VIVA ASOBIST

Vol.81 八木名恵(Nae)
――"氷"を目指した哲人女性クライマー

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【プロフィール】
八木名恵
1984年大阪府生まれ。プロ・アイスクライマー

幼少期より山登り、そしてクライミングに親しむ。
01年の第6回近畿高校クライミング大会に優勝、その後のことを考えれば当然のように連覇した02年は、マレーシアで行なわれたアジアユース選手権でも3位入賞を果たし、“女子高生クライマーの星”として勇躍登場する。
高校卒業後、日本オリンピック委員会が将来のオリンピアン育成のために主催するJOCジュニアオリンピックカップ・ジュニアの部で優勝、国民体育大会成年女子の部2位(ともに03年)、第7回JFAユースチャンピオンシップ優勝(04年)、アジア選手権8位(05年)、日本各地での多くのカップ戦なども含めて好成績を残し続ける。
次世代のクライミング界を背負って立つクライマーと目されつつ、09年シーズンよりアイス・クライミングに徐々に軸足をシフトしている。「競技をして生きていく、食べていこうとしたときに、自分がトップに立てる場所を選んだ」と語る。 大学卒業後はパチンコ店経営の株式会社マルハンに所属。日本初の実業団クライマーとして活動、2013シーズンよりプロの道を選択し、日本人で初めてアイスクライミングのワールドカップ全戦に参戦中。

ボルダリングジム『Rock&Wall』八木名恵公式ページはこちら

当コーナーではおなじみ、クライマーの登場ですが、今回はちょっと異色です。
メインフィールドは“氷の壁”、氷壁を登るクライマーに話をうかがいましょう。
プロ・アイスクライマー八木名恵。
彼女がクライミングを、そしてアイスを選んだ理由とは?
“Nae的クライマー哲学”がアックスの如く振り下ろされる、
さあ読んでくれ!



――今回はアイスクライマーの八木名恵(以下Nae)さんにお話をうかがいます。
Nae●こんにちは。よろしくお願いいたします(ニッコリ)。
――先日、八木さんがアイスクライミングしている動画をyoutubeで見つけまして、朝まで見ちゃいましたよ。
Nae●ありがとうございます。でも朝までは見ないほうがいいですよ(笑)。目にも悪いし......。
――ははは。

yagi_ex.jpg16歳の女子高生がクライミングを選んだ理由

――さて、Naeさんといえばフリークライミングのユースチャンピオンをはじめ、フリークライミングでもご活躍されていましたね。Naeさんが壁を登り始めたきっかけを教えてください。
Nae●そうですね......私の場合はけっこう特殊だと思うのですけれども......。
――特殊?
Nae ●はい。小さなころの夢って、例えば、「お花屋さんになりたい」とか「ケーキ屋さんになりたい」とかありますよね。私の場合は「スポーツで"ごはん"が食べたい」だったんです。
――いわゆる"プロスポーツ選手"ですね。
Nae ●もともと陸上競技をやっていたのですが、16歳の時に「自分は陸上競技じゃ、"ごはん"食べていけない」って思ったんです。そのとき私が、世界で戦えるスポーツ種目を探して思いついたのが、自転車とフリークライミングだったんです。
――自転車? なんか意外ですね。
Nae●自転車は『ツール・ド・フランス』とかすごい好きなので、本気でやろうかと思ったんですが、家が自転車もろともバイク禁止だったんで、まず自転車が買えませんでした(笑)。
――あらら(笑)。
Nae●クライミングのほうは、山に登ったのも小学校の行事で金剛山に登ったくらいしかなかったんですけどね(笑)。それでフリークライミング競技から入って、いろいろな大会に出ているうちに、将来をクライミングにかけたいな、と思ったんですね。そんなきっかけですから、フリークライミングじゃなくてもよかったのかもしれません。でもフリークライングのおかげで大学へスポーツ推薦で進学できて、さらにフリークライングのおかげで就職できたんで、間違いではなかったと思います。

