インタビュー/記者会見

実験的音楽映画(MOOSIC LAB)
『KILLER TUNE RADIO』
主演の兼田いぶきと柴野太朗監督にインタビュー!

KILLERTUNERADIO_001.jpg KILLERTUNERADIO_002.jpg 第9回田辺・弁慶映画祭グランプリ作品「モラトリアム・カットアップ」の監督・柴野太朗と、同作の主題歌や劇伴音楽のほか、録音・音響スタッフも手がけるミュージシャン・井上湧(Churchill)が今作でもタッグを組み、初の長編映画を制作。小さなラジオ局を舞台に、番組でかける「キラーチューン」を探す--。
怒涛の高速編集と組み上がる楽曲。ツメを折った思い出を巻き戻す、まさに実験的音楽映画(MOOSIC LAB)。今回は、主演の兼田いぶきと柴野太朗監督に、映画『KILLER TUNE RADIO』について話を聞いた。

尾崎:この作品を作るきっかけとなったことは?
柴野監督:この作品は、兼田さん発信の映画なんです。
兼田:「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」がきっかけでプロデューサーの直井さんと出会い、「MOOSIC LAB」という映画祭に出ることになったんですが、主演女優が自ら監督やスタッフを連れてきて作ったら面白くなるんじゃないか!?ということから、自力で映画監督を捜すところから話は進んでいきました。その中で、柴野さんと出会い、作品も観ていない段階で直感で彼にお願いすることにしました(笑)。その後、改めて彼の卒業制作の「モラトリアム・カットアップ」を観て「やっぱり、この人しかいない!!」と感じました。

KILLERTUNERADIO_003.jpg 尾崎:柴野監督は兼田さんから依頼を受けていかがでしたか?
柴野監督:彼女が自分のところに来る前にも何人か監督さんに当たっていたもののうまく折り合いが付かなかったという話を聞いて、それなら自分が引き取りますという感じでした(笑)。
兼田:私も最初のころの打ち合わせから参加して、基本のプロット作りや、他のキャスティングを決めていきました。
柴野監督:僕が以前から一緒に作品を作りたかったメンバーと、兼田さんの推薦する俳優たちを、どのように配置したら面白くなるのかを考えながら進めました。

KILLERTUNERADIO_004.jpg 尾崎:なぜ今、カセットテープとラジオなのですか?
柴野監督:もともと自分がそういった機材が好きというのが動機です。小さい頃にビデオカメラを扱うのが好きだったことがきっかけで今も映画を撮っているんですが、カセットテープで録音して遊んだりするのも好きだったので。カセットレコーダーでテレビの音を録音して遊んだりしてた最後の世代だと思います。
兼田:私もカセットテープでラジオのエアチェックをしてましたよ!
柴野監督:本当に?
兼田:そうなんです。私も最後の世代です(笑)。
柴野監督:物語の舞台にラジオ局を選んだことも、特にラジオ番組が好きだったからというような理由とはまた違う感じですね。学生時代はずっと放送委員会だったので、ラジオを発信することは好きでしたが。最近、レコードやカセットテープが少しブームになってきてますけど、そういったこととも違うんです。決して流行に乗ったわけではないんです(笑)。

KILLERTUNERADIO_Still1.jpg 尾崎:タイトルにもある「KILLER TUNE」とは?
柴野監督:「MOOSIC LAB」という映画祭は、ミュージシャンと映画監督のコラボで映画作品をつくるというコンセプトになっています。音楽を担当しているのは僕の大学の同級生の井上湧なのですが、今回彼と主題歌をどんなテイストにするか打ち合わせをしていた時に、確か「キラーチューンっぽい曲を作ってよ」となんとなくお願いしたのがきっかけじゃないかな。みんなが気に入る曲、パッと聴いて好きになれるような曲が「キラーチューン」なのかなと考えているんですが、回り回ってそれをストレートにタイトルに持ってきました。「キラーチューン」と言い切るのは、わざわざ自分でハードルを上げるようなものなのでなかなか勇気のいることだと思います。それを敢えて言い切ったということは、ある意味この作品に懸ける意気込みなのかなと思っています。
 尾崎:それぞれの登場人物の「KILLER TUNE」とは?そんな思いで作品を観させていただきました。人生の目標にも重なるような、良い音楽と悪い音楽を通して、それぞれの価値観を見つけていく。結局は、悪い音楽とか人生なんてなくて、それぞれが電波のノイズの中から自分のラジオ局という人生を探し出せるのかな?そんな感想を持ちました。

