ikkieの音楽総研

第85回 ikkieのロック用語解説編 ニューウェイヴ&プログレッシヴロック
――"ニュー"という独特、"プログレ"という叙情

2013 / 08 / 20

暑いですねえ。猛暑ですよ、猛暑! 皆さん、熱中症にはくれぐれも気を付けてくださいね。さて、今回はワタクシ、ikkieが洋楽に目覚めるきっかけになったニューウェイヴと、一人酒のBGMに選ぶことが多い(打率7割超)プログレッシヴロックについて解説しちゃいますよ!

松本●では、そろそろHR/HM以外のジャンルについても聞いていきましょう。ニューウェイヴというのは前に聞いたような……。これは、元々あったものからメタモルフォーゼして(笑)、変わっていったものと考えていいんですかね。
ikkie▲そうです。まんま、オールドウェイヴに対してのニューウェイヴという意味ですね。JAPAN とかROXY MUSIC とか、そういうバンドが代表的なんですけど(DURAN DURANなども)、最初のころのバンドはパンクのムーブメントと被ったりもしてるんで、どのバンドがニューウェイヴだとか、はっきりと言い難かったりもするんですが。有名どころだとU2 なんかもニューウェイヴ出身といえばニューウェイヴです。でも、今のU2をニューウェイヴって言う人は誰もいないと思うんですよ。

JAPAN 『Quiet Life』
このバンドを聴いて耽美という言葉を覚えました

松本●それは”ニュー”ではなくなったから?
ikkie▲それもありますけど、U2というバンドがもう確立されたので、ジャンルでくくらなくなったということですよね。
松本●なるほど。存在として、ニューウェイヴから出てきたんだけども、もうすでにそれはニューウェイヴを超えてひとつの大きな塊になったという……。
ikkie▲ポリス(THE POLICE)なんかもそうですよね。前に話したBON JOVIとかと同じなんですけど、いまだにその一個のカテゴライズで言われているバンドっていうのは、もしかしたらそれほどビッグネームじゃないというか……いや、それはちょっと語弊があるな……ビッグネームの中でも、U2やBON JOVIなんかのモンスタークラスはまた違う、という意味で。
松本●たしかにそうですよね。ハードロックのバンド、ヘヴィメタルのバンドという括りよりは、BON JOVIが、っていうように言ったほうがはまりがよくなる。ビートルズ もそうですよね。
ikkie▲ビートルズをいまだにブリティッシュインヴェイジョンが……って語る人はいませんよね(笑)。たとえばGUNS N' ROSES にしても、いまさらあのバンドをハードロックという枠だけで語る人は少ないだろうし……ましてやLAメタルなんてね。一般的には単に、"ロックバンド"でしょ、という。ま、METALLICAなんかはそれともまたちょっとニュアンスが変わってくるんですけど。

U2 『New Year's Day』
このころのU2の緊張感溢れるサウンドが大好物でした

★ikkie★
ブリティッシュインヴェイジョンとは、直訳すると“イギリスによる侵略”という意味で、60年代にイギリスのバンドがアメリカや世界中で大ブームを起こした現象のこと。ジャンルというよりは、ブームそのもののことです。ビートルズの他にはTHE ROLLING STONES や、THE WHOTHE KINKS など。

松本●ジャンルがもうそのバンド、ってことですよね。似たような例で、島田紳助が出演していた番組は、クイズ番組とかトーク番組、バラエティ番組ではなくて、“島田紳助”というジャンルなんだ、と。全部やってることは一緒という。
ikkie▲ああ、それに近いかもしれません。ところで、ニューウェイヴというのはもう終わってしまったというか……古いバンドにしても、もうそうは呼ばれてないと思うし……ニューウェイヴと呼ばれてる新しいバンドって今いるのかな? 今の俺はその辺のジャンルから離れてて、あんまり聴いてないせいもあるんですけど、80年代のあの時代を指して、ニューウェイヴだ、って言ったりするんですよね。今もニューウェイヴ的なサウンドのバンドはいるけど、他の呼ばれ方をしてる気がするなあ。俺が知らないだけかもしれないけど。