「日本唯一の実業団クライマー」として

yagi3.jpg――就職されてからは、「日本唯一の実業団クライマー」といわれていましたね。
Nae●そうですね、"たぶん"という言葉付きでしたけれども。でも"日本で唯一"は間違ってなかったはずです、たぶん。あっ(笑)。大学を卒業して就職活動の際に、クライミング選手として売り込んで、採用していただきました。
――ご自分で?
Nae●はい。自分で企業に売り込みました。実業団ですので正社員としての通常勤務の契約もあるんですが、クライミング選手としての契約との2本立てと考えていただければ良いかと思います。
私にとっては、とてもありがたい存在でした。そこに所属することで"日本で唯一の実業団クライマー"というキャッチフレーズとともに活動することもできましたし、それが私のスタイルだと考えてやって来ましたし、なにより"ごはん"食べることが目標ですんで(笑)。
――アイスクライミングは2009年からはじめられたようですが、きっかけを聞かせて下さい。
Nae ●それには結婚したことがあります。
――え。ご結婚が。
Nae●2009年に結婚して、私は25歳で、旦那は14歳年上の39歳で大学院生だったんです。で、生活は私が支えなければならなかったんです(笑)。
――ほうほう。
Nae●クライミングでの賞金や、世界ランキングを上げてお給料を上げるにはどうしたらいいか、と考えたんです。一般社員の方には営業成績という数字の評価があるように、私の場合は世界ランキング何位といった数字が評価対象になります。会社にとっては、どんな競技であっても(フリークライミングでもアイスクライミングでも)、世界ランキング上位のほうが評価は高くなるわけです。......そう考えたときに、導き出された答えがアイスクライミングだったんです。つまりいかに稼いでいくか、生活をしていくか、という。
――なるほど。失礼な言い方かもわかりませんが、"ライバル"が少なければ自分が上に行ける可能性は高い......。
Nae●いえ、正直なところそういうことです。私にとってクライミングは、自分の身体を使ったビジネスなんです。
――それで昨シーズンからアイスクライングワールドカップツアー全戦参戦というスタイルになった。
Nae●はい。ただ、いま私が言った一連の考え......ビジネスとしての考えですが、そういう考えは許容できない方もいるでしょうし、一般受けする話でもないのでいままであまりお話ししていなかったんですけれどね。
――当然、今シーズンも全戦参戦予定ですか?
Nae●はい。ですが今シーズンは、以前から支援してくれる皆さんのおかげもありまして、プロとしてワールドカップ全戦出場予定です。
――皆様のご支援、お待ちしております(笑)。
Nae●あはは、お待ちしています(ニッコリ)
――プロでしたら、今シーズンに好成績を残すなどアピールをすることで、それが来シーズンにも繋がっていくことになりますからね。
Nae●そうですね。そういうことも考えながらのシーズンになるでしょうね。
――ガンガン好成績を残して世界的大企業の目に留まって......ということを夢想してしまいますね。
Nae●あはは。好成績を残すことでまずアイスクライミングをする人が増えてほしい、というのはあります。
――Naeさんは「アイスクライミングをする人、知っている人が増えてほしい」とおっしゃっているわけでして、ビジネスとしての挑戦だけではなく、アイスクライミングという競技を掘り起こす挑戦をされているのだと思いますよ。
Nae●そう言っていただけると嬉しいです(ニッコリ)。
――朝までアイスクライミングの動画を見てしまう人も増えますよ。
Nae●朝まで起きちゃうのはいいとは思いませんけれどね(笑)。

