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インタビュー/記者会見
「舞台は役者が成長していく場であってほしい、
自身の芝居をアピールしてほしいと思っています」
『VOTE』舞台初演出、谷健二インタビュー!
小劇場で活躍する中野マサアキ・成松修をはじめ、ドラマ『ごめんね青春!(TBS系)』の富山えり子、今回が初舞台となるモデルの根本弥生に、関口アナム、布施紀行、宇野愛海とフレッシュなメンバーが参加。昨年全国公開された映画『リュウセイ』の監督・谷健二の主宰・演出、劇団PU-PU-JUICE主宰の山本浩貴が脚本をつとめる注目の舞台『VOTE』が、5月20日(水)〜24日(日)に下北沢のB1階劇場(本多劇場グループ)で行なわれた。公演終了後の6月5日(金)、今回が舞台初演出となった谷健二に話を聞いた。
■STORY
すべては、その女子高生の1票が決める——。
ある日、絶大なる権力を持つ市長が引退を表明する。
後継者に名乗り出たのは、3人の男女。後継者に選ばれれば、
確実に市長になることができる。欲望渦巻くなか、3人は争いを開始。
しかし、彼らを選ぶのは、なぜか市長のひとり娘の女子高生だった。
彼女は一体、誰に投票(VOTE)するのか? 政治とはなにか?この国の未来とはなにか?
今、誰も見たことのない選挙戦が始まる——!
尾崎●今回は、SEVEN FILM 第一回プロデュース、初主宰・演出ということでしたが、映画ではなく、舞台演出を手がけようと思ったきっかけは?
谷▲以前から役者さんと長い時間しっかり向き合って芝居を作りあげてみたいと思っていたんです。
尾崎●映画ではそういった感じではないんでしょうか?
谷▲映画だと1、2回しかリハーサルをしない時もあって、そういった感じにはならないですね。役者が、今、持っているポテンシャルをうまく摘むのが映画で、役者がすべてをさらけ出さないと作品にならないのが舞台だとなんとなく思っています。だからじっくりとつき合っていかなくてはならない。映画の場合はダメな場面があっても後からカットしてしまえばいいんですよ(笑)。その点、舞台では途中で切ってしまうことはできないですからね。
また、昨年全国公開された映画『リュウセイ』を撮り終えたころから、オーディションやワークショップの機会が多くなり、役者と接することが増えたました。そこで、彼らの演技の成長を手助けできないかなと思った時に、その場としてふさわしいのが舞台なんじゃないかと考えるようになりました。
役者の成長していくところを間近で見ることができ、演出家として自分自身も成長できるといったことも、舞台をやってみようと思うきっかけのひとつでした。
尾崎●今回は選挙がテーマの作品でしたが、それはなぜですか?
谷▲一度、政治を題材にしたものをやりたいと思っていました。さすがに映画ではなかなか難しい題材かなと思ったので、良いタイミングでした。一度一緒にと考えていた脚本家の山本さんが、元政治家の秘書をされていたこともあり作品へとつながっていきました。
尾崎●興味深いストーリーでしたが、その発想は?
谷▲こちらで大筋を考えて、後は山本さんにお任せで作っていただきました。
尾崎●政治家、タレント、一般人といった異なった3人が立候補をするお話でしたが……。
谷▲もともとは、まったく違うストーリーだったんですよ。まず中野さん、成松さん、富山さん、根本さんの4人が決まっていました。その4人のキャラクター(中野=普通の人、富山=個性的な女性、根本=若いギャル、成松=アクの強い人)と被らない3人をオーディションで選ぼうと考えました。オーディションにはたくさんの応募があったんですが、そこから書類選考の後、10人くらいをオーディションしました。最初はその中から、若い男性を中心にストーリーを組み立てていこうと考えていましたが、なかなか決まらなかったんです。そんななか、オーディションで見た宇野さんの芝居が魅力的だったこともあって、彼女を使いたいなって思いが膨らんでいきました。彼女はまだ高校生だったので、政治の話に直接参加させることは難しいということもあり、彼女を使うなら内容を変更せざるをえないなってことになって、最終的にふたりひと組の3チームの物語に。彼女をストーリーテラー(物語の進行役)にしようということになりました。僕は3チームの組み合わせだけを提案した形ですね。中野・根本ペア、富山・布施ペア、成松・関口ペアに決めました。後のキャラクター付けは山本さんにお願いし、そこから脚本が作られました。
尾崎●舞台を拝見して、とても適材適所といった感じを受けましたが、役者のキャラクターから物語を作っていったんですね。
谷▲そうなんです。ストーリーに合わせた配役ではなく、役者に会わせたストーリーを作りました。各役者の見せ場がしっかりとあって、すべての役者自身が舞台を観にきてもらいたいと心底思えるような作品にしたいと考えたんです。今回はそういったところも加味した、それぞれの役者の持ち味が生かせるようなストーリー作りになっています。
尾崎●そう言われれば舞台上で演技している人数がいつも2〜3人と限られていましたね。
谷▲舞台は役者が成長していく場であってほしいと考えています。そういう場に役者自身が関係者をたくさん呼んで、自身の芝居をアピールしてほしいと思っていますので、すべての役者に見せ場があることが望ましいですよね。
尾崎●ひとりひとりの演技をじっくりと観ることのできた作品だったなと思いました。それぞれの役者が引き立っていましたね。
谷▲それも今回の目的のひとつでもあったんです。結果、ひとりひとりの役者ががんばってチケットを売ってくれたんだと思います。その点は本当に助かりました。
