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Vol.79 村山由佳
――直木賞作家が語る新作、そして"壮絶"作家稼業

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【プロフィール】
村山由佳
1964年東京都出身。作家

日本大学文学部卒業後、会社勤務、塾講師などを経て91年に童話『いのちのうた 』で環境童話コンクール大賞、小説『もう一度デ・ジャ・ヴ』で第1回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞佳作をそれぞれ授賞。2年後の93年の『天使の卵―エンジェルス・エッグ 』で第6回小説すばる新人賞を受賞し、一気に頭角を現す。
当時の作風から長く「切ない恋愛小説の旗手」と称されていたが、これまでと違った家族像、家族愛を描いた『星々の舟 』で03年直木賞を、09年には夫との関係の悩みから男性遍歴を重ねる女性が主人公の『ダブル・ファンタジー 』にて第4回中央公論文芸賞、第16回島清恋愛文学賞、第22回柴田錬三郎賞を受賞。作家としての地位を不動のものとした。
近著『天翔る 』も好評。


あなたは“いつ”の村山由佳を知っていますか。
『天使の卵』のときですか。それとも『ダブル・ファンタジー』のときですか。
もちろんどちらもご本人の作品、でもこの真逆な作品が生み出されたそのわけ、とは?
直木賞作家が送る壮絶すぎる作家稼業、そして新刊『天翔る』のおはなし、
どちらも読み応え、ありますよ。
さあ読んでくれ!



――私たち「あそびすと」は無料で読める読み物のサイトでして、その中に“大物”が登場するインタビューコーナーがあります。まあ、このコーナーのことになりますが。
村山●あはははは。
――これまでは登山家や冒険家の方がメインだったのですが、ここ最近は作家の方にも多く登場いただいております。そこでまさか芥川賞作家に続いて直木賞作家が来るとは読者さんはもちろん私も思っておりませんでした。
村山●そうですか(ニッコリ)。
――島清(しませい)恋愛文学賞作家さんに至っては二人目です。今回は村山由佳さんにお出でいただきました。ありがとうございます。
村山●こちらこそ。よろしくお願いいたします。ところで島清恋愛文学賞の方はどなたですか?
――小手鞠るいさんです。
村山●あー……っていけない、小手鞠さんの本の解説、だいぶ前に頼まれてたの忘れてた(笑)。
――このインタビューも多少の役に立ったようで安心しました(笑)。さて、それはともかく新刊の『天翔る』、拝読させていただきました。
村山●ありがとうございます。
――こういう感想は大変チープな感じがしますが、本当なので仕方がありません。各レグ(各章)、最後に必ず泣いておりました(笑)。
村山●うわわわわ、ありがとうございますっ。なによりです。
――いまこの現場に来る際、何気なく電車で開いたページでまた泣きました(笑)。
村山●ふふふふふふ。
――もちろん『天翔る』のお話しはゆっくりうかがうとしまして、まずは村山さんのお話を聞かせていただこうと思います。改めましてよろしくお願いいたします。
村山●お願いいたします。

