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Vol.93 和田賢一ふたたび
――ジャマイカ武者修行の先に見た世界、そして驚愕の"夢"

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【プロフィール】
和田賢一
1987年東京都出身、ライフセーバー(式根島ライフセービングクラブ所属)

幼少期から野球に取り組み、将来を嘱望される選手となったが、高校時代にあることでプロ野球選手になるという夢を失う。その後、世界一の選手になるべく様々なスポーツに挑戦している最中に出会ったライフセービング競技の「ビーチフラッグス」でメキメキ頭角を現し、わずか3年で全日本種目別選手権(12年)を制す。現在は日本代表選手として、世界有数の全豪選手権で日本人初となる2位に輝くなど大活躍中。夢の“世界一”は目前に迫りつつある。

前回のインタビューはこちら

Facebook:https://www.facebook.com/kenichi.wada.8


今年のお正月にご登場、世界一を狙うライフセーバー和田賢一再び!
武者修行として出かけたジャマイカ、あの人もいる世界一のチームとは?
そしてその先に見つけた驚きの“夢”の正体とは??
最後まで目の離せないインタビュー、さあ読んでくれ!



――今回は今年1月にご登場から再び、ライフセーバーであり、ライフセービング競技である「ビーチフラッグス」の日本代表、和田賢一さんにお越しいただきました。
和田●こんにちは。ありがとうございます。ところで......。
――はい?
和田●先日おっしゃっていた6000m級の山への挑戦はいかがでしたか?
――覚えていただいておりましたか(テレ笑)。ヒマラヤのアイランドピークを登ってきました。
和田●おおおーっ、すごいっ。
――おかげさまで(ニッコリ)。前回、和田さんのお話しをうかがって私自身が感じていた"山イップス"もなんとかなったかな......って思っています。
和田●それはよかった(笑)。前回、小玉さんも"山イップス"かもとおっしゃっていたのを聞いて、僕の野球でのイップスのように挑戦されている方はみんな同じ悩みを持つのだなあ......と思っておりましたから。
――いやいやいやっ、私なんか和田さんとはレベルが違いますから(慌)。
和田●いやいやいやっ、すごいことなんですよ、6000mって。
――いやいやいやっ(笑)。6000m峰なんてのはヒマラヤではコブのようなものですし、もう精一杯です。
和田●その精一杯が素晴らしいです。またぜひ頑張って挑戦されてください。「登ったぞー!」ってメールくださいね(笑)。
――ありがとうございます。頑張ります......って、そろそろ私の話じゃなく(笑)、本日の主役の話をうかがいましょう。
和田●あ、そうでしたそうでした。ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

wada2.jpg和田賢一ジャマイカ武者修行――100m9秒台の練習の先に

――さて、前回お話を伺ったのは旅立ちの直前、そして元旦の公開時はその現地におられました。
和田●そうですね。
――「和田賢一、ジャマイカへ武者修行へ行く」なわけですが、そこまでの経緯は前回のものを読んでいただくとして、いざ旅立ちから教えてください。
和田●はい。これは実は、なのですが......旅立ちの直前に大好きなおばあちゃん、祖母がですね、危篤になってしまったのですよ。
――なっ......(絶句)。
和田●僕はそんな祖母がいるからこそ、高校なども家の近所にしていたんです。何十年も前からです。もし祖母が亡くなるときに......あ、そのころから亡くなる予定はまったくなかったのですけれどね(笑)。
――はい。
和田●それで出発前に会いに行って、病室を出るときに「これが本当に最後かもしれない......」と思ったのですが、それでもいまの自分はジャマイカに行こうとしている。昔よりも精神的に強くなったというか、人の命というのを以前より理解しようとしている、人は仮に亡くなっても心の中で生きているというのを学んでいたといいますか......。祖母の分も生きよう、ではないですけれどね。
――そんな思いも胸にジャマイカに向かわれたのですね。
和田●はい。ですが祖母もジャマイカから帰るまで頑張ってくれたのですよ(編集部注※おばあさまは先頃お亡くなりになりました。心よりご冥福をお祈りいたします)。......それで飛行機に乗りまして、現地に着いたのは土曜日でした。で、次の月曜日からさっそく練習なんですよ。
――到着して2日間もないままに練習ですか。
和田●そうでした。現地について下見して......としているうちにあっという間に月曜日ですよ。