尾崎●自分の演技を観てもらいたいといったところの現れでしょうね。
谷▲そうなんですよ。稽古の段階で、自分の芝居をたくさんの人に観てもらいたいという気持ちが大きくなっていったんだと思います。次につながる手応えを感じつつ稽古ができたんだと思いますね。
また、今回はベテランと若手の組み合わせで、若手が芝居を教えてもらう感じになればと思いました。
尾崎●3組それぞれのペアで切磋琢磨してといったところですね。
谷▲さらにベテラン同士で争う形になったら面白いなって。ストーリーもそれぞれのペアの演技とベテラン同士の演技といった形になりました。稽古もしやすいんですよ(笑)。
尾崎●本番を終えての各キャストについて、感想をひとことずつお願いします。
谷▲中野さんとは以前の作品に出演していただいたりと、付き合いが長く、今回は全体の調整をしていただきました。舞台特有の言葉を僕が知らなかった部分もあって(笑)、そんなところも助かりました。彼の場合はイイ意味でブレるので、調整のしがいがありましたね(笑)。
富山さんはドラマ『ごめんね青春!』を観て、演技が上手いなって思っていたこともあって、オファーしました。今回の役は、彼女の中では今までにない役だったそうで、気に入ってもらえたようです。
根本さんは今回、初舞台だったんですが、緊張することもなく堂々と演じていて、他のメンバーとの中でもまったく見劣りしませんでしたね。
関口くんはオーディションの時に雰囲気のある役者だなって感じました。役者を始めてまだ2年くらいだと聞きましたが、度胸がありましたね。この舞台でいちばん成長したと思います。自分の殻を破った感じがあり、おそらく彼が初舞台だったとは、お客さんは気づいてないと思います。
布施くんは舞台経験もありということもあって、すんなりと入ってこれた感じです。小劇場出身ではない彼も、自身の芝居をアピールしたいという気持ちがだんだんと出てきたように思います。
成松さんは年長ということもあって、若い人に師事される良いお兄さん的な役割でみんなを引っ張っていってくれましたので、とても助かりましたね。セリフ覚えもいちばん早かったので、真剣度が伝わり現場が締まりました。彼のおかげでまとまるのが速かったです。
彼と中野さんは「劇団PU-PU-JUICE」の舞台に出ていて、脚本の山本さんとは親しい仲だったことが今回のキャラクターを活かした脚本になったんじゃないかな?
最後に、宇野さんは最初に見た時から、芝居が魅力的だったので、まったく問題がなかったです。ただ、学校の授業が終わってからの稽古だったので、大変だったと思いました。まだ、10代ですがプロ意識の高さが感じられましたね。これからがとても楽しみな方です。
尾崎●本番を終えての初演出の感想を教えてください。
谷▲完全に自論ですが、映画ってどこかの段階で完璧に決めて、それを最後にぼかすといった感じで、そこに監督のカラーが出ると思っています。その点、舞台は初日までの段階で完璧に仕上げないといけない、と。その完璧に仕上がったものを本番で、各役者がぼかしていくものだと思っています。仕上げるところまでは映画も舞台も同じだと思いますけど、舞台は最後に手放さないといけないので、嬉しくもあり、悲しくもありといった感じです。本番に入ってしまうと、今の演技違うからって言えないですしね。セリフも変えられないし映画とは違います。楽しみ方がそれぞれ違う感じです。舞台は最終的には役者のものですね。
尾崎●今後、また舞台の演出をされますか?
谷▲3年に2回くらいのペースでできればと思っています。正直、充実する反面、かなり精神的な負担がありますし……今回は主宰も務めたのということもありましたが……。
尾崎●今後の予定を教えてください。
谷▲年内に1〜2本長編の予定があり、なんとか撮りたいと思っています。今回の経験を糧にして、よりいいものを作りたいと思いますので、みなさん応援よろしくお願いします。
●谷 健二(たに けんじ)
1976年生まれ、京都府出身。SEVEN FILM主宰。大学卒業後に上京後、広告業界で働きながら多数の自主映画にかかわり、2014年からフリーに。遠藤要、佐藤祐基、馬場良馬らが出演した初の長編作品『リュウセイ』(2013年)は、第28回高崎映画祭“若手監督たちの現在”などで上映され、全国劇場公開を果たした。2014年映画監督協会新人賞候補。
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https://lukyou.com/content/detail/2LVEJ36TND5HUL9K
再生時間 1:45:55
金額(税込) ¥ 1,080
購入期間 2015/06/08 17:00 ? 2015/07/08 21:30
公開期間 2015/06/08 17:00 ? 2015/07/08 23:59
対応端末 PC / iOS / Android
販売方法 クレジットカード
【演出】谷健二
【脚本】山本浩貴(PU-PU-JUICE)
【舞台監督】シロサキユウジ
【照明】小松崎愛子(株式会社オールライトアソシエイト)
【音響】Kenbow
【美術】角田知穂
【企画協力】佐東みどり
【宣伝・キャスティング】伊藤尚哉(ボダパカ)
【協賛】エステティックサロン レイリス、九州居酒屋 博多満月
【企画・製作】SEVEN FILM
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エンタメ : インタビュー/記者会見 記:尾崎 康元(asobist編集部) 2015 / 06 / 12