ikkieの音楽総研

第360回 洋楽編 Marty Friedman ―― 日本在住、世界的なスーパーギタリストの音旅のキセキ

2024 / 04 / 02

東京でも桜の開花宣言がようやくされたと思ったら、急に初夏の陽気……3月に28度ってどうなの。ついこの前まで真冬みたいな寒さだったのに、このまま夏になっちゃうのかね。……さて、今回の音楽総研は、自身初の自叙伝『音旅のキセキ 』を発売したマーティ・フリードマン についてあれこれと。自叙伝、読み応えありますよう。

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マーティ・フリードマンはアメリカ出身のギタリストで、MEGADETHなどのヘヴィメタルバンドで活躍したのち、活動拠点を日本に移し、ヘヴィメタルなどのロックだけでなく、八代亜紀 石川さゆり といった演歌歌手、ももいろクローバーZ などのアイドルとも共演するなど幅広く活動しています。テレビにもよく出ているし、マーティの音楽を聴いたことがなくても、ああ、あの人か、と思う人も多いんじゃないでしょうか。演歌が好きなことや日本語が堪能なことはメタルファンにはよく知られていたし、日本に移住した時も、やっぱりというかなんというか、さほど驚かなかったんだけど、タモリ倶楽部に出ているのを見た時にはさすがに驚いたなあ。今となってはもうどんな番組に出てても驚かなさそうだけど......でも、マーティが日本に来てもう20年? 一時的な滞在じゃないかと思っていたから、それにはあらためて驚いているかな。

マーティのことを知ったのは、マーティがCACOPHONY をやっていた頃でした。80年代の半ば頃、速弾きギタリストばかりを集めたシュラプネル・レコーズというレーベルがあって、ポール・ギルバートトニー・マカパイン といった凄腕ギタリストのレコードがたくさん発売されていたんだけど、CACOPHONYもシュラプネル所属のバンドだったんだよね。ただ、当時の俺はギター・キッズではあったものの、速弾きばかりのギターが苦手で、演歌が好きだとインタビューで話すマーティに興味を持ったものの、シュラプネル系だという理由で食指が動かず......。ラジオで何曲か聴いた覚えはあるんだけど、マーティのプレイをちゃんと聴いたのはMEGADETHに加入してからでした。

MEGADETH 『Tornado of Souls』
MEGADETH時代のマーティといえばやっぱりこの曲かな。あまりのカッコよさにコピーしようと思ったけど、
うまく音が拾えず......TAB譜を見てほんとにこんな風に弾いてるの? ってびっくりした覚えが

 


実は、インタビューなどからマーティには人が好さそうなイメージを持っていたから、アウトロー代表みたいなデイヴ・ムステインが率いるMEGADETHにマーティが入るのってどうなんだろう、なんてことを思っていたんだけど、デイヴと並んでいても違和感はなかったし、音楽的な相性はこれ以上ないほどにぴったりで、MEGADETHがそれまでのアンダーグラウンドなメタルバンドから、一段階も二段階もレベルが上がったように感じた。噂に聞くマーティの演歌テイストは、たしかに東洋的なフレージングも聴こえてくるものの、それほど演歌っぽくはない......、これはMEGADETHだから少し抑えていたんじゃないかと思うんだけど(CACOPHONYやソロではたくさん聴ける)、だからといってがっかりするわけでもなく、誰にも似ていない印象的なフレーズは素晴らしかったし、一気にマーティのファンになったよ。コピーしようとしたこともあったけど、音使いが特殊すぎてうまくコピーできず、途中で挫折......。それでもマーティのフレーズはキャッチーだし、メロディアスで歌心があるんだよね。

ももいろクローバーZ 『猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」』
ももクロとのコラボ。あのMEGADETHのギタリストが日本のアイドルと一緒にやってるって、やっぱり凄いことだよね。
日本人にはもはや普通のことだけど、外国人は「これは何だ?!」ってびっくりしそう

 


マーティはMEGADETH在籍時に5枚のアルバムを残し、1999年に脱退。脱退の理由については自叙伝に詳しく書かれている。J-POPに夢中になり、普段はそういった音楽を聴いているのに、ライヴではスラッシュメタルを演奏しているのが段々とつらくなった、自分の心に嘘をついているようだった、と。当時のインタビューでも読んで知ってはいたけど、今回はこれまで以上に赤裸々に自身の気持ちを語っている印象だ。あのMEGADETHから脱退するなんて信じられない……と、ギタリストの俺は思ってしまうんだけど、たしかに、他にやりたい音楽を見つけてしまったら、そのままバンドにいるのはつらいよね。そして、ネタバレになりそうだからあまり詳しくは書かないけど、「悪意があるわけじゃないから誤解しないでほしい」と前置きしつつ語られた本音には、そこまで言うか、と感じる人もいるかもしれない。でも、そう感じてしまってはもう無理だろうなと思ったし、共感もしてしまった。そしてMEGADETHを脱退したマーティは、日本に移住する。

移住当初は“邦楽”関係者にコネがなく、どう活動しようかと思案をしていたようだけど、相川七瀬 のバックバンドを皮切りに、テレビのバラエティ番組などにも出演し、日本での活動は軌道に乗っていく。そこにはどんな仕事でも自分の音楽に繋がるはず、との信念があったという。音楽とは関係ないような番組であっても、のちにテーマソングを依頼されたりすることも多いようだ。そして、自叙伝には音楽のことだけでなく、マーティの日本での生活や(ゴミの分別がわからず叱られたとか)、日本語をどうやって習得していったか、といったことも書かれていて、これはマーティのファン以外の人でも……、たとえば海外で生活をしてみたい人などにはすごく興味深い内容だと思うから、ぜひ読んでみてほしいな。

『Illumination』
マーティの最新ソロ。こういう優しいメロディもマーティの魅力のひとつだよね

 


昨年、MEGADETHを脱退したキコ・ルーレイロ は、自身の後任にマーティの復帰を提案したという。そして、「ファンは僕のことを認めてくれたけど、マーティほど彼らのハートを射止めることはできないと思っていた」と語ってもいる。マーティはやはり特別なギタリストで、誰よりもMEGADETHへの復帰を望まれてもいる。ただ、過去は振り返らず、常に新しいことをやりたいというマーティがMEGADETHに戻る可能性はほとんどないだろう……。それは残念ではあるけど、どんな形であれマーティはこれからも彼自身の音楽を聴かせてくれるだろうし、ここ日本でライヴが観られる可能性は非常に高いわけだ。マーティが日本にいる“キセキ”は、思いっきり享受しないとね!

(※文中敬称略)



※ikkieのバンド、Antlionのシングルがリリースされました!
ストリーミング&ダウンロードはこちらから
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