「本を書く人になりたい」から「作家として生き残れたかな……」と思うまで

murayama02.jpg――何度も聞かれておられることだと思いますが、村山さんは以前から作家さんを目指しておられたのでしょうか。
村山●そうですね、子供がよく「大人になったら何になりたい?」と聞かれたときに、お花が好きならば「お花屋さん」、ケーキが好きならば「ケーキ屋さん」と言う……。それと同じようなノリで、私は本が好きだったので「本を書く人になりたい」と言っていました。
――おおっ。じゃあ作文の授業も好きなほうでしたか、やはり。
村山●書くのは苦にならなかったですよね。格段に運動が出来るわけでも、絵が描けるわけでも歌が上手いわけでもなかったので、人から褒められるのは作文くらいでしたね。
――褒めていただけるのはもう素養、才能ですね。
村山●「褒められたい」ということで書いていた時期はありましたね。……でも「本を書く人になりたい」とは言っていましたが、そのためになにか勉強をしたとか、だからこそ文学部を出たとかそういうことではなくて、中学や高校の時代は大学ノートにちょっとした小説を書いて、友達と回し読みしてその感想を聞くのが楽しかったんですよ。それにしたってその書いている瞬間が楽しいってことで、なにか努力しようとかではないんです。何事にも「なにかのために努力しよう」っていうのができませんで(笑)。
――はい。
村山●それで大学時代ですが、体育会系のアーチェリー部に夢中になってしまったので、パッタリ書かなかったんです。大学の4年間と就職して……3年くらいかな。
――7年の月日が流れました。
村山●その約7年のブランクのうちに結婚して、しばらくしてから家に入ってみたんですが、そうなると社会との繋がりを失ってしまったというか、丸腰になってしまった気がしたんですね。結婚してしばらくは働きに出ていたんですけれども、夫婦間の時間的すれ違いが大きかったから家庭に入ったんですけれどもね。それで、家にいながらにして社会と繋がる方法ってなんだろう……? って、買ってきたのが『公募ガイド』(笑)。
――村山さんが『公募ガイド』を買ったことにつきましては、あるインタビューで「賞金に目がくらんで」とあった気がします(笑)。
村山●はいはい、まあその通りでして(笑)。最初は“賞金1000万円、必ずドラマ化!”みたいなものに……そういうのってミステリーが当然多いじゃないですか。で、それまでミステリーなんか書いたこともないのに「人が死ねばいいんだろう」みたいなノリでやってましたね。
――わかる気がいたします。
村山●最初のうちは最終選考の一歩手前くらいまでは残るんですけれども、そこ止まりでした。なので違うものを書いてみようとガラッと変えてみたのが……『天使の卵―エンジェルス・エッグ』(当時は『春妃―デッサン』)。
――93年の小説すばる新人賞ですね。
村山●私が第6回ですから……その前は花村萬月さん(第2回)とか篠田節子さん(第3回)が授賞されていますね。
――村山さんは91年に環境童話コンクール大賞ですとか、賞でも佳作などを取られていますが、文字通り“新人賞”という賞の受賞というのは、いったいどんなハレの場になるのでしょうか。どうお感じになられましたか?
村山●最初の挑戦だったんですよね。小説すばる新人賞に応募したのは最初、という意味ですが、当時はなにもわかっていませんから、この授賞によって注目されたらこれから順風満帆、みんなが注目してくれている……みたいな錯覚を起こすわけですよ。
――錯覚、ですか。
村山●でも、授賞式が終わってみると自分が中心の世界は消え失せるのですよ。作家の方はよく言いますけれども「作家になるよりも作家でいるほうがはるかに難しい」。
――はいはい。
村山●やはりその次、三作目……賞の力なしに本を売っていかなくてはなりませんからね。毎年毎年、多くの新人が出てくるわけですが、中にいると生き残るのがどれだけ厳しい世界か……。二作目を出せる作家のほうが希有、というくらいですよ。
――うーん、すごい……。
村山●ですから最初はホントにがむしゃらでしたよ。もしかしたら生き残れたのかな……って思え始めたのは、第一回目に思え始めたのは新人賞から5年後くらいですか。最初の関門は突破したかな、というのは……。
――厳しい決意と思いですね。
村山●いくらか「村山由佳」という名前で原稿を欲してもらえるというか、そういう物書きとしていちおう認知していただけたのかな、といいますか……。
――賞を取ってデビューされてその後の厳しさというのを、もはやお笑いにされている作家さんもおりますしね。
村山●そうですね。
――その作品で「(新人賞受賞後に)え、会社辞めてきちゃったの!?」って編集者さんが狼狽するシーンをよく覚えています。
編集氏▲「え、会社辞めるんですか? なにか辞めなきゃいけない事情が!?」とか聞いてしまいたくなります(笑)。まあものすごく忙しいお仕事で、書く時間がないということだったりするんですけれどね。
――なるほど(笑)。
村山●私たちの時代はまだよかったんですよ。バブルの名残もありましたし、出版不況でもなかったですから。「会社辞めた? それは思い切ったね」くらいでしたが、いまは……(笑)。
編集氏▲逆に“辞めなきゃダメ”みたいな時代もありましたけれどね。それくらい背水の陣でないと、って。
――時代によっていろいろな考え方がありますね。
編集氏▲そうですね。

