【魅力的な建物】沼地に浮かぶ木の城 〜逆井城址〜

茨城県坂東市

toku160818_01.jpg雨。雨。雨。あじさいの葉の上に螺旋を描きながらのろのろと這うカタツムリ。どんよりと垂れこめた雲は、重く湿った空気を幾度も頬を撫ぜにくる。
梅雨の日がな一日、窓外を眺めながら読書にふけるのもいいけれど、霧雨の日にこそ、出かけてみたい場所がある。

日本全国に残っている城跡の数は、4万とも5万ともいわれているが、ハガキになるような有名な城でなくても、美しい城はたくさんある。
その中のひとつ、茨城県坂東市にある逆井城址(さかさいじょうし)は、木造建築の城跡の中では、群を抜く美しさである。
戦国時代、この城の落城後、後北条氏の手によって、大規模な改修工事がなされているため、その時代の呼称は「飯沼城」であり、逆井城と飯沼城。2つの時代の遺構が残されている。
とても復元されたとは思えぬ精巧さと美しさで、見るものの心を瞬時にして奪う佇まい。お城といえば連想するのはメインの天守閣といわれる建造物の部分だが、逆井城には、天守閣がないが、天守閣に遜色ない二層櫓と物見やぐら(井楼やぐら)が、往時の景色を忍ばせる。復元された城址は、後北条氏の時代のもので、本来の遺跡から少しずらした場所に建造されており、発掘された当時の遺構をそのまま保存するためにあえて、ずらして建立してある。
土塁や木橋、板塀なども丁寧に復元されている。

復元された二層櫓(にそうやぐら)は、当時はこのような感じであっただろうとの想像も交えて建てられたもので、実際に存在していたかどうかすら、不明なのである。しかしあったかなかったか?ということは、ここでは問題にする必要はないのかもしれない。見ること。感じることをたのしむ方がずっと豊かだ。それにすべてが、つまびらかになるよりも、謎は謎のまま残しておきたい気もする。

櫓に昇り、辺りを見渡すと、戦国時代この辺り一帯が広大な沼地(飯沼)だったことが容易に想像できる。遠くの木々や自然の風景が借景となり、霧雨と相まって想像力を掻き立てる。

決して豪奢なつくりではないが、木造建築の持つ自然との調和と趣がある。有名なお城のしっくいの白壁はもちろん美しいが、木造には木造の質素で控えめな良さがある。
小難しい歴史の話は抜きにして、純粋に建造物として、たのしむことができる、城跡もいいものだ。まさに眼福という言葉がしっくりくる。

さて、このお城を語るとき、忘れられない逸話がある。
このお城の中にある鐘堀り池の悲しい伝説である。
逆井城が北条氏に攻め滅ぼされ、落城するとき、城主の娘(妻とも言われている)が、先祖より伝来の家宝の鐘をかぶって池に入水したといわれている。その鐘を見つけるため、池の中を何度もさらったことが池の名前の由来であるが、伝承なので、事実かどうかは、謎のままである。

城を明け渡す代わりにせめてもと、命を賭して鐘を守り抜いた女性の悲願を思うと、胸に迫るものがある。
梅雨のひと時、城址公園の遊歩道を歩きながら、いにしえの人々の暮らしぶりに思いを馳せてみるのも悪くはない。

参考文献:西ヶ谷恭弘著「茨城県指定史跡 逆井城」

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特集 特集記事   記:  2016 / 08 / 18

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