VIVA ASOBIST

Vol.71 黒須田守
――ボートレース界の名物編集長"クロちゃん"かく語りき

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【プロフィール】
黒須田守(くろすだ・まもる)
1968年長野県生まれ。『BOATBoy』編集長、『Niftyボートレース特集』主宰をはじめとするライター&エディター。編集プロダクション・株式会社田中工業取締役

大学卒業後、宝島社で『別冊宝島・競馬読本シリーズ』やギャンブル関係ムックを多数製作した後、独立。ギャンブルから政治、はたまた性生活まで多岐に渡った執筆・編集活動を行ない、中でも競馬やプロレスの分野では多数の雑誌・書籍で編集長格として活躍した。
05年5月より『ボートレース特集』、06年4月より『BOATBoy』(日本レジャーチャンネル)をそれぞれ担当。いずれもこれまでになかった切り口を打ち出す辣腕振りを発揮しつつ、コワモテながら親しみやすい笑顔の“クロちゃん編集長”としてボートレースファンの心もガッチリ掴んでいる。

著書として『ナリタトップロード―騎手・渡辺薫彦の栄光と苦悩 』(廣済堂出版)、
ヤネの哲学―熱き表現者たちに宿る騎手魂 』(東邦出版)、
国会赤裸々白書 』(エンターブレイン、馳浩衆議院議員との共同製作)など多数

Niftyボートレース特集:http://kyotei.cocolog-nifty.com/


 

 

ときまさに師走12月。
年末年始に“大勝負”が楽しみという人も少なくないのでは。
そこの方、いつもは競馬の有馬記念かもしれませんが、
今年の「あそびすと」にはこの男がいるではないですか。
『旅ゆけば博打メシ』連載中。そう黒須田守!
「あそびすと」へのボートレースの伝道師が自身を、ボートレースを、賞金王決定戦を語る――
さあ読んでくれ!



ボートレースと“B(=バクチ)級グルメ”の伝道師、登場

――黒須田守さんは「あそびすと」では『旅ゆけば博打メシ』を連載されています。
黒須田●はい。毎月ありがとうございます(笑)。
――こちらこそ(笑)。ギャンブル場やその周辺の美味しいものを紹介していただくのがメインのコーナーですが、イメージとしてボートレース場などのギャンブル場は賭け事をするのが第一で、食事などは二の次というお客さんが多い気がします。
黒須田●もちろんギャンブル場に行くメインは博打をすることですね。我々が行っているボートレース場であれば「舟券を買う」のがもちろんメインなんですけれどもね。でも、実はそれだけではないのですよ。
――と、言いますと……。
黒須田●先月の『博打メシ』でボートピア(BP)松江を紹介しましたが、BPというのはいわゆる「場外舟券売り場」で、ここは純粋に舟券を買うことだけが求められる場所ですね。ボートも走ってないですし(笑)。ですが、レースが行なわれているレース場……我々は“本場(ほんじょう)“と呼びますが、本場では舟券やレースだけが求められているのでは決してないのですね。