直木賞受賞で逃げられなくなった!? 作家という壮絶稼業

――さて、『天使の卵』から5年経って最初の関門を突破しました村山さんに、そのまた5年後に大きな出来事がやってきます。
村山●そうですね。ちょうどいまから10年前にもなりますか。
――03年『星々の舟』で直木賞を受賞されます。日本文学における一方の最高峰という賞ですが、壁を越えた5年間を含むデビューからの10年で直木賞に辿り着きました。
村山●『天使の卵』という小説は若い主人公の、非常にシンプルな恋愛小説です。しかもラストは……読んでいただくとして(笑)、最初でなにもわかっていないから書けた小説だよね、って思います。いまだったらベタでとても書けないですよね。
――作者が言う“ベタ”がどうベタかは作品をご覧ください(笑)。
村山●最初、村山由佳といえば“切ない恋愛小説の旗手”であるとか、一方でそれこそ“ヤングアダルト”の小説を書き続けたところがありますが、こういう言葉で言うことが適切かはわかりませんが、「軽く見られる」。文芸の世界ではそんな印象が強かったですよね。
――うーん。
村山●それがたまたま売れてくれていたってことが、後々に“スケベオヤジ”みたいなことを書くようになるとはいえ、ドンドンドンドン自分が新しいことに挑戦して書いているのに、どうして“切ない恋愛小説の旗手”という形容詞がついて回るのか……私の野心と比べてみると正当な評価がされていない……? という時期が5年目から10年目の間の時期にはありましたね。
――「○○と言えば△△!」みたいなのってご本人からしたら裏腹な部分もあると思います。
村山●そうですね。賞のために書いているわけではないですが、きちんと評価をしてもらいたいとは思いました。それでようやく……たまたまそこで賞をいただいたのが『星々の舟』でした。いままで私が書いていた小説とはちょっと読者層が違う、それまでの基準からしたら挑戦して書いた小説ではありました。
――はい。それが直木賞という評価をいただいたわけです。
村山●作家になりたいとは思っていましたが、直木賞授賞などは思っていなかったので、人ごとのようにビックリしました。これでこの職業からは逃げられなくなった、と思いました。
――5年前には「続けてこられた」、そう思っていたのが「逃げられなくなった」になりました。
村山●そうですね。それまで私が経験した仕事って多くて……飽きてしまうんですよね。2年半か3年続いた時点で「小説家がいちばん長いな」って思ったくらいで(笑)。それが10年続いて、しかもこうなって、これで辞められなくなったな、って。ここでもし辞めたらこれまで支えてくれた人に後足で砂を掛けて行くような感じですよね。責任を負ってしまった、といいますか……。
――一大看板ですしね。
村山●賞を汚すようなことになっちゃうといいますかね、はい。
――しかし、村山さんからしたら挑戦した、新たなステージとして書いた小説が直木賞を受賞するというのは、やはり村山さんと文章に力があったということなんでしょうね。
村山●そうなんですかねえ。ただ、小説すばる新人賞もそうでしたが、直木賞も(ノミネート)1回で賞をいただけたというのは、自分の性格で考えたらなんとラッキーなのか、と。