wada1.jpg――あっという間に迎えられた月曜、そして練習場ですが......。
和田●ええ、それがまあ......なんと言いますか、たとえば私たちって、留学生のような方が来たらけっこうウェルカムですよね、私たち日本人って。
――そう思いますね。
和田●ところがですね、ジャマイカのチーム「レーサーズ・トラッククラブ」に参加した直後、僕は"空気"のような扱いでしたよね。誰も話しかけてくれませんし。
――あああ、海外からの参加者ということで......。
和田●アジア圏からというのもジャマイカの選手たちにはとても珍しかったようですし。オーストラリアの時も多少はそうでしたが、ジャマイカはより孤独なところから始まりましたね。
――もちろんですが、教わるべきコーチの方はいらっしゃったのですよね。
和田●それはもちろん。僕をアテンドしてくれたチームスタッフの方がコーチを紹介してくれて、それからコミュニケーションを取り始めました。「僕は和田賢一です、『ビーチフラッグス』の世界一を......」なんてところです。
――世界一のランナーを擁するクラブでの練習というのは、たとえば「野球は素振りから」みたいな基本から入るのでしょうか。
和田●そうですねえ......「そうあるべきだった」、ですね(笑)。
――「そうあるべきだった」!
和田●そうあるべきですし、実はそれはコーチにも言われていたんです。僕は陸上の初心者なので、「最初から付いていくのは難しい」と。これは後々に知ったのですが......。
――はい?
和田●チームは世界の陸上界でも練習がきつくて有名なチームだったんですよ。まあ世界一なんですから当たり前っちゃ当たり前なんですが(笑)。
――そうですよね、はい(笑)。
和田●ただ、僕はイヤだったんですね。「来たからには同じメニューをやる」、と。なんか悔しかったんですね。
――「ホントか? マジ?? 付いてこれる???」みたいな反応でしたか。
和田●いや、それよりも「止めろっ」って感じでした。
――ノリではなく止められたわけですね。
和田●「危ないし、半分以下でいいから」って。いやいや絶対やるから、って言ったら、「じゃあ今日は300mを10本やるから」と。
――300mを10本......?
和田●すみません、わからないですよね。ただ僕の当時の例を出しますと、300mって1日2本しか走ったことなかったのですよ。だからこれはジョークなんだ、いつか正式なメニューを言われるぞと思っていたら、段々と自然に練習が始まっている。それで「どうやら300m10本だぞ......」って。
――ジョークじゃなかった(笑)。
和田●で、10本のうち段々とタイムが早くなる、スピード練習になってきて、そのタイム設定が100mで9秒台の選手の設定なんです。信じられないくらい早いわけです。
――いやそれって100mの世界記録級ってことですから(唖然)。
和田●これはどうやら本当だ......となって、最初は設定タイムより遙かに遅いタイムですから付いていけてはないのですが、がむしゃらにやっていました。300mで100mくらい差が付いていましたよ。死ぬかと思いました(笑)。
――そんな死ぬ思いをして得たものは当然ありますよね。
和田●得たものはですね、"苦しみ"です、ははは。でもですね、遅いなりに1週間、2週間と早くなっていく自分に気が付くんです。タイムが出ているから一目瞭然ですけれどね。
――おおっ、すごい。
和田●すごいですよ。人間ってやっぱり慣れるのでしょうね。山だってそうですよね?
――いや、そうでしょうけれども比較されたら申し訳ないです(笑)。
和田●僕がやっている競技は20mですから、60m以上ってそんなに走ったことなかったんです。100mと『ビーチフラッグス』も全然違う競技ですから、300mを全力で走ったことなんかなかったんです。だから最初は死にそうでしたけれど、ちょっとずつ早くなっていったのは本当にわかりましたね。
――無茶から入ったことが、そのうちに成果を上げていったのは聞いていても嬉しいですね。
和田●そうですね、ありがとうございます。

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ジャマイカでのヒトコマ
ジャマイカ選手も揺さぶった「意地」