尾崎:音楽を担当された井上湧さんとは?
柴野監督:元々録音・音響のスタッフとして一緒に映画をつくっていて、かれこれ4年くらいは一緒にやっています。音楽をやっているのも知っていたので、その流れで主題歌や劇伴も頼むようになりました。現場での録音や仕上げの整音もやりつつ音楽も全て手がけることができるというのが、彼の強みだと思います。今回の主題歌「Killer-Tune」は映画本編の流れを踏まえた上で、エンドロールで鳴る意味のある曲にしたかった。しかもその曲は本編中の劇伴がすべて重なって構成されているという、おそらく今まで他に誰もやっていないんじゃないかというアイデアなのですが、あまりに綺麗に完成されすぎていてそのギミックにさえ気付かない人が多いかと思います。そのレベルの完成度まで持っていけるのは彼しかいなかったと思います。

KILLERTUNERADIO_005.jpg 尾崎:作品中の演劇的な演出は興味深かったですが、その意図とは?
柴野監督:冒頭のホールでのシーンは、内容としてはどうしてもほとんど説明的なセリフになってしまっています。それをどうにか緩和させるにはどうしようかと考え、演劇的なオーバーな演出をするという手段を取ってみました。演劇界隈で活動する役者さんに多く出演していただいているので、ある程度親和性も高いのではないかとも思いました。
尾崎:良い曲研究家・林(竹林佑介)も面白い演出でしたが……。
柴野監督:飛び道具的な出演者は、彼らを出演させたいからで、作品に必要なのかどうかは関係ありません(笑)。一緒にやりたいだけです。
尾崎:アクセントとして楽しめる部分ですよね。CDショップのお客さん(大石晟雄=劇団晴天)のシーンも興味深かったです。
兼田:柴野監督のあのシーンは三木聡監督作品の雰囲気を感じます。
尾崎:あの小ネタのクスっと笑える感じがとても好きでした。
柴野監督:彼らが出てきたら何か面白いことや変なことが起きる、という流れを作りたかったですね。

KILLERTUNERADIO_Still3.jpg 尾崎:中古レコード店・店長モーリス(守利郁弥=Dr.MaDBOY)もそうでしたが、中古レコード店には個性的な人が多いですよね。
柴野監督:そうなんです。お店に行ったことがある人にはしっくり来るのかなと思います。分かる人には分かるというようなネタも多いので、この前「作品解説をしながら上映するイベントを作ってください」と言われました(笑)。
尾崎:カセットテープを巻き込むシーンは経験者じゃないと笑えないシーンですね。あの時の「あ!やってしまった!」という感覚はね(笑)。そのシーンでのラテカセやラジオ局にあるデンスケなどの小道具は私の世代には懐かしく画面の中で他にもないかなと探していました。
柴野監督:そういう見方をしていただけるのが一番嬉しいです。小ネタは色々と仕込んであるので、そういう部分を面白がってくれる方がいると作ってよかったなと思います(笑)。

尾崎:では、メインの登場人物についてお伺いします。まずは、ゆかりの兄・しゅん(川籠石駿平「ダブルミンツ」)。
兼田:監督から「俳優仲間で共演したい役者さんは?」と聞かれ、彼を推薦しました。
柴野監督:ゆかりは、ラジオにあまり思い入れがない役なので、兄役の彼をラジオ好きの設定にしました。僕自身が出したいだけのマニアックな機材やアイテムを説明してもらう存在ですが、あまりに普段言い慣れないワードが多くてその点は苦労したようです(笑)。

尾崎:DJジョーこと小山(小川ゲン「ヴァニタス」)。
柴野監督:彼は、個性的なキャラクターが脇を固める中で、唯一普通っぽい雰囲気ですね。なので逆にそれがキャラクターになるという(笑)。声のお仕事もされている方なので、とても良い声で安定感がありますね。ゆかりと対比できるような立ち位置にできればと考えました。

KILLERTUNERADIO_Still2.jpg 尾崎:2人の女子高校生、はるか(堀春菜)となみ(笠松七海)。
柴野監督:ラジオを発信する側と受け手側という構造を作りたかったんです。発信する側と直接的な交流はなくて、ラジオの電波だけで繋がっているということがポイントです。2人とも普段は結構かっちりとしたお芝居をする人なのですが、それをいかにカメラの前で崩して別の魅力を引き出せるかというのが自分の中での挑戦だったので、演出というか雰囲気作りは実は結構工夫しました。