――はい。
黒須田●先日、芦屋のレース場に行ったのですが、そこには「お客さまの声」という掲示板があるんですよ。それを見ると、7割がレストランに対する意見なんですね。内容? それはまあ察していただくとして(笑)、本場ではすごいメシが重用視されているのがわかります。『博打メシ』と平行して『BOATBoy』でも場内メシの記事を書いているのですが、毎月ものすごい反響がある。「黒須田はラーメンが美味いと言っているけれど、実はカツ丼だ!」とかそういった意見もたくさん来ますしね。こういった反響も見るにつれ、食事というのは実は大きなポジションを占めているんだというのは実感しますよ。まあ博打を打っていたってお腹が空くのは事実ですしね(笑)。
kuro04.jpg――『博打メシ』を読んで、「美味しそうだし、食べてみたい!」という意見はよく聞きます。ただ、ギャンブル場の中だし……というのも言下に感じるのですが(笑)。
黒須田●それはそうかもしれませんね(笑)。ですが、大村のレース場は大昔から食堂にとても力を入れていて、たとえば長崎名物でもある佐世保バーガーだったり、オシャレ系ののカフェであったり、ラーメン屋さんとかチャンポンのお店とかをキッチリ綺麗に整備した結果、地元の女子高生がそれだけ食べに寄ったりしているのですよ。たとえ学生さんでも開催中なら100円払えば入れますし、本場開催じゃない場外発売のときならタダで入れて、フードコート的にいろいろなものが食べられる。ボートレースのお客さんじゃない人でもそれ目的に来場するという状況を作りだしたのは、大村の努力の結果ですよね。
――大村は私も行ったことがありますが、たしかに食堂のエリアは綺麗だし選び甲斐がありましたね。
黒須田●そうはいっても名物的な食べ物がないレース場ももちろんあって、じゃあお店を変えて導入するか……となると、それはそれでいろいろなしがらみや問題があって難しい。ただ、食べ物が重要だというのはレース場側もわかっているので、SG(ボートレースの最高格付けレース。年間に8レースある)のときなどは“B級グルメ”の屋台が勢揃いするイベントを組んだりするのですね。先日掲載した児島ボートレース場でも出ていたので、ラーメン食べて屋台も覗いて……という毎日でした。
――屋台の模様も『博打メシ』で紹介いただければよか……
黒須田●いやいや、イベントで出店した屋台なんだからさ。読んでせっかく行ってもらったのに、出店していなかったらマズいでしょ(笑)。
――なるほど。それはそうですね。
黒須田●……あ、そうそう、今年の夏に丸亀ボートレース場の改修工事が終わって、場内に居酒屋ができたんですよ。
――なんと居酒屋ですか!
黒須田●そう。日本酒とかもちゃんと置いてあるので、そこは一度行ってみないといけませんね。
――原稿で読めるのを楽しみにしています。「大勝ちしちゃって一升飲んじゃった」とか福々しいのがいいですね。
黒須田●丸亀はナイター開催のレース場だから、夕方から飲んだら居酒屋そのものだよね(笑)。

