっ」というきのこはありますか?
小林●はああああ……それはいっぱいありますよね。
――あ、やっぱりそうですか(笑)。
小林●きのこの種類だけでも6000種類以上とかそれくらい……これは日本にあるものだけと言われていて、万に近いという話もあります。いくつあるのか分類も進んでおらず、分類されているのになるとまだ数千くらいなんです。ですから山できのこを探すと、やればやるほどわからなくなってしまって……でもぜひ出会って描いてみたいきのこはやっぱりあります。
――なんですか?
小林●日本にはない欧米のきのこですと、ボレトウス・サターヌスという“悪魔のイグチ(猪口)”と言われているすごい派手なきのこがあるのですよ。日本にもあるという人や似たようなのがあるという人もいるのですが、ちょっとわからないんです。
――なかなか刺激的な名前ですね。
小林●もちろんそれ以外にも、華やかなゴージャスなきのこは魅力的なのですけれども、最近ではどんなきのこでもいい感じになって来ましたね。
――はい。

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小林●一回描いたからもう描かなくてもいいというものでもなくて、生えている環境であるとかきのこの状態とか、描きたい気持ちをそそられるというのがありまして。まあ、ベニテングダケなんかは綺麗ですから何回も描いていますけれども、そうじゃなくて本当に地味な、興味のない方ならば「これのどこがいいの?」と言うようなきのこも相当描いています。ですから、ベニテングダケは好きですけれども、どれかひとつで上げるというのはちょっと違います。やっぱりどのきのこにもそれぞれよさがあると感じていますね。
――なるほど。
小林●……では私からも最後によろしいですか。
――どうぞどうぞ。
小林●もしもきのこに興味があって、きのこのことを覚えたいという方がいらしたら、下手でもなんでもいいので描いてみるとすごく覚えます。写真もいいと思いますが、絵の場合は何日も掛けますし、そのきのこがどう変わっていくかも見ることができます。そうしますと、きのこの名前などはイヤでも頭の中にありますよね。そうやって自分で描いたきのこについていろいろと覚えていけるのです。
――たしかにずっとひとつのきのこに付きっきりでしたら覚えますよね。
小林●もし山や公園できのこを見つけたら、簡単なスケッチでいいからされてみて、そのときに名前はわからなくてもそれなら図鑑などで調べて、それがだんだん溜まってきたときには、きっときのこに愛着を感じられるようになっていると思います。
――どうもありがとうございました!
小林●ははは、最後の最後に宣伝っぽくなっちゃいましたね(ニッコリ)。

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構成・松本伸也(asobist編集部)











読み物 VIVA ASOBIST   記:  2012 / 01 / 01

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