――日本からやってきた選手が段々と早くなっていく。ドラマとしては周りからも「アイツは何者だ?」と見られるようになるのを期待したいですが......。
和田●それはですね......ありましたね(ニッコリ)。そこはタイムが早かったからではないかもしれませんが、チームにウォーレン・ウィアくんという選手がいるんですね。
――ロンドン五輪の200m銅メダリストですね(驚)。
和田●はい。彼が最初に僕を認めてくれたんです。彼はすごいテクニックがあって、彼のマネをして走っていたら速くなったんです。で、海外の人って苦しいな、もうダメだなとなると諦めちゃうことが多いのですが、僕は諦めずに走っていたんですね。そうしたらその姿を見ていた彼が近寄ってきて「お前、ナイスだ! それでいいから頑張れ!!」って。
――オリンピックメダリストから(驚)。
和田●最初にもお話ししましたが、なんか「日本からわざわざ来た......」みたいな視線はあったのですよ、それが見返せたのかな......となったのは嬉しかったですね。それがなんで、どうしてそうなったなのかはよくわからないのですけれどね。遊びでやった『ビーチフラッグス』で「おお、アイツなんかすげえ速いぞ」みたいなこともあったかもしれません。
――さすが本職では蹴散らしたわけですね。
和田●プッシュアップ(腕立て伏せ)なんかも、100m9秒台の選手より僕のほうが全然出来る。「お前なんでそんなにできるの?」って(笑)。そんなことが重なったのでしょうね。3カ月のうち、1カ月目、2カ月目、3カ月目とドンドン変わっていきましたよ。
――聞いていても誇らしい話ですよ。
和田●最初は名前も呼ばれないし、挨拶しても返してもくれなかったのですけれどね。なんか最初呼ばれ出したときはアジア=中国なのか"Chin"なんて呼ばれていたのですが、1カ月目くらいに「僕は"Chin"という名前でもないし、そもそも日本人だっ。呼ぶなら"Ken"と呼んでくれっ」と言いました。そうしたら徐々にそうなって、最後には"Brother"になりました(笑)。
――ブラザー、素晴らしいっ!
和田●そう呼んでくれたのは、最初いちばん素っ気ないヤツだったんですよ。それが最後にはそういう仲になりました。このエピソードは今後もいろいろな席で話したいと思っていますよ、ははは。
――あ、お名前が出ませんけれども、私たちがおそらくいちばん知っているジャマイカのスプリンターといえば......。
和田●ウサイン・ボルトさんですね。"Ken"になってからボルトさんにもよく声を掛けてもらいました(ニッコリ)。お家に招待してもらったり、「Kenはいつジャマイカに帰ってくるんだ?」なんて言っていただきました。あまり一緒に写真などに写ってくれない方なんですが、一緒の写真もいただきましたね。すみません、こちらのはお見せできないので、僕のFacebookなどをご覧ください。
――ボルトさんとの写真を見て、和田さんすごいって声が出ましたよ(笑)。
和田●ジャマイカでは日本大使館の方にもお世話になりました。ジャマイカそして日本のみなさんに感謝です。ありがとうございました。

世界一への道は続く、そして驚愕の「夢」

――さて、そんなジャマイカで学んだ和田さんが『ビーチフラッグス』で世界一になるべく望んだ「全豪選手権」ですが......。
和田●すみません、準決勝で失格となりました。
――それは残念......。
和田●ビーチフラッグスの大会はスタートする前にレフリーが選手一人ひとりの体のポジションを確認するのですが、確認後に僕が手の横の砂をはらった行為が違反とみなされたのです。レフリーの方の正しいジャッジでしたが、他の選手や恩師でもあるサイモン・ハリスさん、観客の人などがそのジャッジに対して思いを言ってくれたのは嬉しかったですね。それに去年の大会ではスタートしか勝負にならないと感じていたのが、今回は20mを走ることでも勝負になったのは大きい......のですが、やっぱり今回100周年となった全豪選手権が"終われていない感"はありますね(笑)。
――「来年こそ!」なんて外野が言うのは簡単ですしね......。
和田●しかしまあ、そこに掛けていた分いまは少し休んで、ではあります。それでまた夢を追い続けたいですね。
――簡単に言いますが「来年こそ世界一!」ですね。
和田●はい。それと「全日本選手権」に10万人のお客さんを呼ぶというのも夢です。10年後には10万人のみなさんに来ていただきたいですね。今年は10月10、11日に片瀬江ノ島で行なわれますよ。無料ですからぜひお越しください。
――和田さんの勇姿、見に行かないといけませんね。

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4月の全豪選手権にて
和田●それと、夢といえばですね......。
――はい?
和田●僕、ジャマイカのコーチに「Ken、君を世界一のスプリンターにしたいと思う」って言われたんですよ。
――?? それって陸上の、ですか。
和田●ええ。だから挑戦しようと思います。2020年の東京五輪で......
――!!!
和田●100mの代表になれるように(キッパリ)。
――(唖然)......和田さん、すごいっ! 『ビーチフラッグス』での世界一、そして陸上の100mでの日本代表入り......こういうときには月並みな言葉がすべてですよ。和田さん、夢に向かって頑張ってください!!
和田●ありがとうございます、これからもよろしくお願いいたします(ニッコリ)。

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「ビーチフラッグス世界一!」に続いては「東京五輪の陸上100m代表!」!?
相変わらず"すごいっ"が一杯の和田賢一から目が離せない......











読み物 VIVA ASOBIST   記:  2015 / 05 / 20

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