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中村亮太選手と取材という名の談笑中。
「中村選手は、取材を始めた当初からどこの馬の骨とも知れない僕らによく声を掛けてくれましたね」
(写真・中尾茂幸)
“バクチ場無し”県・長野の高校生が『BOATBoy』と出会うまで

――いまボートレースの雑誌『BOATBoy』の編集長をされている黒須田さんですが、ボートレースだけでなく、競馬ライターとして本の編集や執筆をされたり、プロレス本の編集長などもされていたとうかがっています。
黒須田●はい。「うかがっています」、ね(苦笑)。
――……もともとこの執筆や編集の世界に入ってこられたのはどういうきっかけですか。
黒須田●僕は出身が長野でして、大学の進学で東京に出てきたのですね。で、高校のときは柔道をやっていたのですが、将来プロレスラーになりたかったのですよ。
――プロレスラー!
黒須田●それである団体が長野に巡業へ来たとき、入門のお願いをしにいったのですね。そうしたら今は引退した永源遙に「キミ、ダメだよ」って却下されまして。背が小さかったからなのですが、ちょうど僕が『プロレス激本』(双葉社)というプロレス本の編集長をしていた辺りからのインディ団体のレスラーって、当時の僕より小さい選手が普通にいた。いまとなってはそんな時代が高校のときに来ていなくてよかったと思います、ホントに(笑)。
――なれなくてよかった、ということですね(笑)。
黒須田●でも大学は長州力の出身大学なんかも受けました。学校までの道程の坂がきつくて別の大学にしたんですけどね(笑)。で、物書きにもなりたかったので、スポーツ新聞の就職試験なんかも受けたんですが、最終的にはまずはアルバイトで宝島社に入ったんですよ。
――はい。
黒須田●宝島にも今思い起こすと4年くらいしかいないんですけど、そこで『別冊宝島』(様々なジャンルのムック本を世に送り出した伝説のシリーズ)の『競馬読本』を中心に競輪やボートレース、様々なギャンブルの本を作っていたのですね。『競馬読本』シリーズはちょうど競馬ブームのころでしたから、最高で2カ月で1冊くらいのペースで出して、しかも売れていました。
――96年ころの話になるかと思います。
黒須田●そうですね。宝島では契約社員になっていまして、そこにいればずっとそういった本を作っていたのでしょうけどね。宝島時代からナイショでヨソの競馬雑誌に原稿を書いていたりもしましたし、やはりフリーで仕事をしたくて。退社して今に至っていますね。
――それ以降、まずは様々な競馬雑誌やプロレスの書籍に関わったのですね。
黒須田●自分名義の単行本4冊はいずれも競馬関係のものですし、先ほども挙げた『プロレス激本』は、ある事情からターザン山本氏を編集長に立てて裏に回った時代も含めて20冊近く、また、アメリカのプロレス団体であるWWEの本も、ムックに“用語事典”にと山のように作りましたね。
――それらの活動をしながら、ボートレースにも関わりを……。
黒須田●関わりというよりはまずは客で、ですよね。フリーになってからはSGやGIなどの大きなレースではなく、一般戦にもしょっちゅう行ってましたから。当時住んでいた府中にある多摩川ボートレース場はもちろん、大森の平和島ボートレース場まで遠征したりしまして。ちなみに10年ほど前からは大森に住んでいます。
――そのうちにやはり編集者としては、そのジャンルの雑誌や書籍を作りたくなりますよね。
黒須田●それは当然ですね。当時……というか今もそうですが、ボートレースの雑誌と言えば『マクール』(三栄書房)と『BOATBoy』がありました。それに続く雑誌を、ということで、企画書を作っていろいろな出版社を当たったりしましたね。実際のところ、ほぼ決まりかけたときもありました。
――そうなんですかっ!
黒須田●……いくらなんでも「そうなんですかっ!」って(苦笑)。
――……(苦笑)。
黒須田●……キミとも祝杯を挙げたくらいだから(笑)。
――はい。先月の『博打メシ』にもありますが、黒須田さんと私は20年近い関係です(笑)。
黒須田●まあいいや(笑)。ところがそれがダメになって、企画はあるのだけれど……という状態にまた戻りました。まあボートレースの単行本を出したりしたことはあったので、細々としたことはやっていたのですけれどもね、媒体を持つというのはなかなか難しかったわけです。競馬と違ってマイナーな競技ですし、そのころすでに出版不況もやってきてましたから。
――そんな中で舞い込んできたのが……。
黒須田●Niftyボートレース(当時は「競艇」)特集』ね。
――05年の4月のことだったと思いますが、ある競馬の騎手の公式サイトをやりませんか……という話をしにNiftyへ行ったときですね。
黒須田●そうそう。公式サイトは結局実現しなかったのだけれども、それなりに可能性を感じる話し合いをした後の雑談で、担当者から「そうそう、『競艇のビッグレースに密着する』なんて特集ページができませんかね?」って話が突然振られたんですよね。
――一緒に聞いていて、なんだこの展開……って思いました(笑)。