murayama03.jpg――はい?
村山●いや、すごく打たれ弱いんですよ(笑)。
――それはたとえば「直木賞に7回目のノミネート」であるとか……。
村山●うわっ、もう信じられないです(笑)。「もうけっこうです……」って言っちゃいますよ。もちろん、それぞれにご事情があることかと思いますけれども。私は耐えられないです。
――“一発ツモ”でないと大変なわけですね(笑)。
村山●“ラッキー、裏ドラ乗ってら”くらいのもんです(笑)。
――“裏ドラ”って(笑)。でもそこを引き当てるのが村山さんの凄みかもわかりません。
村山●私のいちばんの才能は「引き当てる運」かなって思うんです。これは経験ではなくてですね、デビューの時にも小説すばる新人賞でも、読んでいただいた方が渡辺淳一さん、五木寛之さん、田辺聖子さん……文学史に残るような重鎮の人たちだったんですね。そこでなにかの折りに渡辺淳一さんが「自分より才能がある人はたくさんいたけれども、運が足りなかった」とおっしゃっていたこともありますよね。
――いま渡辺淳一さんのお名前が出ましたが……それで思い出してはいけませんけれども(笑)、『天使の卵』の村山由佳を読んでから、島清恋愛文学賞を授賞した『ダブル・ファンタジー』などに移ってくると、それこそ村山さんの“挑戦”よろしく、豊富な男女関係が話に出てきます。
村山●はい(笑)。
――たとえばそれって『天使の卵』を読んでいた人からは「村山由佳は変わった」というように捉えられることもあるかもしれませんよね。
村山●それはそうですよね。でもそれには長いいろいろな葛藤がありまして、たとえばさっき“ベタ”でと言ったようにがむしゃらに書いてきて、作家としてなんとかやっていけるかなと辿り着いたときに、「自分が書いているのに自分が書きたいものじゃない」というのは矛盾していると思うわけです。だから自分が書きたいものを書いてみたら、それが賞という評価をいただけた反面、「もう読まない」と言う人もいると思います。
――はいはい。
村山●ここからそれだけ路線を変更して生き残れるかな、というのは思いましたよね。そういう人の評価は人一倍、実は気になるのですけれども……それでも“後ろ指を指される”作家になる、と思いました(笑)。
――壮絶な決意ですが、路線を変更するというのはそういうことですからね。それで村山さんが書きたいものを書いているのならば、読者は幸せということですね。
村山●それならいいのですが、逆に人の世の幸せは作家にとって不幸せなんですよ。
――え?
村山●たとえば私は長いこと海の近くに住んでいたんですが、朝起きて恵まれた自然や生活があると思うとホントに書くことがないんですよ。トゲトゲしたものがないと。
――逆になだめられてしまっているわけですね、幸せに。
村山●幸福だと思えることを排除していくわけですよ。周りからは理解はされないでしょうね(笑)。
――いや、繰り返すように壮絶なお話しですが、それくらい“後戻り出来ないようにした”って村山さんの手段でそれこそビックリしたのがあるんですが……。
村山●はい?(笑)
――いや、彫り物……ですよね。解説しますと、村山さんには胸や“普通の人には見られない場所”に蝶々がおられます(笑)。
村山●はははははは。まあいろいろ理由はあるんですけれどもね。とりあえず何事にもキーワードは「おバカさん」でいいと思います(笑)。
――いや、だから壮絶です。お見それいたしました(笑)。
村山●小さいときからちょっと“暗いモノ”に憧れること、ありますよね。そんな感じです。おかげさまで温泉にも入れなくなりました。
――ああああ、もう突き進んでいくしかないわけですね。
村山●そうですね。なんかやっぱりね、いい人ぶっちゃう性格なんですよ。「お前、腹の中で何考えてるんだよ」って自問自答して、そうなるとわかりやすい印を付けたくなっちゃうんです。「この一行が無くても成立する、でも、誰かを傷つけることがわかっていても、凄みが増すのならこの一行を入れる、入れたい」……物書き至上主義じゃないですが、そこまで自分の作品に対してそこまで貪欲になってしまう自分がいると認めないと、もうやっていけないんですね。
――はい。
村山●なら辞めちゃうって人もいるでしょうけど、私はまだこの仕事を続けたいですし、辞めるわけにもいかなくなっていますからね(笑)。それでたまに「おバカさん」がでてしまうわけですよ、ははは。

