買ってらっしゃいませ、お客サマー

南イタリア男達の熱い祭り『フェスタ・デイ・ジリ』

イタリア・ノーラ

イタリアは南北が長い国。歴史のある町並みを洗練されたお洒落な人たちが行き交う……というのとはほど遠いのが、南イタリア。肌の色も少々浅黒く、背格好も日本人のそれとそれほど変わらないが彫りの深い顔立ち……。いかにもラテン系の容姿を持つ南特有の人々が喧噪の中で生活している。

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町を練り歩く塔と、それを囲む人々
南イタリアのカンパーニャ州、ナポリに隣接するノーラ(Nora)という町は、私の夫の実家がある。そこでは6月最終の日曜日『フェスタ・デイ・ジリ(Festa dei Gigli)』というフェスタ(祭り)が恒例行事として知られている。

祭り自体は大変に歴史のある、この町の守護神であるサン・パオリーノ(プッチーニの曲でもおなじみ)を献じたもので、5世紀が起源とされているものだ。この祭りに欠かせないのが高さ25メートル、重さ2・5トンにも及ぶ塔。歴史的あるいは伝説的な事柄をモチーフとした8本の塔は、それぞれ約120人もの男達の肩に委ねられ、町をゆっくりと練り歩きながら町の中心にあるピアッツァ(広場)に集結させる。

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ピアッツァに集合した8体の塔。日本の神輿ですね
8チームに別れて塔を担ぐのだが、それぞれの塔にはバンドが組まれており、ナポリもしくはイタリアの古い民謡をバンドの演奏に合わせて歌う。このバンドの演奏に合わせて男達が塔を上下にゆすったり、前進したり後退したりを繰り返しながらピアッツァに集結するのだ。これらの音楽、場の雰囲気には一種独特のものがあり、そしてものすごい大音響。これがフェスタ当日の朝8時ごろから一日中、翌朝まで続くのである。

ノラーニ(ノーラ出身の人)以外は理解しがたい、このフェスタに対する彼らの意気込み、行動、そして執着心。隣接するナポリの人々でさえ、彼らのこの熱狂ぶりを“パッツィ(pazzi=狂気じみている)”と表現する。

しかしながら、この町の人々にとってこのフェスタはなくてはならない大変重要なものなのだ。イタリアじゅうに散らばったノラーニは、この祭りには必ず町に戻り、塔を担ぐのが習慣。かくゆう私の夫もこのフェスタを今までの生涯に欠かしたことはもちろん、ない。

小さなこの町はこの日ばかりはあふれんばかりの人の山となり、道を歩くのも困難、というより不可能。そして聞こえてくるのは、あちこちに飛び交う南イタリア訛りの強い言葉、ジャスチャー……。

夏本番の暑い盛りに行われるこのフェスタ、私の中での印象は「暑くて熱い」。

そんな熱さ、いや、暑さのなか自然と欲するのがヒンヤリとしたのど越しの良いもの。一日のうち、何度口に運んだことだろうか、『グラニータ』。

グラニータは日本でいうかき氷にあたる。もともとはシチリアの貴族が夏場のデザートとして冬季からに保管しておいた雪や氷にフルーツの果汁、主にシチリア特産のレモンと蜂蜜をかけて食したことが起源といわれている。その当時としては暑い夏に涼をとる、もっとも贅沢な一品と言っても過言ではないだろう。

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グラニータ屋台とおじさん。映画のような風景
今はイタリアじゅうのジェラッテリアにおいて、グラニータ用マシンの中でぐるぐる回っているものを食することができる。とはいうものの、南に行けばいくほど、レモンは味も風味も増し、甘いだけのシロップをかけたそれらとは別物となる。

今回私が現地で遭遇した極上のグラニータは、屋台のおじさんによるもの。屋台の前面には“本物のグラニータ、1ユーロ”と手書きの紙切れが貼られている。屋台のそれは大変原始的。ステンレスの大きなポットが大きさ違いで二重に重ねられており、外側の大きなほうには保冷用に大きな氷の塊が、内側には粗く削がれた氷とシロップ、そしてたっぷりの生レモンを混ぜ合わせたものが入っている。

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レモンたっぷりのグラニータ。冷たいうちにどうぞ
屋台も、そしてこの前歯の欠けたおじさんの風貌もどこか懐かしい、なんともゆったりとした風情がある。

もちろんこのグラニータ、私が今まで食べたなかでは最高に素朴で美味い! レモンの香りも抜群で甘さもしっかり。粗い氷を口の中でバリバリと砕いて、後味はすっきり。

夏の容赦ない日差しとそれに加担するかのような祭りと人々の喧噪……体感温度がグググッと上がったところに、ほっとするこの冷たいグラニータ。頭の先まで血が上りそうだった私も、これのおかげで落ち着きを取り戻すのだった。おじさん、Grazie!!











特集 買ってらっしゃいませ、お客サマー   記:  2009 / 07 / 06

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