ikkieの音楽総研

第106回 洋楽編 Doug Aldrich――WHITESNAKE脱退からのダグ・アルドリッチ考

2014 / 06 / 10

今回取り上げるのは、WHITESNAKEからの脱退を表明したダグ・アルドリッチ! 前回も少しダグのことに触れたけど、もっと詳しく書きたくてねえ。ダグのことはいずれ書こうと思っていたし、この機会に徹底的にダグのことを語っちゃおう。……いつの間にかWHITESNAKE祭りになってるな。

badmoonrising.jpg
BAD MOON RISING時代の盟友カル・スワン(右)とダグ
ダグ・アルドリッチは86年にLION  のギタリストとしてデビュー。LIONはスコットランド人シンガーのカル・スワンの影響か、メジャーキーの明るい曲でもなぜか湿り気を感じるというブリティッシュロック的なサウンドで、ここ日本で大人気でした。ただ、時代はLAメタル全盛期。MÖTLEY CRÜERATTのように派手ではなかった彼らのようなバンドは地味だとされてしまったのか、アメリカではいまひとつパッとせず。ビッグ・イン・ジャパンと揶揄されることも多く、ダグの名前もあまり知られてなかったようだけど、ダグのギターは派手さはなくてもコンテンポラリーなテクニックをうまく正統派サウンドとミックスさせていて、当時のギタリストの中では断トツで上手いという印象だった。個人的には、ダグのメロディアスで情熱的なソロや、甘く太い音なのに抜けが良いというトーンは理想のひとつ。また、ブロンドの美青年でね。女性ファンも多かった。

日本以外では苦戦しつつも地道に活動を続けていたLIONだけど、マネージメントとレコード会社とのトラブルにより、ツアーもレコーディングも出来ないという飼い殺し状態に陥る。その間にダグはDIO  のオーディションに合格、カルはなんとDEEP PURPLEのシンガー候補に挙がるも、両者ともにLIONを続けるためにこの大きなチャンスを自らキック。こういう浪花節的なエピソードにますます日本のファンはLIONを応援したけど、ドラマーのマーク・エドワーズ  がバイクレースの事故で重傷を負い、LIONはついに活動停止。ダグはHURRICANE HOUSE OF LORDS  のレコーディングに参加、HURRICANEでは来日ライヴも行ったが、ここでもまたトラブルが発生。HURRICANEのライヴは、バンドの同意無しにマークのベネフィットコンサートとして告知されてしまう。


LION 『Power Love』
LION唯一のPV。前途有望なバンドに見えたが……

da_ticket.JPG
問題のライヴのチケット。HURRICANEの名前はどこにもない。
そしてこのチケットを俺はいまだに持っているわけで
HURRICANEのファンではなくても、マークのためなら……と、事情を知らずにライヴに行った俺みたいなLIONファンは多かったと思う。でも、実際には招聘元が勝手にベネフィットと銘打っていたわけで、マークの本意ではなかったし、売り上げの行き先もどうなったのか。そして、この事件がすでに死に体だったLIONをさらに追い込んでしまった。相思相愛のはずの日本でこんなことが起こってしまったのがね……HURRICANEも災難だったけど、LIONの運の悪さには泣けてくる。アンコールでカル以外のLIONメンバーが揃い、リハビリ中だったマークもステージに立ったけど、あの時マークが見せた涙は感謝の涙だけではなかったんじゃないか……。

LIONの解散後、ダグはカルと二人でBAD MOON RISING  を結成、再来日を果たす。LIONと地続きのサウンドに加えて、LION時代の無念さを晴らすかのような熱演は素晴らしく、このバンドの将来を期待したけど、当時の流行だったグランジ、オルタナティヴ勢の影響かバンドは音楽性を転向し、ファンが離れてしまう。そしてカルは音楽業界から引退、ダグはBURNING RAIN  を結成した。このころのロックシーンにはギターをちゃんと弾けない人がはびこっていて、ダグのようなギタリストは苦労したようだけど、逆に希少価値が上がったとも言える。そして、ついにDIOに正式加入! アルバム ライヴ  も高評価を受け、世界中のオーディエンスにようやくその名を知らしめると、今度はDIOの活動の合間にWHITESNAKEに参加。当初はスケジュールがバッティングしない予定だったらしいけど、当然のようにバッティング、ダグはより自身の音楽性に近いWHITESNAKEに専念する。……デイヴィッド・カヴァデールは確信犯だと思うよ。


BAD MOON RISING 『Old Flames』
残念ながら名盤1stからの公式PVは無し。それにしても、この曲WHITESNAKE過ぎるね(笑)。
ダグの参加したWHITESNAKEは前回を参照してください

DIOもWHITESNAKEも、HR/HM系のギタリストが望み得る最高の仕事だ。そんなビッグネームがダグを取り合ったという事実は、LION時代を考えれば信じられないけど、ダグはそれだけの実力と才能を持ったギタリスト。ようやく世間の評価が追い付いたと思ったのも束の間……抜けちゃうのか。WHITESNAKEは順調そうだったのに。デイヴィッドは、ダグはソロ活動を優先させるようだと発言していたけど、ダグによれば、何も決まっておらず、WHITESNAKEと自身のスケジュールが合わなくなったからだという。DIOからWHITESNAKEへ移った時と同じ……何か裏がありそうだな。理由には疑問も残るけど、今回の脱退には以前のような絶望感はない。今後の活動も期待してるよ、ダグ!


DIO 『Don't Talk To Stranger』
実はダグ時代のDIOってあんまり好きな曲がないんだよね……
ダグのギターでヴィヴィアン・キャンベル時代の名曲をどうぞ



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