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はいコチラ、酔っぱライ部
ライブ ちょっとその前に
2014 / 12 / 16
妻と行くことが多い落語会やライブの会場へ向かう前に二人で「蕎麦をたぐる」のは、僕たち夫婦間の暗黙の了解。「たぐる」は江戸弁。通ではないが落語好きなのでオツをきどってこう言う。
ライブへ行く日の朝、家を出るときに「たぐる?」と声を掛け合うのが合い言葉で、どちらかに他所への立ち寄りがあって、おのおのが直接会場へ向かう場合を除いて「立ち食い」、もしくはそれに準ずる店で蕎麦をたぐる。
会場へ行く前に何かを軽くお腹へ「たたきこんで」おこうと思うのは、夕刻に開演されたライブが午後9時あたりに終演すると必ずどこかへ「呑み」に行くことがほとんどだからで、それがこのコラムのタイトル「酔っぱライ部」の「酔っぱライ部」たる由縁だが、これはその時に「いきなり空きっ腹で呑むのも体に悪かろう」という発想から生まれた習慣である。
その「お腹へたたき込むもの」を蕎麦と決めているのは、時間がかからず簡便で、加えて二人が無類の蕎麦好きだからとはいうものの、サンドイッチやハンバーガーではお腹にたまりすぎてモタレたり眠くなったりするというのが本音で、「蕎麦」を選んでいる本当の理由は、そろそろ60になろうとしている二人の内臓年齢から来る歳相応の習慣、と言える部分もあるのかもしれない。もっとも二人とも30代の頃からライブ前には蕎麦をたぐっているのではあるけれど。
さて、東急沿線に住んでいることもあって会場へ行く起点になるのは渋谷であることが多く、渋谷から半蔵門線、銀座線、JR等々へ乗り換える時に渋谷で蕎麦をたぐることがほとんど。行くのは渋谷駅構内にある「しぶそば」だ。この店からだと店を出てからJRにも銀座線にも乗り換えやすくて便利。愛用しております。
ここは以前「二葉」という名で営業していて、「しぶそば」といえばJRハチ公口の半地下のところにあるきり(この店舗は地下街の火事以後閉店)だったが、2008年にこの「二葉」が「しぶそば」と改称して営業を始めたのを皮切りに東急沿線に営業店舗を広げて、かつての「田園蕎麦」のような存在になりつつある。今いちばんのお気に入りだ。
考えてみるとライブや芝居の見物に通うそれぞれの場所に蕎麦屋を探すのが「習慣」のようになっている。今回は「ライブ ちょっとその前に」のお話です。年越しも控えて気軽に食べられる「立食蕎麦」情報満載。うどんもあるけどね(笑)。
今回は寒い季節に簡単美味しい「豚バラみぞれ鍋」をどうぞ
こと蕎麦に関していうとそれこそ「通」の多い世界だから、念のために書いておくけれどあまり味や質にこだわってはいない。こちらは見物前にお腹が温まっていればそれでいいのである。もちろん愛用する店はまずくないから愛用しているわけで、そのこともいちおう申し添えておく。
というわけで、渋谷なら「しぶそば」、新宿なら「かめや」、横浜なら「星のうどん」、というのが通り相場で、夫婦でこれらでたぐって会場に向かうのがライブ前のひとつのお楽しみ。行く場所によってだいたい行く店が決まっていて、このところとんとご無沙汰の歌舞伎座なら改築前は「歌舞伎そば」が定番だった。
昼の部なら幕間に、夜の部なら開演前に寄るか、あるいは8時頃にある幕間にチケットを持っていったん外へ出て、1階正面玄関脇にある店に入る。
なんといっても「かき揚げざるそば(通称「ざるがき)」が一番人気で、円形に揚げられた大きなそれを小口に手でちぎって丸いざるに盛った蕎麦の周りをぐるりと囲む、という豪快な一品だ。
改装を機にいったん閉店。現在は新歌舞伎座の裏手にあって、僕が観劇中に足を運んだのと同じようにして見物客の人気をえているらしいが、こまったのは改築中だ。歌舞伎興行が新橋演舞場へ場所を移して、この店が一時閉店していたのである。
この時期は建設中の歌舞伎座裏の「小諸そば」か演舞場近くの「ゆで太郎」しかなかったのでしばらくはそこでお茶を濁していたが、演舞場近くに「銀座木挽町うどん 太常(だいつね)」という店を見つけてからは時折ここへ行った。
ここは江戸時代、神田多町にあった野菜の仲卸が八百屋となり、そこの店主が開店したうどん屋だそうで、丁寧な作りにもかかわらず手頃な値段が魅力の店。店の形式はお盆を手にうどんを注文して好きなトッピングを取ってゆくいわゆる「讃岐うどん」方式で、芝居の幕間にしか食べる機会がなかったのであまり多くのメニューを食べたことはないのだが、夜はお酒も呑めるそうで、いつかそんな時間に足を運んでみたい。
ともあれ新装なった歌舞伎座へなかなか足を運べないのがどうにも残念だが、いつかあの小屋へ行ったときには、開演前に「うどん」、そして幕間に「ざるがき」をお腹へたたき込もうと、今から虎視眈々とその機をうかがっているのである。
さて、何度か足を運んだ会場ならこんな風に行く店も決まっているが、未知の土地へライブへ行く場合には当日、あるいはその前日に「地名」、「立食蕎麦」というワードで検索をかけるところからライブへの期待が始まる。先日大塚へ行ったおりにも「みとう庵」、四谷三丁目では「七福弁天庵」という店を見つけて行った。
こんなふうにライブが終わったあとだけではなく前の腹ごしらえも楽しみで、複数の店を見つけてしまったときには悩みも果てないわけだが、その店が「アタリ」だったりすると小さくガッツポーズをしてしまうほど嬉しくなる。終演後の居酒屋で「アタリ」を引いたときと同様である。
もっとも「ハズレ」だったとしてもそれなりに楽しむことができるのは「食い意地の張った呑兵衛」の得意とするところ。他に客のいないただただ広いカウンターだけの立ち食い店で、その「蕎麦という名の茶色いうどん」(口が悪いね でもホントなのよ)を食べる羽目になったときも、カウンタ内の店主から初めて来た界隈の話を聞いて情報収集したりした。
考えてみると、こういう安い店探索で街を歩き回るのはどこか「旅行」に似たところがあって、高級店や有名店目指して車で乗り付け、ただ食べて店を出るだけの食事とは違って、街のたたずまいや味わいを感じることができる。
もし懐と時間に余裕があれば、見物の前にも後にも風情のある店に行って、ゆったりとした時間を過ごしたいと思うのはもちろんだけど、そんなゆとりがないからと言って選んだ「気楽な店」を楽しまないのは、それはそれで何か損をしているようにも思えて、あながち貧乏も悪くないんじゃないかと思う今日この頃なのであります。
ということで「(安)店情報」満載でお送りした今回のかんたんレシピは「豚バラみぞれ鍋」を。かんたん、しかもすぐできて体も暖まる、お腹にやさしくておいしい一品です。寒い日の夜にぜひどうぞ。
てなわけで今年最後の「酔っぱライ部」もこの辺で。なんだかここのところ急に寒さが増してきましたね。風邪っぴき大量発生の噂もちらほら。年末年始、風邪引いてせっかくのお休みを台無しにされたりしませんように。
今年も一年ありがとうございました。どうぞよいお年をお迎えくださいませ。
次回、新春の更新は1月6日の予定です。
【Panjaめも】
●しぶそば
●かめや
●星のうどん
●太常
●かぶきそば
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