黒須田●もう躊躇うことなく二つ返事で受けて、いきなり翌月の笹川賞の前検日(レースが始まる前日。レース間で使用するモーターの抽選などを行なう)から常滑のレース場のピットにいたというね。懐かしい(笑)。
――その最初の時から、今もって斬新だと思う「前検日から最終日の最終レースまでずっとピットに貼り付き」という取材手法を取りました。
黒須田●そうだね。
――私も同じように取材をしていたわけですが、最初に常滑に行ってみてわかったのは、レースが進むに連れて選手も他媒体の記者さんもピットからいなくなってしまいます。選手はレースを終えた同僚のヘルプに出てくるぐらいで、作業をしている選手もまばらです。そんな状況にも関わらず、なぜ“ずーっとピットにいる”という手法を打ち出されたのでしょうか。
黒須田●それはまあ、既存のメディアに対して物足りなさを感じていたことがありますよね。取材歴が長くなったいまとなっては、たとえば最終レース前にもなると記者さんがいなくなってしまったりする事情はわかるのですけれどね。それでもやはり当時はスポーツ新聞の報道でももっと細かくできるのではないか……という思いがありました。その部分を変えたくって、割と自然なこととしてピットに居続けました。僕がいまもメインで書いている“朝夕のピット情報”や、当時キミが担当していた“特注選手”というコーナーはピットにいることでできるわけだからね。
――『博打メシ』の元祖とも言える“場内グルメ”などもそうですね。
黒須田●前検日に選手がレース場にやってくる様子なんかは、どの媒体もやってなかったわけだからね。
kuro05.jpg――『ボートレース特集』の誕生により、突然、ほぼ毎月1週間の出張をする生活が始まったわけですが、他の仕事なども含めて支障はなかったのでしょうか。
黒須田●始めて1年はまったく支障なかったですよね。1週間の出張は決まっていることですしね。他の仕事はレース場に持っていって、FAXもらって校正をしたり……キミが少し東京に残って仕上げてから現場に来たってこともあったよね。
――そうですね。ただぶっちゃけた話、Niftyからの制作費だけでは……。
黒須田●先立つものにならない(笑)。他の仕事のギャランティを回して回して……でしたね。期間中に振り込まれるギャラを下ろしに朝イチで桐生から春日部の銀行にキミが引き出しに行ったりしたよな(笑)。
――キャッシュカードが壊れちゃって窓口でしか下ろせなくて、取引銀行の支店を探したらいちばん近いのが春日部だったんですよ(笑)。
黒須田●名古屋からの帰りの電車賃が無くなった、なんてこともあったね(笑)。まあ恥ずかしい話はともかく、ほとんど持ち出しで活動して辛かったのはたしかだけれども、Niftyによって必ず“なにか”の動きがあると思っていたからね。まあ、当時から一緒に行っている畠山直毅さん(『BOATBoy』、『ボートレース特集』のメインライター)は、取材後に酒飲みながら「大丈夫なのか!」ってよく心配していましたけれどね。
――「どうにかなる」って空気は不思議と黒須田さんにはありましたね。
黒須田●「ここからお金が生まれてくる」とは感じていて、まあNiftyが課金サイトになるのかな……と最初は思っていましたけれどね。まさか『BOATBoy』とは当時も思わなかった(笑)。
――新雑誌の企画書を持っていたわけで、まさか既存の雑誌を請け負うことになろうとは誰も想像していなかったと思います。
黒須田●始めて常滑に行った5月から8カ月後、唐津の新鋭王座決定戦の取材中に、4月発売号から担当することが正式に決まったんですよ。
――これによって06年の4月より『BOATBoy』の黒須田編集長が誕生するのですが、『BOATBoy』を担当してから黒須田さんにとってのボートレース感は変わりましたか。
黒須田●それは基本的には変わらない。競艇の好きな部分であるとか、まったく変わっていないけれども、“いろいろなこと”を知ってしまったのは……ありますけれどね(笑)。
――変わっていないのは誌面上も……たとえば最初に打ち出した『競艇が好きだ』というキャッチフレーズや、「ボートレースはこんなにおもしろい」というのを伝えていくという想いも7年間でそのままですか。
黒須田●それはもちろんそうです。別に“スポーツ的”に取り上げたいというわけではないですが、ボートレースのドラマを伝えていきたいですし、舟券は切っても切れない重要な部分。それらについていろいろなことを考えながら、内容を変えるところは変えて……って、常に新鮮に『BOATBoy』を作っていきたいですね。『ボートレース特集』は現場からのほぼリアルタイム更新ですから、やれることは限られてしまいますが、思いは同じです。
――雑誌ですからリニューアルをしたりすることはしょっちゅうですが、一本通った“筋”は変わらないということですね。
黒須田●もちろん(ニッコリ)。準機関誌的な存在ながら、けっこう自由にやらせてもらってますしね。変わったことやってみようと常々思っているし、ダメだったらダメで戻せばいい、それくらいのつもりでやってますよ。