★ikkie★
俺がニューウェイヴっぽいなあ、と感じる現在のバンド、FRANZ FERDINANDTHE KILLERS などは、ニューウェイヴ・リバイバルとか、ポストパンク・リバイバル、なんて呼ばれてるそうです。ちなみに、ポストパンクというのは”次の”パンクとか、パンクの後継者とでも訳せばいいかな。ニューウェイヴとは音楽的にも時期的にも丸被りなので、俺はシンセサイザー多めをニューウェイヴ、ギター多めをポストパンク……と、なんとなく区別しています。

ikkie▲で、音はやっぱり独特な雰囲気というか、特徴があって。ハードロックみたいな攻撃的な音ではないんだけども、あの時代ならではの、別のベクトルの尖がり方をしているんですよね。俺らは新しいものをやってるんだぞ、っていうのがあって。日本で言うと、なんだろうな、ムーンライダーズ とかわかります? 
松本●ああ、名前は知ってますし、曲も聴いてると思うんですけど……。
ikkie▲えーとね、あとはヒカシュー とか知らないかなあ。SOFT BALLET とか……BOØWY は違うのかな。まあその辺の、ハードロックとは明らかに違う、ロックとカテゴライズされる人たち、っていうのがそうなんですよね。ちょっとオシャレで……HR/HMのバンドと比べると全然オシャレですね。アレンジ、コードの使い方もそうだし、ファッションもそう。YMO も……俺が連想するニューウェイヴとはちょっと違うけど、位置的にはニューウェイヴと言えなくもないかも。
松本●なんとなくわかる気がします。実験的な点も含めて、すごくニューウェイヴというのに乗りそうな気がしますね。

★ikkie★
ちなみに、ikkieを洋楽に目覚めさせたDURAN DURANは、ニューウェイヴの中でも、さらにニューロマンティックなんていうジャンルに分類されていました。ニューロマンティックは、音楽的にもヴィジュアル的にもちょっと耽美な世界観を持ったバンドが多く、フリフリのブラウスを着た、見目麗しいアーティスト達に大いに憧れたものです(笑)。

DURANDURAN 『Planet Earth』
よく考えると、俺の人生がおかしくなったのはこの曲のせいかも

松本●続きまして、前からすごく気になってたプログレッシヴロック。プログレですね。これは、フランク・ザッパ とかになるんでしょうかね。
ikkie▲フランク・ザッパは……プログレというか……ちょっと違うなあ。
松本●実際にはどういうのを指すんですか?
ikkie▲ま、バンドでいうと、代表的なのはPINK FLOYDKING CRIMSONYES 、あとは昔のGENESIS とかですね。時代で言うと、始まりは結構古いんですよ。60年代の後半からやってたりするので。プログレッシヴという言葉は、先進的という意味ですよね。ロックからさらに奥へ行った感じ、と言えばいいかなあ。それでまず、演奏技術が高いというのがあって、難解なことをやってるんですよね、音楽的に。で、もうちょっと芸術性を高めていったりしていて……ビートルズとか……ビートルズは前期と後期でまた(音楽性が)違いますけど、ポップバンドが3分間の中にどれだけ大衆的なことを……キャッチーなことをやるか、ということに向かっていったのに対し、プログレは芸術性をどんどん高めていくんですよね。音楽技術で言うならば、例えば変拍子をたくさん入れてみたりだとか。ちょっと踊れない感じなんですよね。でも、浸れる曲が多くて、歌詞もちょっと哲学的だったりします。すごく単純に言うと、難解なことをやってると。でも、その中でもバンドによってそれぞれ違うので、YESとかは結構聴きやすい曲をやってたりするんですけどね。『Owner Of A Lonely Heart 』とか知らないですかね? 大ヒットしたし、テレビでもよくかかってたから、聴いたことあると思うんですけど。
松本●聴いてみれば、ってパターンですよね、たぶん。
ikkie▲いろいろ新しいことを始めていた人たちなんですよね、その時代の。芸術性をどんどん突き詰めていったので、組曲とかがあったりもするんですよ。クラシック的な。同じ曲が……テーマ(メロディ)が同じものをアレンジを変えて、一枚のアルバムに収録したりとかね。だから、俺がよく松本さんに(iPodなどで)シャッフルせずに続けて聴いてというのは……。

KING CRIMSON 『クリムゾンキングの宮殿』
蛍光灯の替わりにキャンドルを灯して、ヘッドフォンで聴いてください

★ikkie★
対談相手の編集部松本氏は、買ったばかりのアルバムもすぐにシャッフルするという剛の者で、何カ月も前にiPodに入れた曲でも一度も聴いていない(聴けていない)ということがあるらしい。それはどうかと思います(笑)。