アイスクライマーNaeの「負けない競技者生活」

yagi_03a.jpg――Naeさんはクライミングの世界で生き残るためにアイスクライミングをまず選んだわけですが、今度はアイスクライミングで稼ぐ、生活するというのはアイスクライミングの世界で生き残る必要がありますね。
Nae●はい、そうですね。競技者として「勝ちたい」と思うことは当然です。ただ、「生き残る=負けない」と考えると、負けないことってすごく難しいんです。
――勝つのではなく負けないこと、ですか。
八木●はい。以前に麻雀に関する本を読んだのですけれど、そこに書いてあったのが「"負けないこと"がいかに難しいか」ってことだったんです。
――雀鬼・桜井章一氏ですね。
Nae●あっ、そうそう(笑)。それです。
――桜井氏の勝負論に影響を受けるスポーツ選手、すごく多いですよね。卓球の平野早矢香選手は直接話を聞きに行ったそうですし(笑)。
Nae●そうなんですか(ニッコリ)。私が読んで印象に残っているのが"負けないこと"で、たとえば野球のピッチャーは点を取られなければ負けない。負けないように仕事をしている人たちです。
――それでいてピッチャーがボールを相手バッターへ投げないことには試合も進まない。野球というのはピッチャーが試合を動かしていると言えますね。Naeさんはアイスクライミング界を動かしつつ、それでいて負けない......アイスクライミング界の投手になるべき存在ですね。
Nae●あはは。そうだといいですけれどね。
――余談ですが麻雀界には「負けたときは麻雀卓をひっくり返してでもカ○を払わない」という格言もありますが、これも負けないための手ではありますね(笑)。
Nae●そうなんですか。アイスクライミングでその手は難しいですね(笑)。アイスクライミングワールドカップツアー開催中は一定のメンバーが、毎週場所を変えて激闘を繰り広げるのですが、総合ランキングを上げるためには、1回勝つことよりも負けない戦い方が重要だと思います。ラウンドを重ねるごとに顔見知りになり、最終戦が終わるころには皆お互いを労い別れを惜しむ時、国境や国籍、人種や文化を超えていることを実感して、「良い勉強させてもらったな」と思います。

「冬季オリンピック」とクライミング、その先にある道

――国際的な動きとして、フリークライミングは夏季オリンピック競技種目として採用されるか否か、というところまで来ましたね。残念ながら、2016年オリンピックでは正式競技として採用されませんでしたが、アイスクライミングってのはどうなんですか?
Nae●2014年ソチ・オリンピックが開催されるロシアと、2018年平昌オリンピックが開催される韓国は、アイスクライミングはすごく盛んな国です。
――えっ?
Nae●正式競技には採用されていませんが、オリンピックは開催時に、公開競技や文化プログラムなど、会場周辺でいろいろな"イベント"が開かれます。ロシアはワールドカップチャンピオンシップが開催されるほど、アイスクライミングの盛んな国です。
――ひょっとしたらそのイベントで氷の壁が......。
Nae●はい。作られると聞いています。
――すごいですね。
Nae●そういったことがニュースになったり、Ustreamで中継されたり、youtubeで配信されたりして、多くの人がアイスクライミングを目にする機会が増えてほしいと思います。
――夢が広がりますね。
Nae●平昌でのオリンピックが5年後......競技として採用されていたら最高ですね。文化イベントなどでアイスクライミングを披露する機会もきっとあると思います。一競技者としてオリンピックに関われることも嬉しいですが、私はそこに......。
――はい。
Nae●"母"として関われればこんなに嬉しいことはありません(ニッコリ)。
――......素晴らしいと思います。どうか神様、平昌オリンピック新種目アイスクライミング女子日本代表として、お母ちゃんがアックス振るってガンガン登っている様子をお子さまとご主人に見せてあげてください。
Nae●あはは。ありがとうございます。
――Naeさん、いいお話をうかがいました。今日はありがとうございました!
Nae●こちらこそありがとうございました。

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「Naeさん、『Rock&Wall』に来ていただけます?」
「喜んで! 私の登場予定は『Rock&Wall』のホームページにありますよ!!」











読み物 VIVA ASOBIST   記:  2013 / 09 / 26

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