インタビュー/記者会見

『剣岳 点の記』監督トークイベント

090306_00.jpg 誰かが行かねば、道はできない…。日本地図作成のために命をかけた男たちの記録、『剣岳 点の記』。『八甲田山』、『鉄道員(ぽっぽや)』等、日本を代表する名カメラマン木村大作氏が初めての監督に挑んだ本作ですが、昨年行われた「GTFトーキョーシネマショー」のトークイベントに監督が登壇し、思いのたけを語りました。


090306_01.jpg 監督:今日はこの映画を理解していただける年齢層のお客さんばかりで嬉しいです。

司会:えっ、どういう意味ですか?

監督:年寄りが多いってこと(会場爆笑)。僕も今、69歳ですから。封切の時は70歳です。人生の週末を迎え、命をかけて撮った映画です。多くの方が観てくださることを願っています。


090306_03.jpg 司会:どうしてこの映画を製作されることになったのですか?

監督:最近は僕の評判が悪くて、3年に1回くらいしか仕事の話が来ないんですよ(笑)。監督の年代も若くなってきて、プロデューサーが僕をカメラマンにとお願いしても、断られちゃうそうなんですよ。3年も遊んでるとおかしくなっちゃうんでね。映画の世界は面白い世界だから離れたくない。だから自分で自分の仕事を作ったというわけです。それから、本物の映画作りはこうなんだ! と、映画界の人間たちに見せつけてやろうと。それに、最近は天候もおかしくて。こういう映画を撮ってると、それはヒシヒシと感じますよ。
この映画のテーマは、「悠久の自然」と「儚い人生」。これは原作からとったのではなく、新田次郎さんの息子さん、『国家の品格』を書かれた藤原正彦さんのご著書から頂戴しました。ご本人には了承いただいてますよ。映画というのは、「人の信条」、感情と言ってもいいんですが、これと「自然の詩情」でできるんです。銀座や新宿のバーには人生はないと、僕は思ってますよ。今の日本人、特に若者は自然に親しむ機会が少なすぎます。それで刺しっこやってんだからさ。大自然の真ん中に立ったときに、そんな、人を殺めるなんて気持ちはでてこない。そういう映画をずっとやってきたつもりです。

司会:以前からエコロジストだったのですか? 煙草は吸わない?

監督:
ぃゃ、1日100本吸います。でも山では絶対に捨てませんよ! そうして環境に配慮していたら、環境庁の方が「そんなに神経を使ってやっていただけるのなら、ぜひいい映画にしてください」と激励されたぐらいで。

司会:CGはやはり、使うのはおいやなんですか?

0903006_04.jpg 監督:やっぱり、現場に立って撮らないと。それから、厳しいところにしか美しさはない。楽なところに美しさなんてない。女性がハイヒール掃くのは何故かって話ですよ。足の線を美しく見せたいからでしょ? そういうことですよ。顔じゃない、姿かたちなんだ。9時間歩いて1カット撮って帰ってくるんだからね。俳優さんは、「歩くのが職業で、撮影は休みだ」って言ってたくらいで。それで自然の髭でボウボウになって、撮る。そういうところから、観客は何かを感じるんですよ。それから、自然の風景というのは待って撮る。それが撮り方というものです。

司会:俳優さんに何かお願いされたことはあったんですか?

監督:日本の俳優は忙しいけどね、「あなたのスケジュールには合わせません。映画のスケジュールに合わせて、2年間で200日、スケジュールをください。それができなかったら今すぐ断って。その返事は、今、帰るまでにください」と。それで受けてくださった俳優陣です。80キロもの思い荷物を背負いながら、山の稜線を豆粒のように歩いている。それを見て感動しない人には、別に見てもらわなくてもいいと思ってるんですよ。渋谷のガングロには見せなくていい(笑)。

司会:今どき、ガングロはいませんよ!(笑)

司会:今回初監督ですが、どなたか他の監督さんのことを思い浮かべたりしましたか?