尾崎:ラジオのチューニングのシーンがありますが、ノイズの中からチャンネルを合わせることは、この作品のテーマなのかなと感じました。
柴野監督:前作の「モラトリアム・カットアップ」では、ノイズは邪魔なものではなく心地の良いものであり、つまり日常の些細なブレこそが人生を豊かにするものだという裏メッセージのようなものを込めていたのですが、今回の作品もその想いを踏襲している部分はあります。アナログとデジタルみたいな話にもなってきちゃいますが、今の世の中は綺麗過ぎて、僕の中では違うなって感じるんです。この前出演させていただいたDOMMUNE主宰の宇川直宏さんも、「ノイズが文化をつくってきた」というようなことをある本のインタビューで話していてとても納得しました。

KILLERTUNERADIO_006.jpg 尾崎:最後にメッセージをお願いします。
兼田:この作品はとにかく音が良いので、是非劇場で観ていただきたいです。最後に流れる劇伴と重なって出来た曲を改めて自宅でも聴きたいなって思える映画です。
柴野監督:決してこの映画が完璧だとは思ってませんし、調整したいなと思う部分も多々あるのですが、ある程度やりたいことはできたと思っているので、今作っておくべき映画にはなったのかなと思っています。映画と音楽との融合とはこういうことなのではないかという、MOOSIC LABのコンセプトに対する自分なりの答えです。万人に伝わる映画だとは思っていませんが、誰かに届いてくれるといいなと思いますし、この映画を面白がってくれる方となにか新しいことができればと思っています。自分に合うか合わないかを確認するという意味でも、劇場に足を運んで観ていただけると嬉しいです。
兼田:私たちに会いに来てください。


KILLERTUNERADIO_007.jpg ●兼田いぶきプロフィール
フリップアップ所属。ハリウッド映画『JUKAI 樹海』(ジェイソン・ザダ監督)や『ブルーハーツが聴こえる』(井口昇監督)などの映画に出演。現在『ドラゴンクエストX第5期初心者大使』としてタレント活動もしている。
明治大学文学部演劇学専攻を卒業後女優として本格的に活動中。
初主演作『KILLER TUNE RADIO』(柴野太朗監督)が音楽×映画の祭典「MOOSIC LAB 2017」にて8月12日より都内で上映開始し、順次全国公開することが決まっている。
◆所属事務所HP http://www.flip-up.jp/members/kamata.php

●柴野太朗監督プロフィール
2015年、監督作「モラトリアム・カットアップ」が第9回田辺・弁慶映画祭にてグランプリを受賞。ほか、PFFアワード2015に入選、福岡インディベンデント映画祭2016にて準グランプリを受賞するなど、数々の映画祭にて評価をされる。翌2016年6月にテアトル新宿にて開催された、映画×演劇×音楽の複合イベント「モラトリアム・カットアップ・ショーケース」を企画・プロデュース。イベントに合わせ、自身の新作短編映画を3本同時に発表。映画という枠にとらわれず、新しい文化を生み出すべく創作活動を続けている。

●音楽・井上 湧(Churchill)プロフィール
ソロユニット「Churchill」として活動する傍ら、劇伴制作や映画音響に携わる。2016年、テアトル新宿にて開催された「モラトリアム・カットアップ・ショーケース」では、映画館にバンドセットを持ち込んでライブを敢行。同時に自主制作で1stアルバム「幸せに、なれますように」をリリースし、「Churchill」を始動。時代を牽引する技術を咀嚼し、丁寧に、誰しもが聴ける楽曲に落とし込みながら、絵画経験に根ざした繊細さで独自の彩色を施す。

KILLERTUNERADIO_CD.jpg ★気鋭の“宅録ギーク系”アーティスト/Churchill
「Killer-Tune/モラトリアム・カットアップ」
2017.8.9(Wed) Release (NOW ON SALE)
VPCC-82344 ¥926+税

★『KILLER TUNE RADIO』公開日程
新宿k'sシネマ
9/5(火)21:10
◆MOOSIC LAB2017 公式サイト http://17.moosic-lab.com/


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エンタメ インタビュー/記者会見   記:  2017 / 09 / 04

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