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いい話が聞けたときは思わず笑顔になります。
それがほぼリアルタイムで伝えられるのが『ボートレース特集』のいいところ。
深みのある内容まで昇華されて読めるのが『BOATBoy』のいいところ
(写真・中尾茂幸)
「いちばん“人”が見えるのがボートレース」黒須田的取材のオモテウラ

――黒須田さんがボートレースや、競馬や競輪、さらにはプロレスなどをご覧になるとき、いちばん注目されている点はどこ、なにになりますか?
黒須田●それはやっぱり「人」ですね。
――「人」!
黒須田●人に注目しようと思ったのは、宝島社を辞めてフリーになったときですね。フリーになったら自分で仕事を探していかなきゃなりませんよね。もちろんツテとかはありましたが、そこで考えたんですよ。「自分はなにをやりたいのだろう?」って。
――はい。
黒須田●もちろん競馬ってジャンルはあるんだけれども、じゃあ競馬のなにを……?って考えたときに、「あ、自分は人だな」って思いついたのね。それというのは、『別冊宝島』の競馬シリーズの中に『競馬名人読本』ってのがあったのですね。
――騎手や調教師を一人ずつ見開きメインで取り上げていく内容でしたね。
黒須田●そう。この企画って、実はなかなか会議を通らなかったんですよ。「競馬は馬や馬券だ」っていう考えが編集部内にあったからなんですが、競馬シリーズが量産体制に入ったときに「ネタがないからやるか」なんて具合で作ることになりました。ただ、僕としてはずっと出していた企画ではあったんです。
――それを実際に作ることになった、と。
黒須田●で、フリーになるときふと『名人』の企画を出していたときの「人に注目しよう」って考えを思い出したんですね。それで「主役は馬だけれど、結局、馬を育てて動かしているのは“人”じゃないか」なんて理屈を付けたりしながら(笑)、人に注目する黒須田、みたいなことに自分をしていったのですね。
――フリーの競馬ライターとして“人に注目する”というセルフプロデュースをなさったわけですが、それがボートレースにも当てはまった。
黒須田●もちろんそうでしたね。ボートレースに惹かれていったのは、レースからいちばん“人が見える”からですよね。ボートレースの場合は動力が機械ということもあり、動かす人の性格とか気持ちとかが見えてくるのに途中から気が付きました。
――一般的には競輪がいちばん“人が見える”と言いますよね。
黒須田●たしかに一般的には競輪がそう言われていると思いますが、競輪はどちらかというと“人間関係”なんですね。同県とか同地区、同期、なんてものです。競輪はこれらが「ライン」という形で協力体制を取ってレースが進んでいく面があり、それを読むのが重要になってきます。それはそれでおもしろいのは間違いないのですが(笑)、ボートレースは水面では完全に個人戦です。当然、同県や同期など絆も強いですが、水面では別というのを客としてもイヤと言うほど見てきましたから(笑)。
――「3号艇が仕掛けてきても、1号艇は同県だから無理しないだろ」みたいな読みが……
黒須田●あっけなくハズレる(笑)。そこに人の気持ちとか性格を見るわけですね。
――そんな人の気持ちや性格、そして黒須田さんの気持ちや性格もよく出ているのがインタビューだと思うのですね。ボートレーサーだけでなく、それこそ競馬関係者やプロレスラー、ときには政治家や著名な実業家などいろいろな方にインタビューなさっています。
黒須田●政治家って、“プロレスラーで政治家”だけだけれどね(笑)。
――これまでいろいろなインタビューを読ませていただきましたが、インタビューこそが黒須田さんの真骨頂かと思いますが……