監督:黒澤明監督だね。いい映画のいい手法はどんどん取り入れたほうがいいし、明言したほうがいい。黒澤監督は超えられないけど、それに迫ろうという意志は持ってる。この映画は、自信があります。僕は監督やりたくて監督をやったんじゃないんだ。映画を作りたくて監督をやったんです。

司会:演技指導はどのように?

監督:あなたが役にピッタリだと思ってキャスティングしたんだから、あなたのそのままでやって欲しい、と。俳優が山を見て、感じることを撮っている。浅野さんは台詞をあまり言いたくない俳優さんだから、言いたくなさそうだったら「言いたくない?」と聞いて、言ってもらわなかったこともある。そのほうが自然でいいんだ。それから宮崎あおいさんには、旦那の帰りを心から待ってる、決して「あなた、いつ帰ってくんのよ?!」と責め立てない、そういういつもニコニコ笑っている、僕の理想の奥さん像を演じていただきました。

司会:撮影は苦行のようでしたが、楽しかったことはありますか?

監督:今ですね。撮影が終わったから。北島康介選手が「無理をしなければ金メダルは取れない」と言っていたけど、この映画も同じ。本当に無理したねー、楽して撮ってないんだよ。何時間もかけて、1カット。

司会:1シーンじゃなくて?

090306_02.jpg 監督:そう、1カット。実は大きな事故もあったんだ。全く安全だと思ったところに落石があって、スタッフが怪我をしちゃった。僕は、この映画は「事故があったら中止する」と言って始めたんだ。だから、その時に8割方撮影は終わっていたけど、もうやめようと思った。そしたら、そのスタッフの家族が「絶対にやめないでください。本人もそれを願ってます」と。そのときは本当、山小屋で泣いたね。


司会:この映画のテーマである「悠久の自然」と「儚い人生」、これをもう少し詳しくお聞かせいただけますか。

監督:儚さというのは、歩いているときに感じるね。悠久の自然というのは、太古の昔からあり、このあともずっと続いていく。全宇宙的に考えれば、人間の一生なんて豆粒ですよ。そう感じたときに、自分が今、どうしなければいけないか考えなきゃいけない。尊敬する高倉健さんが「何をしたかではなく、何のためにするかが大事だと思います」と仰った。いろんな映画を撮ってきた僕への諭しだと思ったよ。そういうことを感じることが儚さだよね。

司会:では、「何のために」この映画を作られたのでしょうか?

090306_05.jpg 監督:僕は人生の終末を迎えてるから、人生の記念としてもね。そういうこと言うと、「そんな映画見に行きたくない」って言われちゃうけど。

司会:
そんなことないですよ!

監督:監督はこの1回しかやりたくないしね。カメラマンのほうが、ぜんぜん楽! 監督は大将で、カメラマンは参謀。その両方を僕はやってるからね。東映さんが仰ってたけど、この映画は唯一無二の映画。後にも先にもこんな映画はない。それに、監督やっちゃったらカメラマンの仕事は来ないよ。

司会:そうなんですか。

監督:女は恋に破れたら山に行き、男は海に行く。次に話が来たら、そういう映画やろうかな。

司会:やるんじゃないですか!(笑)

監督・撮影:木村大作
原作:新田次郎『剣岳 点の記』
脚本:仲間達
出演:浅野忠信、香川照之、松田龍平、宮崎あおい、仲村トオル、小澤征悦、井川比佐志、國村隼、夏八木勲、役所広司
公開:6月20日(土)全国ロードショート
公式サイト:http://www.tsurugidake.jp/
シネマピア:
http://www.asobist.com/entame/cinemapia/0151.php
VIVA ASOBIST vol.51 木村大作 映画史に残る名キャメラマン、監督へ!:
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『劔岳 点の記』監督、キャストら記者会見!:
http://www.asobist.com/entame/interview/090619.php

配給:東映
ジャンル:邦画

(c)2009 『剣岳 点の記』製作委員会











エンタメ インタビュー/記者会見   記:  2009 / 03 / 06

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