『天翔る』に現れた“新生シロ村山”の意義

murayama04.jpg――さて、どこまでも壮絶な村山さんばかりでなく、『天翔る』のお話しをうかがわないといけません。長距離を走る乗馬の競技『エンデュランス』を通じて、少女まりもとその周囲が、それぞれが持つ様々な“傷”をさらけ出しつつ、葛藤し、成長していく長編です。本の帯には「構想14年」とありますが……。
村山●そうですね。直木賞をいただくだいぶ前になりますね。このエンデュランスを特集しているドキュメンタリーを見たのですが、物語の後半にも出てくる『デビスカップ』のことだったのですね。そこには様々な事情を抱えた家族なり、親子なり、個人なりがその境遇のまま挑戦をして、それで何かを得る人もいれば挫折する人もいる……非常によくできたドキュメンタリーで、これは小説になるなと思いました。
――私は『天翔る』を読んでいますが、そのあらすじかと思うほどの内容ですね、そのドキュメンタリー(笑)。
村山●で、最初からアメリカが舞台じゃ誰も読まないなと考えまして。最後のデビスカップにどうやって持っていったらいいだろう、それに“馬に乗る”というのも一般の人にはちょっと遠い体験ですよね。
――それはそうですね。身近な気もするんですが、以外と遠い。
村山●だから「馬っていうのは……」というのを私がいちいち説明する形では、読者さんもイヤでしょうし、小説としても下手な書き方なので、馬に衝撃を受けて馬に乗ることを覚えた少女を描写することで、読者も自然に感情輸入できるように考えました。
――これは直木賞前、というのもあるのかもしれません。どちらかというと『天使の卵』のような思いで読み進めて、終わりました。
村山●はいはい。
――さ、いつドロドロしていきますか、と。しなかったわけですけれどもね。
村山●あははははははは。そうですねえ。それは私の問題と言うよりも登場人物のキャラクターの問題がまずありましょう(笑)。
――そうでしたねえ、数人を除いてあまりにも純真でした。
村山●志度と貴子さんとのやりとりなんて小学生でももうちょっと進んでいますよ。
――山田獣医が話を進めにかかるんですけれども……まあこのあたりは本書をご覧ください(笑)。
村山●わかっているくせにねえ二人とも(笑)。まあそれにしましてもね、思いついたのは十数年前、あれは私が“シロ村山”のとき……。
――“シロ村山”、名言でましたっ。
村山●それから紆余曲折あり“クロ村山”の時代がありまして、それを一度通ったからこそ……「世の中こういうキレイなものだけを見ていたい!」って思いだけで書いたのではなく、自分の足がドロドロに汚れた後だからこそ、泥沼の中から星を見上げるというようなものを書きたいと思っちゃったんですかね。
――なるほど。一度は闇……闇といいますか、逆の道を通ってきたからこそさらに輝いている。
村山●かつて私の青春小説を読んでくださっている方が原点回帰のように受け止めてくださるのもOKですし、近年の“クロ村山”時代から読んでくれている方が、「こんな作品も書くんだ」と真剣に思ってくださるのももちろん嬉しい。ですからただの“シロ村山”ではなく、“新生シロ村山”ですよね。単なる原点回帰ではなく。
――“シロ”も“クロ”もどちらかだけでなく、両方持っていて今回は“シロ”なんてほうが“シロ”が際立ちますよね。
村山●人間ってキレイなものだけ見て生きていけるわけではないですし、逆もまたそうですよね。「人生、そんなに悪くないよね」ということを、人生の悪い面をいっぱい見たあとで肯定してくれる物語があったら、人が本当に深いところで力になれるんじゃないかなと思います。
――登場人物は全員、人生の悪い面が描かれていますもんね。そこからの救いを切望しながら読み進めました。
村山●ありがとうございます。
――実のところ……読み終わってから村山さんが言う“シロ村山”の作品だなと思って、今回は“クロ村山”じゃないというのが、読後感としていいのか悪いのか判断できなかったんですよ。でも、今おっしゃったとおり、“シロ”も“クロ”もあるからこそ“シロ”が際立つ……私が各レグで必ず泣いたことが、いまストンと腑に落ちました。
村山●はいはい。
――理沙さんが出てくるところで、心ざわめく自分がいるんですよ。
村山●ざわめいてください(笑)。
――“クロ”な結果を予想しつつ、それが“シロ”で終わる。あーよかった……っでホッとしてダーッと落涙、みたいな感じです(笑)。
村山●登場人物が抱えている傷というのは、実は解決している人は誰もいないんです。貴子は男の人がみんな怖くなくなったわけではないですし、志度だって牧場が大繁盛したわけではない。まりもだってようやく学校に行けるようになったけれども……という状況ですよね。でも彼らが一歩踏み出して「まりものために何かをしてやれた」という、「誰かのためになった」という思いがその人を大きく支える、ということではないでしょうか。
――そうですね。その思いが全編にあって、そして章末で爆発する感じでした。
村山●喜んでいただけたら嬉しいですね。
――となると、この純真なみなさんがより大きく支え合ってどんどんいい話になっていく……ヤボなんですけれども続編を期待したいですね。
村山●あ、よく言われますけどね。ははは。でも今決まっていることって来年と再来年にひとつずつ仕事が決まっているってだけなんですよね。
――え、そうなんですか?
村山●まああまり決められないところもあるんですよ。明日とかあさってもわからないのに数カ月後なんて……というところでして。それでもその決まってないのを力に進んでいこうとするのが「おバカさん」なんですけれどね(笑)。
――それじゃあぜひ『天翔る』の続編もどこかで決まってほしいですね……って、今度は“出てくる”かもわかりませんね(笑)。
村山●寝た子を起こしたように“クロ村山”が(笑)。ありえますねえ(ニッコリ)。タイトルは『地を這う』とかになりますかね、ははは。
――聞いていて怖いな、と思い始めました(笑)。これからも“シロ村山”、“クロ村山”を操る作家・村山由佳の作品を楽しみにしています。今日はありがとうございました。
村山●こちらこそ。

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読み物 VIVA ASOBIST   記:  2013 / 06 / 26

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