黒須田●……うーん、どうだろ? ……もちろん毎回「なにかを引き出してやろう」と……いうのは当たり前か。なんだろう、ありきたりのインタビューにはしたくないというのはいつも思うんですよね。だから割と「聞きにくいことを聞いてみよう」とか、昔ほどよくやったよね。いまボートレーサーにそれをやるのはなかなか難しいんですけど、それでも「なにかを引き出してやろう」とは考えていますよね。当然、ある月にある選手をインタビューしているのには意味があるわけですから。
kuro08.jpg――「なかなか難しい」というのは編集長という立場的な問題もありますか。
黒須田●実はそっちはあまりない。
――と、いいますと?
黒須田●ボートレーサーが難しいのは、やはりマイナーな業界だし閉じられている面があるから、ピットで新聞記者さんから質問されたりするのとは違う……ほら、『ボートレース特集』を始めた当初、僕らはピットで選手に話を聞きに行っても、記者さんのようなモーターの調子とかではなく「現在の進入(ボートレースは艇番通りにコースに入るのではなく、コースを取るポジション争いがある)のルールや争いについてどう思いますか?」なんてことを聞いていたじゃない? そうするとたいていの選手が一瞬戸惑いを見せてから答えてくれていたよね。
――予想外の質問すぎて、逆にとても饒舌に話してくれた選手ばかりでした。
黒須田●それと同じようなことで、たとえば「この話は聞きづらいからぼやかして聞いてみるか」なんて思うと……僕の聞き方も悪いのだけれど、なんか全然別の話になっていっちゃって結局は聞けず終いになっちゃったりする。先日インタビューした“王者”松井繁選手など、毎年1億円近い賞金を稼いで、ボートレースをメジャーにという意識が高かったり、本人にブレがない選手はそうでもないのですけれどね。そういうぼやけたインタビューになっちゃうと、「インタビュー、ヘタになったな……」ってつくづく思いますよ(笑)。
――そうですか……。
黒須田●ね、難しいでしょ(笑)。で、編集長の立場での難しさというか、これはNiftyから数えて8年近くピットに貼り付いているからもあるけど、それによって出てきた良さや難しさもあるんですよ。
――良さというのはみんなが認識してくれている……。
黒須田●そう。最初、選手に話を聞きに行ってまず見られたのは取材章だよね。それ見て取材者だとはわかるのだけど、「Niftyとか田中工業ってなんなのよ?」って今度はなる。それが今は選手のほうが知ってくれている。何度も取材した選手はもちろん、始めてレース場で見た選手も「お、黒須田だ」ってなってくれますから。これは良かった点ですね。
――では難しくなった点は?
黒須田●これは表裏一体の話なんだけれども、僕らがピットにいるのって選手に話を聞くだけが目的じゃないよね。なにをしているのか、誰と話しているのか、あの選手が吸っているたばこの銘柄は(笑)……なんてことを見たり、聞き耳をそばだてたりしている。それがもう選手に割れているし、ただでさえ目立つから選手に警戒をされているのね。モーターやプロペラの作業している様子を眺めていたら、パッとこっち見てサッと隠されちゃったり。
――昔は面も割れていないから、選手同士で話している真後ろに立って、その会話をNiftyに載せたりしましたしね。
黒須田●キミと一緒に聞いていて「お前、今の会話はオレが“ピット”で使うから書くなよ!」なんて言ったりしたもんな(笑)。でもそれってやっぱり選手同士の会話だから、同じシチュエーションで『BOATBoy』の編集長が後ろに立ってたらしてくれない気がするんだよね。いまはそれがちょっとやりづらいところです。でも、知られていて難しくなったことばかりをいま言いましたが、比べれば知られていて良かった点のほうが多いと思いますよ。