松本●“流れ”があるから、というわけですね。
ikkie▲そうです。特にプログレにはコンセプトアルバムというのがあって、アルバムジャケットから何から、ひとつのコンセプトに基づいて作られていて、ストーリーがあったりするんですよね。まあ、クラシックと同じなんですけど、そういう風に作られたりするんですよ。極端なのだと、アルバム一枚に1曲だけしか入ってないとか。それぞれに何か深い意味があるんじゃないか、と思うような曲が多いです。ないのかもしれないけど(笑)。で、またイタリアン・プログレだったりね、イギリス、アメリカのプログレだったりと、また地域ごとに特色が出てくるんですよ。共通点をあげるなら、叙情的だということかな。
松本●叙情的っていうのはなんだかわかる気がしますね。
ikkie▲プログレは(VAN HALENなどの大陸的なハードロックと違って)ヘッドフォンで聴いてると楽しい(笑)。古いものであっても、ミックスのしかたなんかがすごく凝っていて、頭の中ですごく広がっていくみたいな。映像が浮かぶ曲が多いですね。ま、当然バンドごとに特徴がいろいろあるんですけど……、例えば初期のGENESISなんかはすごくクラシックの要素が強かったり、PINK FLOYDだと、ブルーズっぽかったりとか。KING CRIMSONはHR/HMバンドがお手本にすることも多くて、他に比べてちょっとヘヴィなことをやってたりもするんですよね。
松本●なるほど。ある意味そこで実験的なものとしての存在があったりもする……先鋭的、先進的という言い方が正しいんでしょうけど。まさにプログレッシヴという。だから、一枚のアルバム、例えばジャケットからしてもそうだし、裏のジャケットなんかにしてもそうだし、入っている曲にしても、ひとつのストーリーが中に詰め込まれている……かもしれない。
ikkie▲かもしれない(笑)。
松本●(シャッフルして聴くのは)いきなりエピローグから読む、という感じのことをしてしまっているんですね。たまに章立てがわかれてる短編とかだと真ん中辺りから読んでしまい、実はそれ最初から全部繋がってましたよ、というパターンで後から困るような(笑)。
ikkie▲そうそう。最初から読んでないとわからない登場人物がいたり(笑)。まあ、例えばVAN HALENやBON JOVIなんかは、まだ(シャッフルしても)いいんでしょうけど。でも、プログレは続けて聴いたほうがね。……俺ね、プログレに限らず、ベストアルバムがあんまり好きじゃないんですよ。この2曲が繋がっていて、この流れが良かったのにな、っていうのを無視して収録しちゃうし。もちろん、1曲1曲が良い曲だってことが重要なんですけども。で、コンセプトアルバムなんかだと、たまに変な曲が入ってたりするんですね。
松本●ああ、そうですね。わかりますよ。ああ、これは彼らが好きなんだろうな、と納得するしかないような。

PINK FLOYD 『Shine On You Crazy Diamond』
ikkieのプログレバンドの中でのフェイヴァリットバンド。一人酒のお供に最適

ikkie▲あ、いや、そういう意味ではなくて、コンセプトアルバムの中でね、なんていうのかな、向こうの民謡みたいな変わった曲が……しかも一分ぐらいしかない小曲が入ってて、この曲なんなんだろう? っていうのがあったりするんですけど、それは他の曲と続けて聴いて初めて意味があるんですよ。インタールードというか、演劇とかの幕間劇みたいな感じで。今はCD時代だから……CDってより、もうデータの時代ですけど(苦笑)、シャッフルすると、その繋ぎの曲も1曲としてパツンと切られちゃう。で、それだけ聴くとこの変な曲なあに? と、意味がわからないという。だから、続けて聴いていただきたい、と。ま、プログレを聴くならば、っていうところではあるけど……プログレに限らずコンセプトアルバムって結構あって、例えば『Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band 』ってビートルズのアルバムとかもそうです。これは「ロンリーハーツクラブバンド」のショウだ、っていう設定があるんですよね。
松本●なるほど。そういうのは当然そうですよね。でも、そういうのでなくても、当然、構成(アルバムの曲順)を決める時だって、この曲をいちばん最初に入れて、この曲をいちばん後に入れよう、この曲を真ん中に、と彼らは考えて決めてるでしょうし……(コンセプトアルバムのように)一本決まった物語がなかったとしても、作り手側にはこだわりがあるでしょうから。それをバカにして……バカにしてって言い方でいいと思うんですけど、1曲ずつ分断して聴くっていうのはあんまりよろしくない、ということを肝に命じないといけないですね(笑)。
ikkie▲そうですね(笑)。……まあ、本当は音楽なんて好きな聴き方をしていいと思うんですよ。俺も昔はお好みテープを作ったり、好きな曲順で聴いたりしてましたし。ただ、本来の曲順で聴くことによって、アーティストの意図がより深く理解出来たりもするし、オススメですよ、と。特に松本さんはね、せめて初回ぐらいは通して聴いてください(笑)。

YES 『Owner Of A Lonely Heart』
YESのメガ・ヒットソング。
イントロのオーケストラ・ヒットをみんなが真似しました。む、虫が......





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とにかくここからアクセス! 動画もあるよん。
http://dokodemoguitar.com/













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