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近づくと警戒されるから?ちょっと離れたところから変わったことを物色中。
ちなみに着ているものはアロハが多いです
(写真・中尾茂幸)
ビッグレースの12月、「メシ食いがてら、お出でませレース場へ!」

――さて、ギャンブル業界はみんなそうですが、ボートレース界でも12月は締めくくりのビッグレースが行なわれます。今年から始まった賞金女王決定戦(大村・GI)、そして賞金王決定戦(住之江・SG)ですね。賞金女王決定戦は現在開催中ですが、この二つはどういったレースなのか教えてください。
黒須田●はい(苦笑)。この二つのレースは選出基準が一緒でして、その年の1月1日から11月下旬までの獲得賞金上位12選手が出場できます。賞金王決定戦には女子選手も出場できますが、賞金女王決定戦は文字通り女子選手しか出られません。いずれも予選を3回走って、得点上位の6選手が優勝戦に進出、賞金王決定戦の優勝賞金は公営競技では個人が受け取れる最高額である1億円です(賞金女王決定戦は1000万円)。また、12位以下の選手たちによる“賞金王(女王)シリーズ戦”も同時に開催されます。すでに開催中の賞金女王決定戦は16日に優勝戦、賞金王決定戦は19日に開幕、優勝戦はクリスマスイブの24日です。
――なるほど(笑)。
黒須田●今年は賞金王決定戦、賞金女王決定戦にもいわゆる“銘柄級”、トップレーサーが登場しますので注目していただければと思いますが、『博打メシ』や今回このインタビューを読んでいただた人がパッとそのレースを観てもらっても、「ハイレベルな争いだな」というのはやっぱりわかりづらいと思います。なにやっているかもわからないかも知れません。
――ピットアウト後になぜすぐにスタートラインを目指さないのか、間違いなくそこからもう疑問ですね。
黒須田●ボートレースを覚えるとそれ……進入ががいちばんおもしろかったりしますけどね(笑)。それはともかく、狭い世界とはいえ、そこでレースをしている選手たちは我々の業界ではスーパースターであり、その人たちが一年一度の大勝負をしています。地上波のテレビでも中継があるはずですので、テレビでもたまさか本場に足を運んでみても、ぜひレースに触れてみてください。
――まったくボートレースに縁のない人も多数いるはずですので、もしレースを観られたらどこに注目するといいでしょうか? それこそ“顔”とかでもいいと思いますが(笑)。
黒須田●そうですね。賞金女王決定戦には当然ながら女子選手が出ているわけですから、誰がカワイイとかカッコいいとかそんな面も含めて、割とスンナリ入っていけるかもしれませんね。まあ、レースとしましては、まずはボートレースいちばんのポイントである「ターン」ですかね。
――あのソフトクリームみたいなターンマークを周りながらレースが進みます。
黒須田●おそらく激しい攻防になりますし、ターンマーク付近だけでなく直線でも競り合っていればボートがぶつかり合ったりします。その激しい攻防を、特に女性同士でやっているということに注目していただければと思いますね。
――女子選手がフルスピードでターンして、勢い余ってスタンドの前までぶっ飛んで来たときなんか感動すら覚えます。
黒須田●まあ正直なところ、体験していただくことでいろいろなものが見えてきて、わかってくるのだと思います。ですからここで説明をするのは難しいのですが、それでも「目の前ではレベルの高い競技が行なわれている」、そう思いながら観てみていただければ、じんわりとでも伝わってくるはずです。
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アラカン編集長と。
「山だけでなくレース場にもいらしてみてください!」
――今回は九州、そして関西にて決定戦が行なわれますが、ご近所の方はぜひレース場で観てほしいですね。
黒須田●これまで縁のなかった人がいきなり「ボートレース場に行ってくる」となるとご家族やご友人が心配しそうですが(笑)、ほら、メシ食いに来ていただければいいんですから。賞金女王決定戦は最初に言った素晴らしい食事環境の大村だったりするし。
――そうですね、『博打メシ』を読んでレース場に行ってみる、と。
黒須田●大村住之江も一度取り上げていますしね。僕もピットや記者席で仕事はしていますが、もちろん『博打メシ』を食堂なんかで堪能していますのでね。ぜひともレース場でお待ちしています。
――見た感じは怖そうですが気持ちは優しいので、みなさん黒須田さんを見つけたらぜひ一緒にごはんを食べてあげてください(笑)。
黒須田●なんでお前がそんなこと言うんだよ(笑)。でもみなさんレース場ではお気軽にお声掛けくださいね。
――住之江のピット、すごく寒かった思い出があります。どうかお身体に気を付けて、暮れの大一番を見届けてきてください。
黒須田●どうもありがとうございます。その模様は『ボートレース特集』と『BOATBoy』にご注目ください。もちろん『博打メシ』も仕入れてきますよ!(ニッコリ)


★インタビュー余話
文中にもあるとおり、黒須田氏と私は20年弱の関係で、数え切れないほどインタビューにも同席し、私が書いた原稿をチェックしてもらっていました。そんな間柄での今回のインタビュー。もちろん初。
「申し訳ないですし、なんかテレるんですけど......」、「バカヤロー、オレもだよっ!」なんて会話からスタートした1時間あまりでした。ありがとうございました(松本)











読み物 VIVA ASOBIST   記:  2012 / 12 / 14

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